Mr.S strikes back! 2

 一夜明け、今宵もまたS氏との飲み会。

 夕刻、南北線すすきの駅改札にて待ち合わせ。約束の時間通りに氏は現れた。

「昼間は何してたんですか」
「定山渓に行く途中に小金湯温泉というのがあるんですがね」
「ええ」
「そのそばにアイヌ民俗の資料館みたいなのがあるんですよ」
「そんなのがあるんですか」
「札幌に来るにあたって下調べしておいたんですがね、昼間は真駒内からバスに乗ってそこへ行ってきました」
「おもしろかったですか」
「ええ、ずっと館内のビデオを見ていたんです」
「なんのビデオですか」
「イヨマンテの儀式です。熊の皮をはぐところはさすがにアニメになっていましたが」
「客は入っていましたか」
「私一人でした」
「そうでしょうねえ、で、温泉には?」
「入っていません」

 話をしているうちに本日1軒目「やき鳥 金富士」に到着。北専プラザビル地下1階にある。看板によれば昭和28年創業。
ゆうに50年を越えている。ネットですすきので安く美味い酒場を調べると、ここがまっさきに挙げられるほどの有名店。ぼくは初めてなのだが、
今回S氏を迎えるにあたり並の店ではご満足いただけなかろうと意を決して足を運ぶことにした。

 木枠の引き戸が古さを物語っている。開けると右手にカウンターが8席ほど、テーブル席が3~4卓、奥には小上がりもあった模様。
2名ねと指を2本立てると、若い店員さんがカウンターを指してくれた。

 まずはビール。瓶を頼むと、赤い星がラベルに書かれたサッポロラガー(通称、赤星)が登場。まずはこれで乾杯。さて、
食べ物であるが、ここはほとんどのメニューが200円台である。串ものは3本でそのくらいの値段。安いなあ。ポテサラと卵焼きにホッケ、
串はガツにトリモツにレバ、ツブもください。

 だいぶのども潤ったところで酒を頼むことに。ここの酒は「男山」しかない。旭川のお酒である。贅沢をして、ラインナップで一番高い
「男山 御免酒」をもらう。口当たりよく、うまい。調子に乗って、コマイ、身欠きニシンも追加である。

 客の回転もはやく、気がつくとカウンターの最古参となっていた。そろそろ腰を上げよう。2人で5800円ほど。2時間ほど滞在し、
さんざん飲んで食ってこれだけだから安いのだが、気になるのは「この店で2000円以上飲むと、死ぬ」という言い伝えがあること。
気にせず次に行くことに。

 さんざん食べた後だったので、2軒目はバーに。すすきの交差点からちょっと東に歩いたところにあるビル2階、The Nikka
Bar。せっかく札幌に来たのだから、S氏にはぜひ北海道のウイスキーを飲んでいただきたいと思い、お連れした。名の表す通り、
ニッカのラインナップはさすが(値段もさすが)。ぼかあウイスキーが苦手なので、ハイボールでおつきあいである。

 雰囲気を十二分に楽しんだ後、3軒目を探す。「ラーメンサラダを食べたい」とのS氏のご要望にお応えすべく店を探すも、
なかなかここぞという所が見つからず、30分ほど寒い中をうろうろ。結局たどり着いたのが、ラーメンサラダは出てこないものの、
油そばで有名な「米風亭」。

 ここはぼくがすすきの界隈を歩くときにはたいて3軒目くらいに入る店である。ヨーロッパビールのそろえが比較的よいのが特徴。
行者ニンニク入りソーセージと油そばを頼んだ。

 そうこうしているうちに終電の時間。あえなくタイムリミットとなり、豊水すすきの駅にて別れた。

 こうしてS氏は遠くチリへと去っていったのだったが、また来年札幌を襲うことは間違いないだろう。それに備えて、
お連れする店のリストをもう少し増やしておかねばなるまい。

Mr.S strikes back!

 酒友S氏が1年の時を経てふたたび東京より札幌に上陸を果たした。来札の知らせはすでに1ヶ月以上前から聞いていたゆえ、
相応に迎えるべく算段を重ねた末、二晩に分けて「札幌郊外で飲む」「すすきので飲む」をテーマに据えることに。

 初日はJR白石駅前からスタート。駅前の焼鳥屋「龍美」を集合場所に指定しておいた。
非常勤を終えた足でそのまま店に入るとS氏の姿。「どうも」「ええ」と少ない言葉を掛け合いカウンターにつく。
ビール瓶の中身を注ぎあい乾杯。

 これは印象にすぎないのだが、どうも北海道の焼き鳥にはコショウをかける店が多いように思う。塩で焼いてもらうように頼むと、
必ず仕上げにコショウをかけてよこすのである。内地ではあまり見かけないだけに、北海道焼き鳥の特徴と思いこんでいるのだが、はて。
事の真偽はともかくとして、この手の焼き鳥をまずは味わっていただこうとS氏をお連れしたのである。串を3種類、
野菜焼きを2種類ほど平らげたあたりで腰を上げた。

 次なる店は地下鉄南郷通7丁目駅から歩いて5分ほど、本郷通り商店街の中にある居酒屋「武蔵」。白石駅からタクシーで乗りつけた。
さきほどの「龍美」には何回か入ったことがあって勝手は知っていたのだが、ここ「武蔵」は初めてである。
ウェブで調べたら海鮮が美味く酒を飲ませる店とあったので選んだ。

 いつものことながら、初めての店のドアを開けるときは緊張する。しかし今日はS氏が後ろに控えているので心強い。
ガチャッとドアを押すと「いらっしゃい」の声。店は7割程度の入りか。よい雰囲気である。おすすめの書かれた黒板からアンキモを、
それと刺身2人前盛りあわせとナマコ酢をもらう。

 S氏と話をしているあいだに、まずはアンキモ。「こんな箸触りのいいアンキモは初めてだ」とS氏が激賞。ナマコもうまい、
刺身もいい魚を使っているようだ。これは信頼がおけそう。S氏はすでに酒に入ったが、ぼくは一休みにウーロン茶などを。すると「はあ?
何を飲んでいるんですか。そんな子に育てた覚えはありません」とS氏から教育的指導を受ける。
魚がなにより美味いのでここに根を下ろすか迷ったが、1時間強で店を出た。

 3軒目は特に決めておらず。商店街のなかにたたずむ、エクステリアのきれいな店を発見したので入ってみることに。店内に先客は0、
マスターが手渡してくれたメニューには値段がないときた。うひー、時価か。
S氏と2人してビクビクとビール2杯とアスパラバター炒めを口に放り込んですぐに退散(実際にはお通し含めて2500円くらいで済んだ)。

 4軒目に我が家のそばにある雰囲気のいいバーへお連れしようとタクシーに。ところが店の前まで行くと閉まっていた。うーん、
と仕方なく平岸駅まで歩き、手近にあったジャズバーに入った。男性二人がカウンターに入り、客は1人。常連のよう。
父親息子の親子で経営されているらしく、きさくに迎えてくれた。

 5軒目はジャズバーから道を隔てた反対側にある、若者向けのカフェバー。

「これだけ飲んでるんですけどね」と、S氏。
「ええ」
「ちっとも酔っぱらわないんですよ」
「なんででしょう」
「寒いところと暖かいところを行ったり来たりしているからですかね」
「そうですかね」
「なんだか充実感がないですね」
「そんなもんですかね」

 冬のはしご酒にもまた問題がありそうである。

 明日に続く。

浅草クローリング

 ぼくの所属する大学が東京で説明会を開くのに参加するため、2日から3日にかけて出張してきました。本番は3日なのですが、さすがに日帰りは体がもたないので1泊2日の旅程。

 さて、どこに泊まろうかと思案した末、もっとも落ち着く町、浅草に宿を取ることにしました。ときたらクローリングしない手はないですね。ネットで下調べをして、いざ出発です。

 羽田空港から成田行きの京急に乗り、都営浅草線の浅草で下車。地上に出てすぐのホテルカワセに投宿。吾妻橋のたもと、神谷バーや松屋のある交差点にほど近く、よいロケーションです。さあ、荷物を置いて町に繰り出しましょう。

 夜7時ともなれば仲見世はほとんどシャッターを閉め、昼間の人混みはどこへやら、のんびり歩くことができます。この時間帯に歩くのが好きなんですよねえ。

 同じく人の絶えた伝法院通りから公会堂をちょっと過ぎると、WINSへ向かう横道の両側にずらりと飲み屋が並んでいます。どこも同じように、道にテーブルとイスを出し、赤提灯を掲げ、大鍋にぐつぐつと煮込んだ煮込みをウリにしています。そうした並びからちょっと離れて、ちょうどWINSの真裏に「正ちゃん」はあります。

 識者によれば、ここの煮込みは別格なのだとか。確かめてみたくなり、1軒目はここにしましょう。「いいですか」と、店の外に置かれた煮込みの鍋と格闘するねじり鉢巻きのおやじさんに尋ねると、「いいよー」の返事。先客のうしろを失礼して、カウンターに座ります。生ビールと、煮込みをもらいます。

 煮込みの中身は、牛すじ、こんにゃく、など(など、の中身が分からない)。よそと比べたわけではないのでよく分からないのですが、この甘辛さは確かにクセになります。カウンター正面になぎら健壱の写真と色紙が貼ってあるのも、いかにも。とりあえず次があるので、ここはこれにて。

 六区からひさご通りをぬけると言問通りに出ます。道を渡って隅田川方面へ向かうと、道ばたに柳がゆれる柳通りを中心に、料亭や小料理屋が軒をつらねる一帯があります。このあたりも雰囲気があって好きなのですが、来るなら夜しかないですね。昼間来ても何もない。

 界隈をぶらぶらと流していると、「さんぎょう会館」なる建物を発見しました。「産業」にあらず、「三業」です。このあたり、この町の奥深さを感じさせられます。隣には「見番」も。やっぱりあるところにはあるんだなあ。ここから芸妓さんが料亭へ派遣されてゆくのでしょうか。

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 さて目当ての一軒は浅草寺病院のちょうど道向かいの小路を入ったところにある「ぬる燗」。カウンター7席ほど、小上がりが3卓と小さい店で、寡黙なご主人と割烹着姿も艶やかな奥様が切り盛りされています。ご主人は理想の居酒屋を目指しているようで、料理はもちろん、お酒のそろえや酒器にもこだわっているのが見て取れます。

 エビスの黒を小瓶で、それから炙り〆鯖、柿の黒和え(白和えに練り胡麻をあえたもの)、莫久来(ばくらい、ホヤとこのわたをあえたもの)をお願いします。お通しは蕪をコンソメスープで炊いたもの、寒い中を歩いてきたのでこれは嬉しい。そこに黒ビールを流し込むとちょうどよい。店の作りなど眺めていると〆鯖がきました。あぶらがのって美味しいですねえ。

 これにはお酒をつけてもらいましょう。そろえが良すぎて迷うのですが、ここは天寶一を。ご主人のこだわりなのでしょうが、ずんぐりとしたとっくりを、お湯の沸いた燗つけ器に入れて温めてくれます。「はい、どうぞ」あくまで寡黙なご主人が差し出してくれたとっくりには木地の出たはかまがあてられ、そしてまた朝顔型の猪口がよいですね。これで飲むと、飲む姿が何倍も美しくなるのです。物が姿を制約することがあるんですよ。

 腰を据えて飲みたい気持ちをおさえ、この辺にしておきましょう。値段もそんなに高くないので、1~2人で来るならおすすめのお店です。

 言問通りを浅草寺の方に渡り、ひさご通り方面へ向かった途中に、スタンディングバーBooというお店がありました。今夜最後のお酒を洋酒でしめたかったので、中に入ります。カウンターの中には女性が。バックカウンターに立っていた瓶が目に入ったので、ジェムソンをロックでもらいましょう。お通しに白菜の漬け物が出てきたのは驚きましたが、ウィスキー飲むのに張っていた肩がこれでゆるみました。いいもんですねえ。

 締めはラーメン(よく食うなあ)。千束通り商店街の入り口付近にある「菜苑」にて。ここは純レバ丼が有名なのですが、ご飯という気にはなれず、タンメンをもらいます。

 ライトアップされた浅草寺の境内をぶらぶらと。会社帰りのみなさんやカップルが三々五々と提灯の明かりの中を彷徨うのを横目で眺めやりつつ、満ち足りた腹をさすりながら弁天山へ向かいます。

 山門の横を馬車通りの方へ抜ける途中に弁天山はあるのですが、この石垣の上に添田唖蝉坊・添田さつき親子の筆塚があります。日中でも特に観光客が来るわけでもなく、向かいにはラブホテルが建つような、ひっそりとしたところなのですが、浅草に来るとぼくは必ずこの筆塚を見ていくことにしています。

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 ああ、明日仕事さえなければなあ。静かに更けていく浅草の夜を背中に、とぼとぼと宿に戻るのでした。

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シンスケ

 日心は今日で終わりました。最終日に開かれた「ヴィゴツキー・シンポ」では司会役をおおせつかっていましたので参加してきました。それについてはまた今度書くとして、前の日の夜に行った居酒屋について。

 湯島天神の下に「シンスケ」というお店があります。居酒屋好きの間では知らぬ者のないという名店。以前、お店の前を通ったことはあったのですが、実際に入ったのは今回が初めてです。非常勤などでお世話になっているM先生をお誘いしてのささやかな飲み会。

 M先生よりもちょっと早く着いてしまいましたが、店の中をのぞくとどうも混んでいる様子。席だけでもと引き戸を開けると、ちょうどカウンターが3席空いていました。中で立ち働いていた若い人(4代目、でしょうか)に「2人ね」と言って、イスにかけます。

 まずはキリンラガーの小瓶でのどをしめらせます。と、携帯に電話が。M先生からで、15分ほど遅れるとのこと。では先に料理を頼んでおきましょう。

 壁に画鋲で留められた短冊にはおいしそうなものばかりが並んでいます。ここに来たら食べようと思っていたのが、ねぎぬたです。ぬたは、札幌ではよいものに出会ったことがありません。やはり江戸のものなのでしょう。それと、夏野菜の炊き合わせをいただきます。

 小瓶をあけたのでお酒に切り替えようかという矢先、引き戸を開けて入ってこられたのがM先生。「どうも」「お疲れ様です」と、まずはビールを一杯。キリンラガー、同じのね。

 早々に小瓶をあけたM先生とともに、お酒をいただきましょう。ここには秋田のお酒、両関しかありません。ただ、純米、吟醸など選べますし、冷や、常温、燗のいずれでもお願いできます。カウンターの中の壁に作り付けられた棚には、お酒が入れられた丸っこい形のお銚子がずらりと並べられています。お燗でと言えば、ご主人がその棚から1本取り出して燗つけ器にすっと入れるようです。われわれは常温でいただきましょう。酒は人肌です。

 お料理がなくなりました。追加で、戻り鰹のたたき、衣かつぎ、マグロのぬたをいただきます。あ、マグロぬたはなくなっちゃったの?では山かけで。

 学会のこと、研究のことなど話すうちにお酒がどんどんと進みます。「同じの」と言えば、奥の棚からスッと出てくる。おかげでペースが早くなります。

 本格的に飲むために、このわたをいただいてみました。海鼠の腸のしおからですが、実は初めてです。おお、これはうまい。お酒にぴったりですねえ。

 気がつくと他のお客さんは帰られた様子、お店の縄のれんもしまわれていました。結構長居したようです。ごちそうさま、と言って店を出ます。

 酒屋から始めて、居酒屋になり4代目。伝統の美学が守られている、噂通りのいい居酒屋でした。また来ますね。

ああ上野

 今年は教育心理学会と日本心理学会が連続しており、その谷間となる今夜は上野に投宿しています。

 せっかく東京に来るのだからと、十年来の飲み友達S氏に連絡。夜の上野をクロウルすることとしました。

 上野の山の南州先生像の下で待ち合わせ。すでにS氏はベンチに腰掛けていました。「どうも」「いやいや」とファティックなコミュニケーションを交わし、まずは1軒目へ。

 二人ともちょっと小腹が空いていたので、まずは食べながら下地を作ろうと、手近にあった寿司屋へ入店。刺身を切ってもらい、酢の物なぞつつきながらビール、そしてお酒をいただきます。

 飲みながら互いの近況を交換。どうも健康(悪い方ですが)の話ばかりになっていけません。

 では、と、腰を上げ、2軒目へ。それがなかなか決まらない。高架を挟んで反対側へ抜け、これまた手近にあった居酒屋へ。メニューを見ると、生300円、ポテサラ200円、しらす150円などと「せんべろ」の世界であります。ちなみに「せんべろ」とは「千円でベロベロになれる」の略。ここはふぐが目玉らしく、ふぐ天ぷら400円、ふぐ刺し450円。安い!!上野いいですなあ。

 河岸を変えましょう。その前に、ちょっと腹ごなしにとカラオケを提案。いいオッサン二人でビッグエコーに入りました。飲むのも疲れてホットウーロン茶などすすりながら、歌うは「太陽戦隊サンバルカン」。心にしみますなあ。

 さあそろそろクロウルも締めにかかりましょう。院生時代からちょくちょく寄っていたバー、ウエノクラブへ。ここではギネスを飲むことにしています。S氏はウイスキーに切り替え。ぼくはアドヴォカートをもらってみました。卵から作るリキュールなのですが、飲んだことがないのです。バーテンさん曰く「甘いですよ」。すっきりとしたスノーボールというカクテルにしてもらいました。

 S氏は次の日仕事があるというので(ぼくもですが)日付が変わる前に解散。またやりましょう。

ああ浅草の夜は更けて

 15日の夜は竹ノ塚に投宿。駅前のロータリーを若いのが占拠しており恐々とホテルへ。

 あけて16日、朝から教育心理学会の会場である文教大へ。北越谷の駅を降りると駅前こそさすがに繁華街の体をなしているがちょっと歩けば武蔵野ののどかな風景が広がる。大学のそばを流れる川、その土手には桜の木が。春だったらさぞや見事だろうな。

 受付で手渡された紙袋には小さな団扇が入っていた。これはいい。9月ももう半ばというのにまだ暑いのである。

 Mさんといっしょに行っている研究のポスター発表。会場の体育館は立っているだけで汗がしみ出てくる。今回はMさんが第一著者ということで説明をお任せしてあちこちふらふら。そうこうしているうちにあっという間に在籍時間が過ぎる。
 
 お昼はMさんはもちろん、Kさん、Oさん、Sさん、Tくんとともに。K、O、Tさんは今年の学会賞をそろって受賞されたとのこと!すげえなあ。受賞式がこれからあるというので、Mさんと会場にもぐり込む。後輩のKくんも受賞とのこと、知り合いばかりだ。
 
 代表してTくんがスピーチをしていた。落ち着き払っているなあ。

 授賞式を途中で抜け出し、Mさんと今後の打ち合わせ。10月に札幌で検討を行うことにした。

 5時にM先生、Sさんらと待ち合わせ。浅草に繰り出して懇親会である。S社のSさん、T大のS先生とははじめてお目にかかる。ごとごとと東武伊勢崎線に揺られ揺られて浅草の川沿いに到着。

 本日1軒目は、どぜう飯田屋。どじょうをくたっとそのまんまの姿で煮た鍋、柳川、唐揚げなど、どじょう三昧。「最後はこのネギだけを煮て食うんですよ」とM先生。遅れてHちゃん、Iくんが合流。酒に切り替えてぐいぐいと飲み、食う。

 さて次はと向かったのは、伝法院通りを曲がったところにひしめく飲み屋街。通りの両脇を赤提灯が列をなす。その1軒の軒先に出されたテーブルを占拠。学会帰りのKくんも合流し、ふたたび乾杯。こういう店に来たらまずは煮込みとホッピーである。お、黒ホッピーがあるではないか。調子に乗って下町ハイボールもぐいぐいと、もうこのあたりから記憶が断片的である。

 シャッターを閉めすっかり人通りの絶えた仲見世を抜け、地下鉄の方へ。まだ体力の続く者だけ残り3次会へ。適当に入ったのでどんな店だか忘れてしまったが、黒糖なんたらを飲んでやたら甘かったのは覚えている。

 11時も過ぎたので終電のこともあり解散。筑波から来ている人たちは、TXの恩恵にあずかっているなあ。

 宿は浅草千束の東横イン。荷物を置いてちょっと小腹が空いたのでラーメンを食いにふたたび街へ。ビルの間を吹き抜ける夜風がほほを撫でていくのであった。

卒論検討会で名寄へ

 卒論指導を担当している学部4年生を引き連れて、札幌以外の場所で卒論検討会を行っている。昨年は函館へ行った。今年は、
大学院のOG(?)、Kさんが勤めている名寄短期大学にて検討会を行うこととした。検討会会場や打ち上げのセッティングなど、
すべてKさんにお任せしてしまった。どうもありがとう。

 名寄は旭川のさらに北にある。汽車で向かうのもいいが、今回は車という秘密兵器がある。現地に着いたら、
公共の交通機関はあてになるはずもない。高速を使って車で行くことにした。

 卒論を書くTくん、いっしょについてきてもらうことになった院生のHくんとともに、野郎3人で愛車キャパ号に乗り込み、
道央道を一路北へ。

 空は高く、秋の気配である。ただ、南から来て抜けていった台風が置きみやげの雨雲が北の方に見える。
高速道の上をすいすいとトンボが飛んでいた。そのトンボを時速100kmで走るフロントガラスがプチプチとつぶしていく。うへえ。

 札幌を出て2時間半ほど、道央道の終点となる士別でおりて昼食。さらにそこから30分ほどで名寄の街に到着。

 着いたはいいが、短大の場所が分からない。

「あれじゃないですか」「いや、水道局だ」「これは」「高校です」

 なにしろ広い土地を存分に使えるお国柄、何でも大きくて大学に見えてしまう。結局、直前に通り過ぎた建物がそうだと判明。
市役所かと思った。

 名寄短大は駅から車で5分ほどのところに町外れにあるこぢんまりとした建物。車から降りるとKさんが迎えてくれた。

 Kさんの研究室に3人でずかずかと乗り込み、さっそくTくんの検討会を開始。3人も先生がいるようでさぞや疲れただろう、Tくん。
これを励みにがんばってくれたまえ。

 名寄には遊ぶところがないそうで、短大生は休みだというのに大学に来ていた。「北大生が来てるよ」とKさんが言うと、「見たい!」
とわらわらと廊下に出てきた。あたしたちは珍獣か。

 夕方過ぎて小腹も減った。検討会を切り上げ、宿へ。駅前の「ニュー冨士屋ホテル」というビジネスホテルで、
ここには和室があるというので予約した。1部屋3人で12800円。商人宿を(具体的にはつげ義春の『リアリズムの宿』あたりを)
想像していたのだがこれがまたこざっぱりときれいなホテルでびっくり。

 夕食は、Kさんご推薦の、駅前通の居酒屋「卓庵」にて。大学院を出て、名寄で子育て真っ最中のIさんがかけつけてくれた。

 とにかくいろいろと注文し、そのどれもがおいしかったのでよくは覚えていないのだが、とりわけ蕎麦がうまかった。あまりのうまさに、
そばサラダ→もりそば→各自ざるそば1枚と、蕎麦ばかり食べたほどであった。細いのだけど、しっかりとこしがあり、
なおかつのどごしがすばらしくよい。さすが、隣に蕎麦の一大産地幌加内をかかえるだけのことはある。みなさん、名寄に行ったら蕎麦ですよ。

 まったく人通りのなくなった駅前通を歩き、二次会に入ったお店はジャズバー「take5」。いかにもな名前である。
がっしりとした梁が天井に見える店内には心地よいジャズが流れる。さてとメニューを見ると、酒のそろえはちょっとという感じ。
ここはお通しのボリュームがすごいらしいとKさんから聞いたのだが、果たしてその通り。乾き物が大皿に山盛り、そのほかサラダ、卵焼き、
シューマイ揚げ、枝豆というオードブル。さらにはマスターのサービスでチャーハン大盛り。ここは何屋さんなのだ?

 ふくれた腹をかかえて宿へ。テレビをつけると、阪神が9連勝していつの間にか首位に立っていた。

 一夜明けて次の日、前夜満足に風呂に入っていない我々一行は、「朝風呂へ行こう」と近くの温泉へドライブに行くことにした。
最寄りの温泉施設は朝10時にならないと営業を始めないのだという。今は朝8時。なんということ。
仕方ないのでなるべく遠くの温泉に入りに行き、道中で時間をつぶすことにした。結局、美深町のびふか温泉に入ることに。
もう朝風呂という感じではないが、とりあえずは満足。

 昼にふたたびKさんと待ち合わせ、おすすめのそば屋に連れて行ってくれるというので向かった先は、旧風連町の「雪の里」。
ここの蕎麦はゆうべの居酒屋のものとは違って、少し太めの十割蕎麦。十割だとぽそぽそとした田舎蕎麦を想像するが、さにあらず。
しっかりと歯ごたえの残った、これまたのどごしのよい蕎麦である。もう名寄最高。蕎麦好きにはこたえられない。

 名寄には、スキー場はもちろんのこと、一般の人でもカーリングができる施設があるそうだ。安く泊まれるコテージもあるそうで、
冬には(3月頃)カーリングをしながら読書する合宿をすることを勝手に決定。読むのは”The Cambridge handbook
of sociocultural psychology”の予定。参加者募集中。いっしょにうまい蕎麦をたらふく食べましょう。

おわりのはじまりに

 我が心のオアシス三徳六味さんが美園のお店をたたみ円山にうつると聞いて2ヶ月、とうとうその日がやってきた。

 9時にアマネを寝かしつけてから夜に飛び出し、お店に向かう。

 ドアを開けると、黄色いTシャツを着た亮さんがいた。カウンターと小上がりは人でいっぱい。常連さんが貸し切りで、三徳さんの前途を祝う会を開いていたようだった。

 席が空いていなかったので挨拶だけで失礼しようとするも、常連さんがイスをあけてくださった。その彼はカウンターの向こう側へ。そして雇われマスターとなった。

 店の冷蔵庫の上にいつも鎮座ましましていたダルマがおろされ、亮さんの筆によって目が書き入れられた。

 「社長」さんの音頭で一本締め。

 料理を一通り作り終わりすっかりいい気分になった亮さんがダルマを抱きかかえて隣の席へ。

「あっちでの勝算はあるんでしょう」
「あるわけないでしょう、でもね、男としてね、やらなきゃならないんです」

 カウンターの内の雇われマスターは終始明るく元気だった。

 3年前の11月、現在の団地に引っ越してきたばかりのころ、たまたま寄ったこのお店の料理に惹かれ通い始めた。当時はまだ単身赴任で気楽に夜を遊べたからできたことだった。カミさんを呼び寄せてからは、「たまの贅沢」としておじゃました。子どもができてからは「特別な日のすごい贅沢」となった。今度はいつ行こうか。そんなことを楽しみに考えながら店の前をいつも通り過ぎていた。

 その、心のオアシスが物理的に遠くなってしまうのは、正直なところ寂しい。でもここは、亮さんが奥さんと一緒に苦労して一から作り上げてきたところだ。ぼくらがどうこう言える権利などない。

 飲みながら亮さんの「野望」を聞くのが楽しみだった。たまたま年齢が同じということもあり、うらやましく聞いていた。その「野望」を実現させるための一歩が踏み出されたんだろう。

 今日で閉める店内で笑いあう常連さんたちの姿を見ると、愛されているんだなぁとあらためて思った。

 次の日早くに用事があったため日が変わる前に辞した。帰り際、亮さんと手を握りあった。

 ここでの一区切りは次のはじまりでもあろう。その瞬間に立ち会えてよかった。席を替わってくれた雇われマスター、ありがとう。混ぜてくれたみなさん、ありがとう。

 そして、亮さん、ミキさん、また10月に。

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男三人ブラ珍ススキノ旅

 先週のこと。香川からびっけさんが札幌に来るというので、いっしょにお酒を飲むことに。びっけさんの後輩というべーくんさんともごいっしょ。べーくんさんとは初めてお会いしたのでしたが、なんとまあいい男。うつむいたところはキムタクそっくり。

 それはともかく、3人でススキノへ。

 2人にはぜひ北海道の美味しいものを食べていただきたい。しかしススキノは店が多すぎてとんと不案内なのです。そこで、信頼できるサイトの情報を頼りに、たどりついたのが雑居ビルに店を構える「魚菜」。

 店に入るとL字型カウンターに小上がりが3卓。マスターとおかみさんがニコニコと迎えてくれました。

 まずはビールで乾杯。北海道ならではの、サッポロクラシックです。お通しは冷や奴ですが、ただの奴ではなく、上にはカニの外子とワサビがのせられていました。これはいいですねえ。

 では地のものを刺身でいただきましょうか。ツブ貝、サンマ、ソイをお願いします。それと海水ウニもぜひ食べて帰っていただきたい一品です。びっけさんが焼き物にホッケを頼みました。こちらのホッケはまた格別なんですよねえ。

「お酒のおつまみになるようなものでしたら、こんなのはどうでしょう」

 おかみさんがすすめてくださったのは、自家製の、タラコの粕漬け。じゃあそれもいただきましょうね。

 そんなこんなでいろいろ食べましたが、2人とも喜んでくれたようでなにより。

 2軒目は、かねてびっけさんのお目当てのバー「夜光虫」。雑居ビルの4階にあります。ここは人に紹介されてだいぶ前に来て以来、ぼくもちょこちょこ通わせてもらっています。バーと言いながら、ここは食事がおいしいんですねえ。

 テーブルについて、まずはめいめいお酒を注文。ぼくはシャンディガフを。ビールが好きなのですが、1軒目ですでに飲んだいたので、ちょっと気分を変えるのにもってこいです。

 おつまみにはガーリックトースト。ここのは少し変わっていて、斜めに切ったバケットを焼いたものに、オーブンかなにかで焼いたガーリックバターが別に添えられて出てきます。それをスプーンですくって、バケットに乗せていただくのです。

 2杯目のホワイトレディーを飲んだところで少しまわってきたようです。というのも、気分よく饒舌になるので、自分でも分かるのです。

 ここでラーメンをお願いしました。といってもバーに出前してもらうのではなく、このお店で作ってもらうのです。ここを紹介してくださったmouさんによれば、最初はメニューに書いていない、いわば裏メニューとして常連客の密かな楽しみだったそうですが、いまでは立派な「表」メニューになったとのこと。びっけさんはこのお店に以前来たときに食べたそうで、それが忘れられずにいたそう。何度も来ていますが、ぼくは初めて。これは楽しみです。

 小さなどんぶりに入ってやってきたのは、どろっとしたスープのラーメン。一口すすってみますと、おいしい。ベースは豚骨でしょうか、とても濃厚で、麺にしっかりとからみついてきます。いやあ、バーで出すにはもったいないくらい。

 お腹もいっぱいになったところで、2人とはお別れ。次の日から帯広に行くそうです。

 帰りの地下鉄の駅に行くまで、夜のススキノを抜けていくのですが、この街も久しぶりです。ススキノといえば、皆招楼の肉まんは外せません。このお店も、いつ来ても3~4人は並んでいます。子どもが喜ぶので、シューマイも買っていきました。

飛躍への挑戦

 ヴァルシナー教授をかこむ懇親会からの帰路、地下鉄を豊平公園で降りて三徳六味へ。

 このような帰り道のささやかな楽しみが、今月いっぱいで味わえなくなるんですね。というのも、三徳六味が現在のお店を出て、同じ札幌市内の円山地区へ引っ越すためなのです。

 円山といえば舌の肥えたお客さんのよく行くすぐれたお店がひしめくことで知られています。そこにあえて打って出ようというのですから、たいしたものです。

 以前おじゃましたときにすでに引っ越しの話は聞いていたとはいえ、お店に入るとそこにはいつもの空間があり、これからもずっとありつづけるような錯覚にとらわれます。

 円山の以下の住所にて営業を再開するのは10月1日からとのこと。

 三徳六味
  札幌市中央区南4条西23丁目1番36号 アーバン裏参道1F
 (地下鉄東西線: 円山公園駅より徒歩7分)

 飛躍への挑戦に乾杯!