訳注どうするか問題

もうすぐ,Fred NewmanとLois Holzmanの共著,”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Psychology Press)の邦訳,『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』が出版されます。北海道教育大学の川俣智路さんとの共訳です。

革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論(新曜社)

しばらく,この翻訳作業のことについて書いていきます。今回は「訳注」。

『革命のヴィゴツキー』の原著は注の量で圧倒されます。訳すと30頁となりました。これだけ注をつけてくれているのだから訳注は要らないかな,と共訳者と相談していました。実際,2016年から(!)翻訳作業を始めてだいぶ時間がたっており,訳注をつけるとなるさらに納期が遅れるわけです。

そんなとき,伊藤嘉高先生の訳された,ラトゥール『社会的なものを組み直す』(法政大学出版局)を読み,2つ衝撃を受けました。ひとつは,日本語としてとても読みやすいこと(これは,伊藤先生が後書きで書かれているように,強く意識されていたようです)。もうひとつは,訳注の有用性でした。

やっぱり訳注を入れようと共訳者に持ちかけ,言い出しっぺの責任でぼちぼちと作業を始めました。ほとんどは邦訳のある引用文献の,邦訳書の該当頁の情報なのですが,分かりにくい記述や1993年という原著出版年の古さに由来する記述の補足説明など入れているうちに,結局原注と同じ30頁に到達しました。

索引どうするか問題

もうすぐ,Fred NewmanとLois Holzmanの共著,”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Psychology Press)の邦訳,『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』が出版されます。北海道教育大学の川俣智路さんとの共訳です。

革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論(新曜社)

しばらく,この翻訳作業のことについて書いていきます。今回は「索引」。

『革命のヴィゴツキー』の索引は,人名・事項あわせて21頁あります。これでも削ったのです。電子書籍ならば検索すればよいので索引は不要ですが,紙の本では索引は絶対必要。

校正原稿の索引語候補に蛍光ペンで色をつけていくのですが,原稿が真ピンクになりました。

索引語の中には妙なのもあります。動物もいます。


ハチ
ビーバー
どのような文脈でこれらの生き物が出てくるのか。それは本書をご覧ください。

動物なんて心理学理論の話と関係ないじゃん,と思われるかもしれませんが,エピソードで内容を覚えている人もいます。ヴィゴツキーの『思考と言語』を読んだ人なら,犬と牛の名前交換のエピソードと言えば思い出しますよね。

でもヴィゴツキーがどのような議論で犬と牛を持ち出してきたかはいまいち覚えていないかもしれません。そういう人のために,ヒントとなる語をなるべく多く選び出しました。

編集の方にとっては地獄のような作業だったと思います。申し訳ありませんが,そういう理由だったのです。