Where the Baddelaries partisans are still out to mathmaster Malachus Micgranes and the Verdons catapelting the camibalistics out of the Whoyteboyce of Hoodie Head.
剣士と槍士はマラカス火弾をうちまかさんとなおも外に、ヴェルダンは頭巾頂の白声党から放たれる人食い弾を弩で攻める。
この節にはやたらと武器の名が見える。どうやら前節から戦争が始まっているようだ。とすると、前節の蛙の声(Brékkek)は鬨の声でもあるだろう。
戦っているのは誰か?前節では東ゴート族と西ゴート族の戦いだったが、本節では、どうやらカール大帝らしい。彼は現在の西欧諸国家の基礎を作った人物。
Baddelaries: badelaire(このような名の「反り刀」があった)、battle + Aries(牡羊座。占星術では、牡羊座の支配星は火星であるが、火星は戦いの神マルスの象徴でもある)
シャルル・ボードレールCharles Baudelaire?
partisans: partisan(ゲリラ隊員。このような名の「槍」があった)、artist?
mathmaster Malachus: "Master McGrath"
mathmaster: math + master(算数教師)
Malachus: malchus(このような名の剣があった)
このあたり、m…m…M…Mとmの頭韻がある。
math: アングロサクソンの言葉で、「なぎ倒す」(mow or cut down)。サンスクリットで「滅ぼす」。ヒンドゥスタニー語で「あばら屋、修道院」*2。(10/1追記)
Malachus Micgranes: ここには何人かの人名が見える。
カール大帝のラテン語名Carolus Magnus
Malachi Mulligan("Ulysses"の登場人物、マラカイ・マリガン)
Micgranes: migraine(火焔瓶fire grenade*1)
Verdons: ヴァーノン家Vernon Family、クロンターフ城を代々所有してきた。
ヴェルダンVerdun、フランス北東部の都市。ここは歴史的に重要な出来事が起きたことで知られる。
843年 ヴェルダン条約締結(カール大帝の領土を、彼の3人の孫が3つに分割して相続することを決めた条約。これが現在のフランス、ドイツ、イタリアの国境の基礎となる)
1916年 ヴェルダンの戦い(第一次大戦中、フランスとドイツのあいだで起きた激戦)
catapelting: catapult(弩(いしゆみ)) + pelting(たたきつける、取るに足らない)
camibalistics: cannibalistic(人食いの) + ballistics(弾道学)
Whoyteboyce: Whiteboys(白衣党)。18世紀アイルランドで活動した反乱軍。
Hoodie Head: Howth Head*1? Holy Headでは。
Hoodie: Hooded crow(ハシボソガラス)
*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.