私が担当する,1年生向け演習のタイトルが掲題のものです。半年をかけて,北海道内にある居酒屋について深く学んでいただきたいと考えています。
毎回の演習終了後に,振り返りをかねて「居酒屋の真髄通信」を作成する予定です。さっそく第一号通信を作成しました。
色物のように思われるかもしれませんが,とても真面目な狙いをもった演習です。半年間温かく見守っていただければ幸いです。
Finnegans tavern Annex
私が担当する,1年生向け演習のタイトルが掲題のものです。半年をかけて,北海道内にある居酒屋について深く学んでいただきたいと考えています。
毎回の演習終了後に,振り返りをかねて「居酒屋の真髄通信」を作成する予定です。さっそく第一号通信を作成しました。
色物のように思われるかもしれませんが,とても真面目な狙いをもった演習です。半年間温かく見守っていただければ幸いです。
伊藤が編集と執筆を担当した教科書が出版されました。
茂呂雄二・伊藤崇・新原将義(編) (2024). 新しい言語心理学 ひつじ書房
心理学の対象として言語を研究する際の迫り方にはいろいろとあります。この教科書は,従来の言語学や心理学の考え方から得られた知見を紹介しつつ,「新しい見方」(a new perspective)に立ったときに見えてくるものを描き出そうとするものです。
沈思黙考する際の言語,完璧な体系として書物に定着させた言語ではなく,人々と共に活動する際の言語,不完全な構築物として常に作り直され続ける言語。簡単にまとめると,世界とともに変化し続ける言語を心理学の対象としましょうよ,という見方です。
こういう考え方は実は今に始まったものではありません。ウィトゲンシュタインやヴィゴツキーといった先人たちがすでに主張していました。
遙か昔に卒業しても執筆をお声かけくださる師匠や同窓の仲間と共に,難産の末に(3年くらいお腹の中にいました…)書き上げた本書です。とりあえず一度お手に取っていただけましたら幸いです。
なお,関連して,本書構想の背景や執筆プロセスなどをお話しするオンライントークライブが開催されます。詳細は下のチラシから。ご参加をお待ちしています。
拙著『大人につきあう子どもたち:子育てへの文化歴史的アプローチ』(共立出版)が2刷となりました。ご愛読くださいましてありがとうございます。
増刷に際して1刷にあった要修正箇所を修正しました。下記に修正箇所一覧を掲載します。
1刷をお手元にお持ちの方におかれましてはご修正のほどお願いいたします。
お名前は個別に挙げられませんが,修正の必要な箇所についてご指摘くださった皆様にはこの場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。
p.36
1刷
コンピタンス・パラダイムに立脚し,前言語期の幼児と大人の
↓
2刷
コンピタンス・パラダイムに立脚し,幼児と大人の
p.97 注
1刷
Hedegaard(1999)はデンマークに暮らす
↓
2刷
Hedegaard(1999)においてはデンマークに暮らす
p.98 図4.1
1刷
家庭の習慣 保育園や幼稚園の習慣 小学校の習慣
↓
2刷
家庭の実践 保育園や幼稚園の実践 小学校の実践
p.135 断片16
1刷
【断片16】 ミズキ 時刻:11:19:54(ミズキは日直の1人)
↓
2刷
【断片16】 ミズキ(4歳) 時刻:11:19:54(ミズキは日直の1人)
p.135 断片17
1刷
【断片17】 ユカ 時刻:11:33:39
↓
2刷
【断片17】 ユカ(5歳) 時刻:11:33:39
p.135 断片18
1刷
【断片18】 トモミ 時刻:11:51:51(トモミは日直の1人)
↓
2刷
【断片18】 トモミ(6歳) 時刻:11:51:51(トモミは日直の1人)
p.136 断片19
1刷
【断片19】 トモミ 時刻:15:10:00
↓
2刷
【断片19】 トモミ(6歳) 時刻:15:10:00
p.137 断片20
1刷
【断片20】 ユカ 時刻:15:05:55
↓
2刷
【断片20】 ユカ(5歳) 時刻:15:05:55
p.184
1刷
イスにはジャンバーを着た
↓
2刷
イスにはジャンパーを着た
2刷
p.196 書誌情報の追加
Ninio & Snow (1996)とOchs & Kremer-Sadlik(2015)の間に
西阪仰 (2001). 『心と行為:エスノメソドロジーの視点』. 岩波書店.
を追加
2023年9月7~9日の日程で,公立はこだて未来大学で開催されていた認知科学会第40回大会に参加してきました。
私のお役目はプログラム委員会の立ち上げから始まっておりました。開催校の委員の先生が主導して行う下記の作業にSlackを通して微力ながら参加してきました。
・プログラム委員集め
・大会キャッチコピーの作成
・プログラム編成
・発表予定者への対応
・昼休みや懇親会での飲食の準備
そんな中で私もしっかり絡んで進めてきたのが,プログラムの中の1つの企画「特別企画 明和電機トークセッション:ご当地ゴムベースができるまで」でした。
オタマトーンでおなじみ明和電機の土佐信道社長が,函館を中心とする道南のスギなどの木材を使って作った楽器ゴムベース。その仕掛け人がはこだて未来大でデザインを教えられている原田泰先生でした。原田先生が道南材を使ったものの制作を,すでに何度かコラボしていた土佐社長に持ちかけました。実際に木材加工を担当するのが,函館市内に工房を開いて家具を作る鳥倉真史さん。この3人がコロナ禍で直接会えない中,オンラインで相談しながら楽器ができていくプロセスを語ってもらうのが今回のトークセッションの中身です。私の担当はトークセッションの司会(タイムキーパーとも言う)でした。
もちろん明和電機といえば製品を使ったライブです。思いがけず,ミニライブもしていただけることとなり,20年以上明和電機のおっかけをしていた身としてはライブ設営から関われるとあって有頂天でした。
土佐社長の会場入りからアテンドし,そのまま打ち合わせ。楽屋での楽器組み立ても間近で見ることができました。
ここでトラブル発生。社長が背負うパチモクは明和電機の象徴とも言える楽器で,今回も持ってきていただいていたのですが,楽屋で組み立て始めたところ,なんと動かないことが判明。ドライバでパチモクをバラして呻吟する社長を遠くから眺めることしかできません。
設営の時間となり,とりあえず動く音源とピアメカだけでも会場に運び込むことに。順調にセッティングができていたと思いきや,ここでもトラブル。なんと,これまで壊れたことがなかった音源までもがおシャカに。この時点で本番開始30分前です。またもや遠くから眺めるしかできない私。
とはいえ,ショウマストゴーオン。本番は無慈悲に始まります。もとい,私が司会なので,私が始めます。「明和電機代表取締役社長土佐信道さんです,どうぞ!」と噛まずに言うことができました。
オタマトーン,オタマミン,ゴムベース,スシビート,新製品のボーンバーの紹介に続いて,ゴムベースを使った歌を一曲。音源が使えないので,プログラム委員のO先生が発泡スチロールをボーンバーで叩き,不詳私がオタマトーンで(!)シンバルを叩く即席人間ドラムマシンとなりました。夢中だったので気づきませんでしたが会場はいちばん盛り上がった模様。
最後は明和電機愛唱歌「地球のプレゼント」をみんなで歌ってミニライブは終わり。そのままトークセッションとあいなりました。
夜はトークセッションのメンバーに関係者が加わって五稜郭近くで打ち上げ。FAN冥利に尽きる愉しい一日でした!
そうそう。もちろん,研究発表も行っています。
伊藤崇 2023.9.8 子どもの日常生活におけるスマートスピーカ使用の実態 日本認知科学会第40回大会 公立はこだて未来大学
プログラム委員としては,参加されたみなさんがとても愉しそうに研究談義をされていたのがなにより嬉しい。来年は東大で開催だそうです。
2023年3月3日~5日の日程で立命館大学いばらきキャンパスにて開催される日本発達心理学会第34回大会にて下記の通り研究発表をいたします。
3月4日(土) 15:00~17:00 イベントホール
4PM2-P-PS26 子どもの家庭生活に埋め込まれたデジタルテクノロジー
現在進めている,家庭における子どもの日常生活実態調査の一部を元に,子どもによるデジタルテクノロジー使用をどう分析するかを議論します。
対面開催される学会での研究発表は実に4年ぶりです。楽しみです。お待ちしております。
やられました…。
このブログと私の研究室のサイトを置かせていただいているサーバが,外部からの攻撃を受けて一部使えなくなってしまいました。
あんまり具体的に書くとあれですが,かつて使っていたとあるCMSを置きっぱなしにしていたら,その脆弱性をつかれて侵入されたようです。
定期的にバックアップを取っていたのが幸いして,サーバのファイルを一端すべて消した後で復元することができました。
ただ,直前まで運用していたブログもまた古いデータベースを使っていたりPHPのバージョンが古かったりと,今後問題が起こりそうなので,いっそのことと新しく作り直した,という次第です。
で,そうなると困るのが,拙ブログで引き合いの多いエントリーである「心理測定尺度集まとめ」に外から貼られていたリンクが切れてしまう点です。
そこで,以下にブログの当該エントリと,弊研究室サイトの中のまとめへのそれぞれのリンクを挙げておきます。なお,「ほぼ完全版」と「目次準拠版」は同一のリストです。「完全版」は,「尺度集」の本文中に引用されているすべての尺度を掲載したものです。
ご活用いただけましたら幸いです。
ブログエントリ
『心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ』所収尺度まとめ【ほぼ完全版】
研究会や勉強会などでたいへんお世話になっている岡部大介先生におつきあいいただき,ネットラジオをはじめてみることにしました。状況論という,心理学のなかでも割とニッチな部分に特化した内容なのでニーズがあるのかどうか分かりませんが,ゆるゆると続けていければと思っています。
心理学や認知科学においてすでにその一角を成している,状況論(situated approach)という考え方が世に現れておよそ30年が経ちました。
80年代から90年代前半に,先人たちが切り開いてくれた状況論の理論的な面白さを,(90年代後半に)大学生・大学院生であったわたしたちは感じながら研究を続けてきました。
ただその一方で,2010年代以降の,さらには「生まれたときから状況論」の若手研究者や大学院生とその熱狂を展開し,分かち合うことをわたしたちはサボりすぎていたように思います。
いただきものにお返しをしよう。あの,状況論が「生まれた」当時の熱気(本当に「熱気」があったのか?)を「ゆるゆると(コンヴィヴィアルに)」取り戻してみたい。そして,この先30年をちょっとでも前に推し進めていきたい。そんな単純な気持ちから,インターネットラジオを始めてみることにしました。
いきなり始めるのではなく,まずは「準備室」を開室しました。2人の「相談者」が,準備室の中で今後のインターネットラジオ企画についていろいろと画策する様子を一般に公開するのが,この,「コンヴィヴィアラジオ 生まれたときから状況論!(仮) 準備室」です。
岡部大介 @okabedaisuke
1973年生まれ。東京都市大学教授。「ボス」(上野直樹先生)との密なつきあいの中で状況論に出会う。
伊藤 崇 @dunloeito
1975年生まれ。北海道大学准教授。「師匠」(茂呂雄二先生)との衝撃的な出会いとともに状況論に出会う。
2021年9月24日(金) 19:00-20:00
YouTubeLiveにて限定配信します。
ちょっと聞いてみようかと興味を持たれたら, https://youtu.be/foWy95LY7ew にアクセスしてください!
私が入会している学会に,日本発達心理学会というのがあります。読んで字の如くで,発達心理学に関心を寄せる方々が集まる学会ですね。
この学会の下部組織として国内の各地区ごとに「地区懇話会」がもうけられています。私を含む3名で共同代表を務めているのですが,今年度は不詳私が幹事を務めることと相成りました。
企画を立てて実施すると学会本体から予算をいただけるようなので,今年度は何かやりたいね,という話をしています。共同代表の先生と話をした中で出たり自分で思いついたりしたのは次の3つくらいでしょうか。
その1 院生を中心とした研究発表会
研究のアウトプットを促進するための集まり。夏に開催して温泉地やキャンプ地をめぐる。
その2 難しい本を読む会,あるいは理論的研究の準備をするための語学講座
こちらはインプットを目指すための集まり。なかなか一人では理解がおぼつかない難しめの本を読む。または,洋書を読むのに必要最低限の語学を身につける勉強会。例えば,ピアジェやワロンを読むためのフランス語講座,ヴィゴツキーやレオンチェフを読むためのロシア語講座。
その3 非常勤講師互助会
北海道という地域ならではですが,専門学校や大学などで発達心理学関連の授業をもつことのできる人材不足という問題があります。いきおい,そうした授業は外部の非常勤講師に依存せざるをえません。そうした人材として大学院生は貴重な存在なのですが,いきなり教壇に立てと言われても難しい。そうした非常勤講師1年生となりそうな院生とともに,「発達心理学を教えるとはどういうことか」を考えたり,教える工夫を紹介し合ったりする。
その3は割と必要なのではと思っているのですが,どうでしょうか。
他にもこんな企画はどうでしょう,というご提案があったらお知らせいただければ幸いです。>関係各位
サバティカルの成果第2弾です。
フレド・ニューマン、ロイス・ホルツマン 伊藤崇・川俣智路(訳) (2020). 革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論 新曜社
フレド・ニューマン(Fred Newman)とロイス・ホルツマン(Lois Holzman)が1993年に出版した”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Routledge)の邦訳です(底本は2014年にPsychology Pressから出たクラシックシリーズの1冊)。
1980年代にアメリカで起きたソビエト心理学の再評価運動においてヴィゴツキーは常にその中心にいた心理学者であり、その動向はヴィゴツキー・リバイバルと呼ばれるほどでした。
当時のヴィゴツキー評価の方向性を、その渦中にあって批判し、新たな実践を模索していたのが著者の2人です。
この批判の仕方がめっぽう面白い。詳細は読んでみていただきたいのですが、一部でも取り上げてみましょう。
たとえば、ヴィゴツキー・リバイバルの立役者、マイケル・コールについて(ちなみに著者のホルツマンはコールがニューヨークのロックフェラー大学に設立した研究所で働いていましたし、共著者にもなっていました)。彼が中心になって模索された「生態学的に妥当な方法論」は、子どもたちが実験室で見せるパフォーマンスの現実場面でのそれとの無関連性を批判するものでしたが、
生態学的に妥当なものであるとしても、科学によって生み出されたものを「見ること」は、結局、社会に規定された行動である。新しい物事を見ることができるようになるかもしれないが、見ている物事そのものを変える(transform)ことはないのだから、革命的活動ではないのである。(第2章 方法論としての実験室 p.35)
ニューマンとホルツマンが志向するのは、現実をただ「見て」「記述する」科学ではありません。さらに言えば、現実をただ「見る」ことなどできない、と考えています。
では何ができるのでしょうか? あとは本書を読んでみてください。
もうすぐ,Fred NewmanとLois Holzmanの共著,”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Psychology Press)の邦訳,『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』が出版されます。北海道教育大学の川俣智路さんとの共訳です。
革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論(新曜社)
しばらく,この翻訳作業のことについて書いていきます。今回は「訳注」。
『革命のヴィゴツキー』の原著は注の量で圧倒されます。訳すと30頁となりました。これだけ注をつけてくれているのだから訳注は要らないかな,と共訳者と相談していました。実際,2016年から(!)翻訳作業を始めてだいぶ時間がたっており,訳注をつけるとなるさらに納期が遅れるわけです。
そんなとき,伊藤嘉高先生の訳された,ラトゥール『社会的なものを組み直す』(法政大学出版局)を読み,2つ衝撃を受けました。ひとつは,日本語としてとても読みやすいこと(これは,伊藤先生が後書きで書かれているように,強く意識されていたようです)。もうひとつは,訳注の有用性でした。
やっぱり訳注を入れようと共訳者に持ちかけ,言い出しっぺの責任でぼちぼちと作業を始めました。ほとんどは邦訳のある引用文献の,邦訳書の該当頁の情報なのですが,分かりにくい記述や1993年という原著出版年の古さに由来する記述の補足説明など入れているうちに,結局原注と同じ30頁に到達しました。