【出版】勤務校の先生方との共著が出ます

まだ書店には並んでいないようなのですが,執筆者一同に送られてきましたので告知します。

私の勤務する北海道大学教育学部の創立70周年の記念事業として以下の本が出版されました。

北海道大学教育学部・宮﨑隆志・松本伊智朗・白水浩信(編) (2019). ともに生きるための教育学へのレッスン40:明日を切り拓く教養 明石書店

私はその中の1章として「社会化」をテーマに短い文章を書きました。

伊藤崇 (2019). 子どもは大人を社会化するか 北海道大学教育学部・宮﨑隆志・松本伊智朗・白水浩信(編) ともに生きるための教育学へのレッスン40:明日を切り拓く教養 明石書店 pp.80-83.

お手にとっていただければ幸いです。

研究室サイトを作成しています

昨年から独立したゼミをかまえはじめ,この4月から研究生が入るのと,後期からは正式なゼミ生が加わるので,研究室サイトを立ち上げてみました。

言語発達論研究室 北海道大学大学院教育学研究院

立ち上げてはみたものの,追記すべきことは山ほどあり,それをする時間はなし。悪いクセで,サイトをいじり始めると止まらなくなるので,ここらでいったん作業をペンディングにします。

いじっている間に,こちらのHere Comes Everybodyの方の管理をMovable TypeからWordpressに移行させたいという欲求もむらむらと出てきたり。ただでさえ滞っている原稿書きがさらに遅くなるのでさすがにそこまでは無理。移行作業は来年の春ぐらいには手がつけられるかも。誰か昼ご飯3食分くらいで移行作業を手伝ってくれる人はいないものでしょうか。

今年は学会に行かないことにした

今年頭にTwitterとFacebookをやめてしまった。困るかと思ったら,少なくとも私はまったく困っていない。むしろ余計な情報が目に飛び込んでこないので精神的に穏やかだ。

ブログはまだ細々とではあるものの続けていこうと思う。生存証明のようなものだ。

4月になり,息子が小6,娘が幼稚園の年中組になった。私は勤続15年目に入る。

今年から「言語発達論」というタイトルを掲げて講義を始める。もちろん講義や演習はずっとしていたが,専門領域について半期通して話すのは実は15年目にして初めてなのである。講義の資料にもなる本をずっと執筆している。ゆっくりとではあるが,進んでいる。

本と言えば,翻訳を1冊仕上げなければならず,こちらは夏までには草稿をつくる。最初は1人でやろうと思っていたが,時間的に無理だと判断して,もう1人に入ってもらうことにした。適任の方なのでこれでぐっと進むはずである。

新しい本の企画も動き始めた。これも単著で,タイトルと概要は編集委員の先生にお送りしたからそのうち何か案内が出るのではと思う。

というわけで今年はずっと何かを書く1年になる。私はとにかく遅筆であるので,いきおい,もう余計な用事を入れずに集中する必要がある。そこでタイトルにあるように今年は学会に行かないことにした。学会以外の出張はじわじわと入っており,そちらに注力するためである。

ゼミをはじめました

北大に来て早や14年,ついに「ゼミ」を開講しました。

「言語発達論」という看板を掲げたところ,8人の2年生と1人の3年生(しかも他学部)が来てくれました。方言など文化としての言語に関心がある人,乳児期から始まる言語発達過程に関心がある人,人間関係とコミュニケーションに関心がある人が集まりました。
こういう乱雑さはまさに期待していたものなので,とても嬉しい限り。そう,言語発達は,言語学と心理学と社会学を横断するテーマなのです(あとは情報科学も)。

ゼミの冒頭には毎週「インプロ部」を行うことも決定。からだほぐしをして,応答性を高めてから,輪読に入るという流れです。
可能な限り,読書会延長戦としての飲み会も毎週おこなう所存です。

2014年総括

2014年の最後の講義が本日終わり,気持ちとしては御用納めです。

研究関係
・「パフォーマンス」という概念によって学習と発達を捉え直すムーブメントにささやかながら貢献できたかと。
 茂呂先生からのお誘いに身を委ねて多くの人とお会いすることができました。また,11月にはHolzman先生を北海道にお連れして,べてるの家訪問と北大でのWSを実現させました。これは本当によかったと思っています。

・授業中のコミュニケーションを分析するシステムについて。
 昨年から引き続き,とある企業と連携してツール開発に取り組んでいます。学校の先生が自分の授業を振り返るときに有効なツールになればいいなあと思っています。教心,教育工学会,学校の公開研究会,台湾でのシンポで発表してきました。来年は,このツールに関する公開研究会を国内の他の大学から研究者をお呼びして開催する予定。また,授業以外のフィールドでの活用事例について,発心で発表します。

・論文を1本書きまして,来年にはなんかに載るのではないかと思いますが,微妙にレスポンスがにぶいのが気になります。

教育関係
・教育技術論
 中高の先生になるという学生を相手に何を論ぜよと言うのか分からないまま引き受けて,もがきながら始めました。これまでやったことのなかった試みを2つ入れています。
 1つは,学生同士で模擬授業の様子をタブレットPCで録画してもらい,その映像を私が後から見てレポートとともに評価を全員にフィードバックすること。
 もう1つは,自分の授業風景を撮影してその日のうちにyoutubeにアップロードすること。

・教育心理学
 非常勤で教育心理学を担当することになりました。実は教職の教育心理学を担当するのは初めてのこと。何も蓄積がないところから授業を構想して苦労していますが,学生が明るいので助かっています。

・最近,コーチングを勉強し始めています。ひょんなことからつながった絆を頼りに,少しずつネットワークを広げつつあります。

今年は多くの人に引き回していただいたという感があります。それに応えられるだけの中身をつけていかなければなりません。

来年もよい年になりますよう。みなさまにおかれましてもどうかご自愛下さい。

伊藤崇

教育技術論

今年から「教育技術論」なる科目を担当しています。教職科目,つまり,中学校や高校の先生になるためには履修しなければならない科目です。ですので,教育学部以外の様々な学部・大学院の学生院生が履修しに来ます。

なにしろ初めて担当するので勝手が分からず,五月雨式に来る欠席届に対応するのに追われてもうすでにやる気がそがれています。

それでもなおがんばれるのは,この講義の1時間分,私がお世話になっている小学校の先生にお話しいただけることになったからです。本日その打ち合わせに行ってきました。

10月21日にその先生にお越しいただくことになりました。今から楽しみです。

ニセコで合宿

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9月7~8日の日程で,学部+大学院拡大ゼミ合宿が行われました。

ゼミの博士課程に在籍している北海道科学大学の先生の口利きがあり,同大がニセコにもっている宿泊研修施設をお借りすることができました。

たまたま貸し切りにできたこともあったせいでしょうが,デザインのすぐれた,とても過ごしやすい施設でした。

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合宿の内容は,主に各自の研究発表にあてられました。学部3年生から博士課程3年目まで幅広く,お互いに勉強になったことと思います。

自分はと言えば,雰囲気がよくて昼間からビールを飲みながら研究発表をうかがっていました。

その流れで夜のBBQに突入し,ほどよくできあがりました。花火をもって走り回ったり,そばを流れる小川に入って遊んだりと,なかなか楽しく過ごせました。

このところ出張続きでへとへとだったところに,いい息抜きができたように思います。

8月4日北大OCにてお会いしましょう

8月4日午前に高校生向けオープンキャンパスが北大で開かれます。うちの学部では私を含む8人の教員がそれぞれ演習を開講します。高校生の皆さん,夏の北海道を体験するついでにぜひお越しください。お待ちしています。

演習名:教育の生態学
担当:伊藤 崇
テーマ:「体のリズムで分かる対面コミュニケーションのしくみ」
 日常の様々な場面で私たちはいろいろな人とコミュニケーションをとって暮らしています。学校の授業は,大人と子どもの間で行われるコミュニケーションの1つだと言えます。ですから,コミュニケーションのしくみを知ることで,学校の授業を改善していくことができるかもしれません。
 この演習では,体のリズムによってコミュニケーションの実態を測定する最新のセンサー技術と情報分析技術を体験してもらうことを通して,学校の授業を改善するために何が必要なのか,一緒に考えていければと思います。

大教室で講義をするために(3)

3. Twitterという学習回路を開く

ぼくがTwitterのアカウントをもっており,しょっちゅう何かつぶやいているのと同じように,受講生もしょっちゅう何かつぶやいたり,タイムラインを追っていたりするわけです。講義をする上でこれを何とか利用できないかと思っていました。

今回の第1回の講義の終了後,自分のアカウント情報を見ると,フォロワー数がじわっと上がっていました。どうやら受講生がフォローしてくれたということが分かりましたので,いっちょやってみようという気持ちになりました。

そこで,担当回数の半分が過ぎた頃,おもむろに,講義専用のハッシュタグを設定し,レジュメに記載しました。「#KN2amcn」というもので,KyoikugakuNyumon2 AMaChaNの略です。

それまでも,講義中に講義に関連した内容を(←ここ重要)ツイートしてくれた受講生はいました。ハッシュタグを使うことで,個々ばらばらのつぶやきを1本の時間の流れに統合し,全体を閲覧することが可能になります。

論より証拠,こちらから今回の講義中や講義の外において,講義に関することとして受講生が行ったツイートを見ることができます。

はじめは,賑やかしというか,お遊びでハッシュタグを入れたツイートをする受講生がちらほらと見られるくらいでした。私はそれに対してツイートの内容と同じコンテクストでリプライすることとしました。つまり,まじめに講義内容と関係するのであればまじめな,遊びであれば(例えば,「単位ください」など)ふざけたリプライを返すようにしていました。受講生によっては「教授から返信が来た!」と恐れおののいたり喜んだりといろいろな反応があります(ちなみに,私は「教授」ではないのですが,多くの受講生は大学の先生のことを「教授」と呼ぶものだと考えているようです)。

そのうち,講義のTAをしてくれた院生さんが,自分のアカウントを使って講義の実況をすると申し出てくれました。そこで,最後の2回は,TAさんに講義のリアルタイム中継をお願いすることとしました。結果的に,この中継はとてもよい効果を生んだと思います。すなわち,ハッシュタグで統合されたタイムラインに1つのストーリーを持たせることができ,個々の受講生のツイートはそのストーリーをコンテクストとして読み解くことが可能になるのです。イメージすると,ストーリーというしっかりとした幹に1本1本の枝が突き刺さっていくという感じでしょうか。

ここで本当に嬉しかったのは,講義に関連したツイート群をtogetterにまとめてくれた受講生がいたことです。こちらからお願いしたわけではないのですが,「自分の復習になりますから」と自発的に引き受けてくださいました。しゅがーさん,本当にありがとうございます。講義は「ナマモノ」なので,終わってしまうと講義した者ですらそのときのことを忘れてしまいます。ですが,こうしてまとめていただけると思い出すことができていいですね。

今回個人的にTwitter連動がうまくいった(ように感じる)背景には,実況をしたことがあるTAさんがいたことと,受講生の中に積極的にハッシュタグを使ってつぶやいてくれる方がいたこと,があったように思います。逆に言えば,そういう幸運なことがないと,寂しい結果になるかもしれません。

さて,Twitterが学習の回路としてどのような可能性を持っているのかについてです。

受講生には専用のハッシュタグを知らせてありますので,講義をしているさなかに,他の受講生がどんなことをつぶやているのか,リアルタイムで検索し,閲覧することが可能です。これによる効果は2つあったように思います。

1つは,私の話したことに対する,他の受講生の反応を知ること。例えば,「いじめ」を取り上げた回では,この問題に対する受講生間の態度の違いが鮮明に出て,あたかもグループディスカッションが起きているような感覚を,後からタイムラインを見返してみて感じました。受講生同士が現実に面と向かって話すことではなかなか得られない話し合いの内容だったのではないかと思います。実際に,「いろいろな考えを知ることができてためになる」というツイートも目にしました。

2つ目は,特に大教室の場合はそうですが,互いに面識のない受講生同士で,つながりが生まれるということ。これは不思議なもので,「北大生である」という共通項しかない人々がたまたま同じ講義に参加していて,たまたまハッシュタグを用いてつぶやくことでつながりがそこに生まれるのです。これはある種の「学習」と言っていいでしょう。もちろん,こういうつながりが苦手であったり,嫌いであったりする方もいるでしょう。そういう方は,ハッシュタグをつけずにつぶやけばいいだけの話であります。

実はもう1つ効果があって,それは私にもたらす効果なのですが,講義中に受講生がスマホをいじっていてもまったく気にならないのです。なぜなら,上記のように講義中の他の人のツイートを閲覧していたり,あるいは実際にツイートしている可能性があるからで,そういう形での講義への参加を許している以上,むしろどんどんスマホを見てほしい,と思えてくるのです。冗談じゃなく,実感した本当のことです。

大教室で講義をするために(2)

2. 講義用のスライドを用いたレジュメ

何のことはないのですが,要は,パワーポイントのスライドを用いて講義を行うため,そのスライドをレジュメとして配布したというだけの話です。

昨年までは,私はパワーポイントで作成した配布資料をレジュメとして配ることはできれば避けていました(学会などでは別です)。私が話すことをノートにとってほしかったからです。その代わり,スライドに盛り込んだ図表などは資料として配布していました。ただ,私の話すスピードが速いのと,どうしても作り込むスライドの枚数が多くなり,多くの学生がノートをとれきれずに追いつかないという結果になってしまっていました。

これだと,ノートをとる気にもならずに結果的に講義に参加しにくくなってしまうのでは,と考え直すにいたりました。実際に受講生からはスライドを配布資料にしないことに対する不満が毎回出ていました。

そこで今回から方針を変え,スライドを印刷して,講義前に受講生に配ることとしました。

パワーポイントのスライドを配布資料としたものは,おそらく大学にいれば一度は目にしたことがあるでしょう。その作成の仕方はいろいろあると思いますが,私には以下のこだわりがあります。

・A4横置きの用紙に,スライドを4枚掲載するスタイルとすること。

 パワーポイントで配布資料を作成する際に,多くの方はA4「縦置き」に6枚を掲載する方が多いように思います。ただこれでは,スライド1枚ずつが小さくなってしまい,いきおい,スライドの中に書かれた文字も小さくなってしまい見づらいように思っています。そこで,スライド1枚ずつを大きく見せるために上記のスタイルを採用しました。

 前述のようにサポートサイトに配布資料をあげてありますので,どんなものかご覧ください。

 ただし…

・講義の際に提示したスライドと,配付資料に掲載するスライドを微妙に変えること。

 これには3つの理由があります。

 1つ目は,著作権の関係。私は今回担当した講義においてドラマ「あまちゃん」を利用しました。ドラマの内容を伝えるために,NHKの公式サイトにあがっているいくつもの写真をピックアップし,講義中に用いるスライドの中に盛り込みました。ただ,そのスライドをそのまま印刷し,受講生に配ることはやめた方がいいだろうと判断しました。そこで,NHKのサイトからもってきた写真をスライドから削ったバージョンのパワーポイントファイルを作成し,それを配布資料用として印刷することにしていました。サポートサイトにあがっているのはこのファイルをPDFにしたものです。

 2つ目は,講義に参加し,ノートをとってもらうこと。パワーポイントのスライドをレジュメとして配布するのを嫌う先生(昨年までの私を含めて)の話をうかがうと,「レジュメを配ると,学生はそれをもってすぐに教室から出て行ってしまう」「学生はまったくノートをとらない」と嘆いておられました。確かにそのように行動することは合理的ではあります。なぜなら教員が講義中に説明することの「要点」がすべて盛り込まれているから,あえて自分でノートをとる必要がないわけです。今回は講義中に用いるスライドと配布資料を微妙に変えたので,講義に実際に参加し,投影されているスライドの表記と手元の資料とを見比べながら不足している部分をノートしていかないと,資料を十分に理解できないようになっていたかと思います。

 3つ目は,えー,ここまで書いているうちに忘れました。思い出したら追記します。