開会式の前日、プレ企画から参加してきました。Maria Hedegaardの企画による、CHACDOCと呼ばれるグループによるセッションで、1日を通して開かれました。Hedegaardのことやその論文は最近知ったのですが、いわく、ひとつの制度的状況のなかにいる子どものことだけを見ても、その発達や学習を説明することはできない、複数の制度的状況のあいだにある要求されること(demand)の矛盾を通して子どもは発達するのだ、という主張のようです。彼女を中心として開催されている研究グループがCHACDOCなのだそうで、それを今回はプレ企画としてオープンにやってみたということでしょうか。
スピーカーの一人、Anna Stechenkoさんは、自分の態度をTransformative Activist Stanceと呼んでいました。言い換えると、"Change world, simultaneously change themselves"ということだそうです。Charlotte Hojholtさんのテーマは"How children arrange social communities across communities"で、子ども自身で自分の生きるコンテクストを作るという実践を紹介していました。Liv Mette Glbrandsenさんは離婚協議に子ども自身を参加させる実践の話。これらの研究の方向性を見ると、みなやはりレイブの言うような変革的実践に焦点を当てていたことが分かると思います。
あけて初日、会場のひとつローマ大学の講堂で開会式が執り行われ、そのまま2人のキーノートスピーチとなりました。うち一人はフランスのシステムデザイン研究者、もう一人は私にもなじみのあるDavid Olsonでした。オルソンの話は札幌でも聞いたことがありますが、そのときと同じような言語の話でした。続くスピーカーはPascal Begun。お名前は知りませんでしたが、システムのデザイナーということでした。ある道具をデザインすることは、それを用いる社会的なシステム全体をデザインすることでもあるという観点は、すでに普及したものでしょう。あまり具体的な話はなかったかと記憶しています。
(左:ローマ大学講堂 右:大学内の松の木。これが「ローマの松」か…)
初日の午後からのシンポはたくさん並行して開かれていたので、個人的な興味でうろうろしていました。興味のわき方にもいろいろあると思うのですが、今回はミーハーに徹していました。
ご尊顔を拝見したい先生の一人が、Blum-Kulka。多人数環境への参加過程を子どもの言語発達過程として捉えている方で、関心の重なり方が自分とよく似ていて参考にしているのです。シンポでは、double-opportunity spaceという考え方を知りました。子ども同士の会話をそのように捉えるもので、それは「文化を創り、意味を作る」機会でもあり、同時に「談話の組織化の仕方が発達する」機会でもあるという考え方です(未見ですが、Blum-Kulka, et al. 2004に詳細があるそうです)。
ところで、今回のISCARは会場がローマ市内テルミニ駅周辺に分散していて、期間中毎日午前中に行われるキーノートスピーチは大学内なのですが、昼からのポスターセッション、午後からのシンポと口頭発表はそれとは別の建物で開かれていました。テルミニ駅を挟んで大学と反対側に会場があるのですが、その間がけっこう離れていて、歩いて15分はゆうにかかりました。宿が分科会会場に近い所だったので、朝大学まで15分かけて歩き、昼からまたホテルの方向へ戻るという毎日。荷物を抱えて歩き回っていたおかげで、夜はワインでイタリア料理をばくばく食べていたのですが、まったく体重は増えませんでしたね。