湖と海

子どもたちの学校は夏休みに入ったものの私はなかなか休みがとれない。

どこにも行かないのはアレなので,日曜日は家族で支笏湖へ。湖水の中が見られる遊覧船に乗っていっときの涼を得る。子どもたちはソフトクリームを食べたり,釣りをしたり。釣った魚は持ち帰って唐揚げにして食べた。

火曜水曜は香川県の小豆島に。調査などでお世話になっているとある小学校の先生方が合宿をするというので参加させてもらった。校内で研修をすればすむところ,わざわざ時間を作って,フェリーで移動して小豆島に来て活動するというところがユニークである。その魅力にさそわれて合宿に来るのも3回目となった。

今年はいつになく先生方が「まじめにバカをやる」ことに正面から取り組んでいた。子どもの気持ちを知るには大人だって遊ぶことが大切だと常々考えていた者からすると非常に気持ちがよい。

あるグループは「海賊王になる」と息巻いて砂浜からボートをこいで沖の無人島に行った。かれらの手には「宝物」があった。

066-小林標『ラテン語の世界』(中公新書)

小林標 (2006) ラテン語の世界:ローマが残した無限の遺産 中央公論社

ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)

積ん読を消化すべく,仕事への行き帰りなどで少しずつ読み進めていた一冊。ページをめくる手がなかなか進まなかったのだが,ようやく読了。

ラテン語はすでに話す人の絶えた死語である,という認識が大きく変わる。

ラテン語に由来する語を,フランス語やイタリア語,スペイン語はもちろんのこと,英語の中から見つけることはたやすい。言い換えると,世界の多くの人々はラテン語の恩恵をいまなお享受して言葉を使っているということだ。

そうしたラテン語を実用のための言語として学ぶのに,日本語話者は向いている,というのが著者の評。なぜならラテン語では母音の長短の区別が音韻論的な価値をもっているからである。こうした特徴はヨーロッパの多くの言語には見られないものである。

levisという綴りは,母音の長短を考慮に入れると4通りの発音が可能である。そして,この場合,その四つの発音が意味を区別してしまうのである。
 短短(レウィス)「軽い」単数主格
 短長(レウィース)「軽い」複数対格
 長短(レーウィス)「なめらかな」単数主格
 長長(レーウィース)「なめらかな」複数対格

p.84

「おおおばさん」「いりえへいく」のように,母音を重ねることに慣れた耳をもつ日本人には難なく聞き取ったり話したりすることができるだろう。

さらに,アクセントも強弱ではなく高低アクセントだったのではないか,と著者は推測する。実際に,ラテン語のラジオ放送Nuntii Latini(なぜかフィンランドのラジオ局が制作している)を聞いてみると,のっぺりとした音調がなんだか日本語に近いような気がする。

本書はラテン語初学者のための入門書というよりも,ラテン語を学ぶ上で必要な地理的,歴史的,文化的背景の入門書として書かれている。著者もラテン語文学を専門としているようだ。言語としてのラテン語の説明は必要最低限に抑えられているが,文中や巻末に言語学的な入門書・専門書が挙げられているのでそちらを参照すればよいのだろう。

【学会】日本質的心理学会第16回大会に参加します

明治学院大学にて開催される日本質的心理学会第16回大会に下記の通り参加します。

9月21日(土) 10:00-12:00 2号館 2202教室
関係を紡ぐ言葉の力/言葉を紡ぐ関係の力:「言葉する人 (Languager) の視点から心理療法・教育・学習を横断的に捉えなおす
企画・司会:青山征彦(成城大学社会イノベーション学部)・石田喜美(横浜国立大学教育学部)
話題提供:松嶋秀明(滋賀県立大学人間文化学部)・加藤浩平(東京学芸大学教育学部)・松井かおり(朝日大学保健医療学部)
指定討論:伊藤 崇(北海道大学大学院教育学研究院)

私,この学会の会員ではないのですが,いろいろとかかわらせていただく機会が多くなっている気がします。

それにしても,Languagerという視点は面白いですね。おそらく,『鏡の国のアリス』に登場するハンプティ・ダンプティはLanguagerのひとりでしょう。

‘When I use a word,’ Humpty Dumpty said, in rather a scornful tone, ‘it means just what I choose it to mean — neither more nor less.’
‘The question is,’ said Alice, ‘whether you can make words mean so many different things.’
‘The question is,’ said Humpty Dumpty, ‘which is to be master — that’s all.’
Alice was too much puzzled to say anything; so after a minute Humpty Dumpty began again. ‘They’ve a temper, some of them — particularly verbs: they’re the proudest — adjectives you can do anything with, but not verbs — however, I can manage the whole lot of them! Impenetrability! That’s what I say!’
‘Would you tell me please,’ said Alice, ‘what that means?’
‘Now you talk like a reasonable child,’ said Humpty Dumpty, looking very much pleased. ‘I meant by “impenetrability” that we’ve had enough of that subject, and it would be just as well if you’d mention what you mean to do next, as I suppose you don’t mean to stop here all the rest of your life.’
‘That’s a great deal to make one word mean,’ Alice said in a thoughtful tone.
‘When I make a word do a lot of work like that,’ said Humpty Dumpty, ‘I always pay it extra.’

Through the Looking Glass, by Lewis Carroll