大人になってから振り返れば3週間などあっという間の出来事に過ぎない。しかし、1歳8か月の子どもにとっての3週間とは行動の変化が起こるには十分な時間のようだ。アマネが3週間ほど妻の実家にいたあいだに、びっくりするような変化が彼に起きていた。
まず、言葉が増えた。とは言っても「ジッジー」(遊んでくれる男の人)「クック」(クツ、転じて外に行くこと)「コッコ」(鳥一般)「バーバイ」(バイバイのこと、遊びを止めるときには遊具に向かって言う)「プップー」(乗り物一般)くらいだが。
ごはんの食べ方が変わった。食べられるものが格段に増えた。ちょっと前は口に入れてもべえっとはき出していた肉やイモのたぐいもモグモグ噛んで飲み込んでしまう。ご飯もスプーンを手に持ってそれですくって口に運ぶことができるようになっていた。
もちろん、食事を作る側のなみなみならぬ努力というものもある。アマネは、大根とニンジンと里芋の入った味噌汁が好物で、ほぼ毎日食べている。かつては、3つの食材すべてイチョウ切りにしていた。ただ、それだとなぜかニンジンには手を伸ばさないことが多かった。
実家にいる間に、大根とニンジンの切り方をイチョウ切りから拍子木切りへと変えてみたらしい。すると、どうもつるつると口に入っていくのが楽しいようで、自分から手を伸ばしてパクパク食べるようになっていた。ニンジンを残さずに食べてくれるのは嬉しいことである。
一番の変化は、外遊びがむちゃくちゃ好きになった、ということである。もちろん札幌では3月まで雪が降っていたわけだから、外に出て遊ぶということは1歳半の子どもには難しい。難しくないのかもしれないのだが、雪国育ちでない親には雪の中での遊ばせ方が分からない。
雪がないとなると、それこそイヌのように走り回る。なんでも実家では食事のときと寝るとき以外はずっと庭にいたそうだ。おかげで真っ黒になって帰ってきた。札幌もこれからいい季節になるので、ちょうどよかったのかもしれない。
クレヨンを使って絵(というか軌跡というか)を描くことも覚えた。さっそく、水で消えるクレヨンを買ってきて、生協でもらってきた「母の日似顔絵コンテスト」用紙を手渡した。