攻撃を受けました+「心理測定尺度集まとめ」はどこにあるのか問題

やられました…。

このブログと私の研究室のサイトを置かせていただいているサーバが,外部からの攻撃を受けて一部使えなくなってしまいました。

あんまり具体的に書くとあれですが,かつて使っていたとあるCMSを置きっぱなしにしていたら,その脆弱性をつかれて侵入されたようです。

定期的にバックアップを取っていたのが幸いして,サーバのファイルを一端すべて消した後で復元することができました。

ただ,直前まで運用していたブログもまた古いデータベースを使っていたりPHPのバージョンが古かったりと,今後問題が起こりそうなので,いっそのことと新しく作り直した,という次第です。

で,そうなると困るのが,拙ブログで引き合いの多いエントリーである「心理測定尺度集まとめ」に外から貼られていたリンクが切れてしまう点です。

そこで,以下にブログの当該エントリと,弊研究室サイトの中のまとめへのそれぞれのリンクを挙げておきます。なお,「ほぼ完全版」と「目次準拠版」は同一のリストです。「完全版」は,「尺度集」の本文中に引用されているすべての尺度を掲載したものです。

ご活用いただけましたら幸いです。

ブログエントリ
『心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ』所収尺度まとめ【ほぼ完全版】

研究室サイト
『心理測定尺度集I~VI』所収尺度まとめ【目次準拠版】
『心理測定尺度集I~VI』所収尺度まとめ【完全版】

ネットラジオはじめます

研究会や勉強会などでたいへんお世話になっている岡部大介先生におつきあいいただき,ネットラジオをはじめてみることにしました。状況論という,心理学のなかでも割とニッチな部分に特化した内容なのでニーズがあるのかどうか分かりませんが,ゆるゆると続けていければと思っています。

■どんな配信なの?■

心理学や認知科学においてすでにその一角を成している,状況論(situated approach)という考え方が世に現れておよそ30年が経ちました。

80年代から90年代前半に,先人たちが切り開いてくれた状況論の理論的な面白さを,(90年代後半に)大学生・大学院生であったわたしたちは感じながら研究を続けてきました。

ただその一方で,2010年代以降の,さらには「生まれたときから状況論」の若手研究者や大学院生とその熱狂を展開し,分かち合うことをわたしたちはサボりすぎていたように思います。

いただきものにお返しをしよう。あの,状況論が「生まれた」当時の熱気(本当に「熱気」があったのか?)を「ゆるゆると(コンヴィヴィアルに)」取り戻してみたい。そして,この先30年をちょっとでも前に推し進めていきたい。そんな単純な気持ちから,インターネットラジオを始めてみることにしました。

いきなり始めるのではなく,まずは「準備室」を開室しました。2人の「相談者」が,準備室の中で今後のインターネットラジオ企画についていろいろと画策する様子を一般に公開するのが,この,「コンヴィヴィアラジオ 生まれたときから状況論!(仮) 準備室」です。

■誰が話すの?■

岡部大介 @okabedaisuke
 1973年生まれ。東京都市大学教授。「ボス」(上野直樹先生)との密なつきあいの中で状況論に出会う。

伊藤 崇 @dunloeito
 1975年生まれ。北海道大学准教授。「師匠」(茂呂雄二先生)との衝撃的な出会いとともに状況論に出会う。

■いつどこでやるの?■

2021年9月24日(金) 19:00-20:00
YouTubeLiveにて限定配信します。
ちょっと聞いてみようかと興味を持たれたら, https://youtu.be/foWy95LY7ew にアクセスしてください!

新刊『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』(新曜社)が出ました

サバティカルの成果第2弾です。

フレド・ニューマン、ロイス・ホルツマン 伊藤崇・川俣智路(訳) (2020). 革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論 新曜社

フレド・ニューマン(Fred Newman)とロイス・ホルツマン(Lois Holzman)が1993年に出版した”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Routledge)の邦訳です(底本は2014年にPsychology Pressから出たクラシックシリーズの1冊)。

1980年代にアメリカで起きたソビエト心理学の再評価運動においてヴィゴツキーは常にその中心にいた心理学者であり、その動向はヴィゴツキー・リバイバルと呼ばれるほどでした。

当時のヴィゴツキー評価の方向性を、その渦中にあって批判し、新たな実践を模索していたのが著者の2人です。

この批判の仕方がめっぽう面白い。詳細は読んでみていただきたいのですが、一部でも取り上げてみましょう。

たとえば、ヴィゴツキー・リバイバルの立役者、マイケル・コールについて(ちなみに著者のホルツマンはコールがニューヨークのロックフェラー大学に設立した研究所で働いていましたし、共著者にもなっていました)。彼が中心になって模索された「生態学的に妥当な方法論」は、子どもたちが実験室で見せるパフォーマンスの現実場面でのそれとの無関連性を批判するものでしたが、

生態学的に妥当なものであるとしても、科学によって生み出されたものを「見ること」は、結局、社会に規定された行動である。新しい物事を見ることができるようになるかもしれないが、見ている物事そのものを変える(transform)ことはないのだから、革命的活動ではないのである。(第2章 方法論としての実験室 p.35)

ニューマンとホルツマンが志向するのは、現実をただ「見て」「記述する」科学ではありません。さらに言えば、現実をただ「見る」ことなどできない、と考えています。

では何ができるのでしょうか? あとは本書を読んでみてください。

訳注どうするか問題

もうすぐ,Fred NewmanとLois Holzmanの共著,”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Psychology Press)の邦訳,『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』が出版されます。北海道教育大学の川俣智路さんとの共訳です。

革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論(新曜社)

しばらく,この翻訳作業のことについて書いていきます。今回は「訳注」。

『革命のヴィゴツキー』の原著は注の量で圧倒されます。訳すと30頁となりました。これだけ注をつけてくれているのだから訳注は要らないかな,と共訳者と相談していました。実際,2016年から(!)翻訳作業を始めてだいぶ時間がたっており,訳注をつけるとなるさらに納期が遅れるわけです。

そんなとき,伊藤嘉高先生の訳された,ラトゥール『社会的なものを組み直す』(法政大学出版局)を読み,2つ衝撃を受けました。ひとつは,日本語としてとても読みやすいこと(これは,伊藤先生が後書きで書かれているように,強く意識されていたようです)。もうひとつは,訳注の有用性でした。

やっぱり訳注を入れようと共訳者に持ちかけ,言い出しっぺの責任でぼちぼちと作業を始めました。ほとんどは邦訳のある引用文献の,邦訳書の該当頁の情報なのですが,分かりにくい記述や1993年という原著出版年の古さに由来する記述の補足説明など入れているうちに,結局原注と同じ30頁に到達しました。

索引どうするか問題

もうすぐ,Fred NewmanとLois Holzmanの共著,”Lev Vygotsky: Revolutionary scientist” (Psychology Press)の邦訳,『革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論』が出版されます。北海道教育大学の川俣智路さんとの共訳です。

革命のヴィゴツキー:もうひとつの「発達の最近接領域」理論(新曜社)

しばらく,この翻訳作業のことについて書いていきます。今回は「索引」。

『革命のヴィゴツキー』の索引は,人名・事項あわせて21頁あります。これでも削ったのです。電子書籍ならば検索すればよいので索引は不要ですが,紙の本では索引は絶対必要。

校正原稿の索引語候補に蛍光ペンで色をつけていくのですが,原稿が真ピンクになりました。

索引語の中には妙なのもあります。動物もいます。


ハチ
ビーバー
どのような文脈でこれらの生き物が出てくるのか。それは本書をご覧ください。

動物なんて心理学理論の話と関係ないじゃん,と思われるかもしれませんが,エピソードで内容を覚えている人もいます。ヴィゴツキーの『思考と言語』を読んだ人なら,犬と牛の名前交換のエピソードと言えば思い出しますよね。

でもヴィゴツキーがどのような議論で犬と牛を持ち出してきたかはいまいち覚えていないかもしれません。そういう人のために,ヒントとなる語をなるべく多く選び出しました。

編集の方にとっては地獄のような作業だったと思います。申し訳ありませんが,そういう理由だったのです。

新刊『大人につきあう子どもたち:子育てへの文化歴史的アプローチ』(共立出版)が出ました

2016年より細々と続けていた執筆を、昨年からのサバティカルを利用して「えいやっ」と終えたのが年末。

そして、幾度かの校正を終え、ついに出版の運びとなりました。

越境する認知科学シリーズ第4巻『大人につきあう子どもたち:子育てへの文化歴史的アプローチ』(共立出版)

発売は5月26日からとなっておりますが、一足早く私の手元に献本分が届きました。並べてみると壮観ですね。苦労して生み出しただけあり、感動もひとしおです。

ぜひお手にとってください。そしてご高覧いただけましたら、感想・お叱りなど、ぜひお知らせください!!

COVID-19を封じ込めるべくかつての日常生活を犠牲にしている現在、出版業界もまた他の業界と同じくらいひどい損害を受けていると聞いています。そのような中で出版できたことは関係者各位のご尽力の賜です。「あとがき」には書けなかったのですが、共立出版の日比野さん、河原さんには厚くお礼申し上げます。

伊藤崇

【告知】【書籍】もうすぐ本が出ます

来月,ひつじ書房様より,伊藤の執筆した本が出ます.

Amazonではすでに予約可能になっているみたいです.

学びのエクササイズ 子どもの発達とことば

以下目次です.

1 ことばの発達を考える~ことばの社会化とは何か
2 赤ちゃんに話しかける~文化間の多様性,文化の中の多様性
3 会話に巻き込む~会話の秩序とその理解
4 マネは創造のタネ~うながし,参与枠組み,ルーティン
5 感じ方を交渉する~感情と道徳のことば
6 「公」と「私」の使い分け~スタイルシフト
7 私はことばでできている~語りへの子どもの関与
8 小さな文化を創り出す~ピアトークの意義とは
9 女の子が下品なことばを言うのはダメなのか~ジェンダー実践と言語イデオロギー
10 実践としての書きことば~リテラシー・イベントへの参加
11 二重の有能さを示す~学習言語とIRE/F連鎖
12 いくつもの目的を同時にめざす~教室内のことばの多層性
13 2つのことばの真ん中で~バイリンガルとコードスイッチング
14 ことばのあいだに立つ私~継承語とアイデンティティ 

乳児期から思春期の子どもが用いることばの多様性とその変化について,主に「ことばの社会化論」(language socialization)の観点から一貫して描いた,(おそらく)国内初(と思われる)本です.

言語学的に言えば,言語構造ではなく言語機能に焦点を当てています.領域的には社会言語学の一分野です.

心理学的に言えば,社会や文化の中での発達過程に焦点を当てています.

社会学的に言えば,大人が子どもをことばを通して社会化する過程と,子どもがことばの使い方の点で社会化する過程に焦点を当てています.

学部の講義の教科書として書いたものですが,上記のように多分に偏った見方に基づいたものなので,その点は注意してください.既刊のさまざまな言語発達の教科書の中の1つとして扱っていただくのがちょうどよいように思います.

どうぞよろしくお願いいたします.

顔から汗が噴き出る

他の人の本に誤植が多いなどと文句をつけているヒマがあったら自分の書いた本を見直せとおしかりを受けそうだ。

先日出版された「発達心理学・再入門」の自分の担当章に誤訳があった。それも相当影響が大きな部分。人名である。

私が担当したのは,Peter Eimasらによる,乳児の音声弁別研究に関する章である。

私はEimasの名を「エイマス」と日本語に置き換えた。

これは,なんとなく「エイマス」という表記をどこかで見た記憶があったためで,疑うことなくそのまま文字にした。

出版された後から,ある人から「“アイマス”じゃないの?」とご指摘があり,驚いて調べてみると,「アイマス」と表記する文献を見つけた。

すでにそのような表記が定着している以上,私の訳は混乱をもたらすだけである。なんらかの対応をとらねばなるまい。

外国人名については悩ましく,正直に申し上げれば,自分の担当章にあらわれる人名のうち,表記に自信のないものがいくつかある。これらももう一度確認する必要があるかもしれない。

ギョオテとは俺のことかとなんとやらとは言うものの,人に売るものがそんな調子ではよろしくない。

そういうわけで,ご購入された方には,心よりお詫び申し上げます。言うまでもなく,私が担当する箇所の誤りの責はすべて私にあります。

「心理測定尺度集まとめ」をまとめなおした

おそらくは当サイトでもっともよく閲覧されているであろう,「心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ」所収尺度まとめについて,3日間かけて手を入れました。

「心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ」所収尺度まとめ【完全版】

「心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ」所収尺度まとめ【ほぼ完全版】

「ほぼ」があるのとないのと何が違うのかというと,ない方(つまり,完全版)は件の6冊で「言及されているすべての尺度」を網羅しているのに対して,ある方は6冊の目次に掲載された尺度に限定しているという点です。要は,完全版の方がリストは長いのです。

当初は私の担当する実習を履修する学生用に作っておいたものですが,試しに公開したところ思いもかけず好評のようで,社会心理学会の広報委員会のページからリンクまで張っていただきました。どうもありがとうございます。

尺度名から大元の論文にまで簡単にたどれるようにCiNiiやJ-Stageなどにリンクをはっておいたところがミソなのですが,リンクの張り方が悪く,相当な量のリンク切れが放置されたままになっていました。

たまたま,こういう出来事もあり,困っている人も多かろう(これから卒論検討シーズンでもあるし)ということで,えいやっと直しました。

それにしても,「心理測定尺度集」には誤植というか,リファレンスの誤りが多くて困りました。編者の先生方におかれましては,重版の折に総チェックをかけていただければ幸いです。

【新刊】発達心理学・再入門:ブレークスルーを生んだ14の研究

監訳と1つの章の翻訳を手がけた本が出ました。

アラン・M・スレーター、ポール・C・クイン(編)加藤弘通・川田学・伊藤崇(監訳) (2017). 発達心理学・再入門:ブレークスルーを生んだ14の研究 新曜社

出版社の紹介ページ

上記サイトより,目次を掲載してみます。古典と呼びうる研究や著名な研究者が並んでいるのが分かると思います。お手に取っていただき,これを機会に原著にチャレンジするのもよいでしょう。

1 アタッチメントと早期の社会的剥奪:ハーロウのサルの研究再訪
2 条件づけられた情動反応:ワトソンとレイナーの「アルバート坊や実験」を越えて
3 崖っぷちの乳児:視覚的断崖を超えて
4 ピアジェ再訪:子どもの問題解決能力の研究からの一展望
5 乳児期における模倣:メルツォフとムーア(1977)の研究再訪
6 乳児期における対象の永続性:ベイラージョンの跳ね橋実験再訪
7 子どもの目撃記憶と被暗示性:セシとブルックのレビュー(1993)再訪
8 IQはどれほど上げることができるのか?:ジェンセン(1969)の問いと答えへの最新の展望
9 読みとつづり:ブラッドリーとブライアントの研究再訪
10 心の理論と自閉症:バロン=コーエンたちのサリーとアン課題を超えて
11 道徳性の発達:コールバーグの段階再訪
12 攻撃性:バンデューラのボボ人形研究を超えて
13 言語発達:エイマスたちによる/ba/と/pa/の弁別研究再訪
14 子どもにおけるレジリエンス:ラターの名著とその後の発展