ひとつ所に腰を落ち着けて飲むというのがなかなかできない。1時間ほどで席を立って、次の店へ行く。はしご酒である。
夕方過ぎから飲み始めたとして、午前様にならずに帰れて二日酔いもしない限界は、だいたい3軒。最初の店で下地を作り、次でうまい酒と料理を楽しみ、最後に訳のわからない店で遊ぶというのが最近のコースである。
先日は東京からS氏がおいでになったので、2日続けて迎え撃った。
初日は狸小路界隈にて。最初に行ったのは「炭おやじ」。近況報告で1時間ほど。S氏は北海道のホッケ開きに目がなく、おいしそうにたいらげた。次に訪れたのは、狸小路の外れも外れにある「徳丸」。おでんと日本酒でくだらない話をする。接客する店員さんは外国の方なので、建物の雰囲気(民家を改造した古めかしい造りである)とのギャップがおもしろい。最後は趣向をがらりと変えて、シンガポールの屋台の雰囲気が味わえるという「KOPTIUM」。まわりは若い人ばかり。なんとかゴレンというのがむちゃくちゃ辛くて水をがぶがぶ飲みながら食べた。
二日目。わたしのホームグラウンド、平岸までお出まし願う。まずはここからと、おなじみ「かみがしま」へ。ばかすか飲みまくり、食いまくり、結局2時間半ほど腰を落ち着けてしまった。会計は5千円ほど。大の大人二人でこの値段はやはり安い。次は、平岸駅前の長屋の一角にあるジンギスカン屋。ここは以前、飲み屋で知り合った女性に連れられて来たことがある、常連しか入らないような所。S氏いわく、新宿ゴールデン街にある飲み屋の風情だそうだ。最後は、平岸駅から中の島方面へ少し歩いたところにある居酒屋「高雄」。落ち着いてうまいものを食べる。だいぶ酒が回ってきて、10時過ぎだと言うにもう退散。
次の日、S氏は「帰りたくない」と言いながら飛行機に乗って行ってしまった。
そんなこんなで飲むのはしばらくいいかなと思っていたが、ちょっと仕事上いろいろあったので、つい先日Hくんを誘ってすすきのへ。
一軒目は「金富士」。ビール、酒、やきとり、卵焼き、ポテサラ、湯豆腐。よしなしごとを話す。さてどうしようかと二軒目に選んだのは、「あんぽん」。かの太田先生ご推薦のお店である。狭い階段を登っていったさきの扉を開くと、コの字型のカウンターには先客が一人。ここに来たら牡蠣である。生と焼いたのを1つずつ。それにホヤ塩辛。これをアテに、酒をひたすら。難しい話を始める。
さて最後の店であるが、どうせならと思い、清水の舞台から飛び降りる気持ちで行ってみることにした。バー「やまざき」。日本全国の酒飲みで知らない者はないという激烈な有名店である。マスターはすでに喜寿を越えておられるはずだが、まだ店に立っている。そのマスターはたぶん8時過ぎには店に来ているはず。ドキドキと自動ドアを開けてカウンターに。マスターのご尊顔を拝見。座った両隣のお客さんがシルエットを切ってもらっていた。
ジンリッキーにモスコミュール。モスコミュールは、小さなビアマグに入って出てきた。新宿の「ドンキホーテ」と同じスタイル(向こうのマスターがこちらのマスターのお弟子さんなのだから当たり前かもしれないが)。聞いたらジンジャービアでも作れるみたいなので、次来るときはそれでお願いしよう。
こうやって少しずつ店の幅を広げていくのも楽しいものである。