飛行機見ながら湯につかる

 ただいま名古屋へ向かう電車の中。

 研究会に参加するため、早朝の飛行機でセントレアに到着。ただ、研究会の開始は午後2時。だいぶ間がある。

 存在は知っていた、セントレア内の銭湯に行ってみる。大人一人1000円(タオル代込み)。

 朝風呂につかる人は少なく、快適。ジャグジー、サウナ、寝湯など、銭湯にありそうな設備はみなそろっている。さすがに露天はないが、テラスに出て滑走路を眺めることができる。

 さっぱりしたところで、これから名古屋港へ。

ふきだし公園

 夏の名残を楽しめるのもあとわずか。日曜、京極町にあるふきだし公園に遊びに行ってきました。

 定山渓の温泉街を抜け、中山峠を越え、トコトコと畑のなかの道を走ると、目の前にぬっと姿を現すのは蝦夷富士こと羊蹄山です。てっぺんには雲の帽子がかかっていました。

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 ふきだし公園は羊蹄山の伏流水が湧き出る麓につくられた公園です。木々の奥から水がとうとうと流れ出しています。

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 湧水口には水を汲むことのできる場所がもうけられています。タンクやペットボトルをもって大量に汲みに来る人もいます。わたしたちも今日は、来る途中に寄ったホーマックでタンクを買ってきました。

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 もちろんその場で飲むこともできます。ご丁寧にコップも備え付けられています。冷たくてまろやか。

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 湧水口から崖を登ると芝生の敷き詰められた広場になっています。その奥には子どもが遊んでいられるようにアスレチックジムが設置されています。けっこう大きなもので、たくさんの子どもたちがいっぺんに遊ぶことができます。どうもおもしろかったらしく、お昼ご飯を食べようと呼びかけても、アマネはなかなか遊ぶのをやめようとしません。

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 たっぷり遊んだ後は、公園の隣にある京極温泉につかってから帰りました。帰りがけ、霧雨が降ったのですが、ちょうど夕陽の沈む頃で、みごとな虹が見られました。

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1列100円

 最近では珍しく朝から天気がよかったので、弁当をもって、さとらんどへピクニックに出かけました。9月に入ってしまえばもう秋ですからね、名残の夏を楽しみます。

 ミニSLバスに乗って途中の交流センターで降ります。建物に隣接してポヨポヨとはねることのできる遊具が置かれていて、子どもたちが群がって遊んでいます。アマネも夢中になってぴょんぴょんと、40分ほど跳んでいました。おかげでへとへとになった模様。

 交流センターのベンチで弁当を食べた後、ふたたびSLバスに乗り込んでさとらんどセンターへ。こんどはレンタサイクルを借りて、園内を散策します。

 途中に寄ったふれあい農園では、収穫体験ができました。ビニールハウスや露地に実った野菜を収穫して、格安で売ってくれます。ミニトマトとコマツナを収穫してきました。

 ここのコマツナがすごく安い。幅1メートルほどの区画に植わった1列ぜんぶで100円だそうです。1列ひっこぬいて12株くらいはあったでしょうかね。売られる野菜の単位で「列」というのは初めて見ました。あと3週間くらいで今度はホウレンソウが育つそうなので、また1列いくらで売ってもらいたいものです。

 コマツナのうち、あんまり虫食いのあるようなやつや小さいのは、園内のヒツジにあげてきました。とてもおいしそうにむしゃむしゃっと食べてました。

帰省中の出来事

 盆休みはとうに終わり、通常業務に復帰しております。7月におこなった調査の分析をだらだらと続け、そのあいまに雑用をこなすという毎日でございます。

 帰省中の関東は激烈に暑いかと思いきや、さにあらず。なかなかに涼しく、札幌にいるよりもかえって過ごしやすかったかもしれません。

 それでも数日は暑い日もあり、そんなときには海へ行き、プールに行き、庭でバーベキューをし、花火に興じておりました。

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 この間に、アマネは4歳になりました。この1年間で身につくのは知恵か、脂肪か。(それほどプクプクしております。)

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連休の過ごし方

 今夏の北海道は実につまらない天気です。先月からずっとどんよりしていて、雨の日もとても多い。おまけに寒い。楽しみにしていた果樹園のサクランボも、雨で割れてしまったようです。

 こういう天気でも休みの日となれば家でのんびりしているわけにもいきません。3連休の中日と最終日に、それぞれ市の施設に遊びに行きました。

 土曜日に行ったのは新さっぽろ駅そばの青少年科学館。さまざまな科学実験ができる市立の施設です。この日は朝から大雨だったので、屋内で思い切り遊べる(しかも安く)とあって、とても混んでいました。

 アマネのお気に入りは、3階にある展示群。水圧実験の展示では昔の井戸につけられていたようなポンプを一生懸命動かしています。奥には、乗り物コーナー。地下鉄を動かしてみたり、ヘリコプターの操縦席に乗ってみたり。双発機のフライトシミュレーターもあるのですが、大人でもなかなか楽しいです。

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 午前中に入り、食事を取りにいったん新さっぽろ駅に隣接するダイエーへ。入場券さえあれば当日なら何度でも再入場できるので、こういうことができます。食べ終えてから「どうする?」と聞くと「実験に行くー」とはりきっています。

 結局この日は、トータルで4時間くらい遊びました。入場料はおとな1名700円。子どもは中学生以下無料です。

 明けて日曜日は雨こそやみましたが薄い雲が広がっています。近場ですませようと、円山動物園に行くことにしました。

 夏の雰囲気がなかったので気がつきませんでしたが、夏の高校野球の予選が行われているのですね。円山公園の野球場で試合があったために、見物する人を乗せた車が公園の駐車場に入る長蛇の列をつくっていました。20分くらいでやっと駐車場に入ります。

 アマネのお気に入りは動物たちではなく、遊園地の方です。100円でモガモガ動く乗り物に乗り、観覧車に乗り、ティーカップに乗り。1時間ほどいましたが、食事をするために園を出ることに。

 午後からは少し空が明るくなってきたので、思い切って水道記念館に行きます。去年まで何度も来ているのですが、今年ははじめて。

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 入り口前にある、水が噴き出す広場は子どもたちの人気。ただ噴き出ているだけなのですが、いろんな遊び方をしています。晴れ間が見えているとは言え、ここは山の上なので風が強く、寒い。もう少し水で遊びたいようでしたが、服がびしょ濡れになった頃をみはからって着替えさせ、館内へ。

 館内には浄水や水道にかかわる展示があり、青少年科学館のように遊べるものも。幼児向けにはキッズルームもあって、ずっと遊んでいることができます。保育園での修行の成果か、だいぶ1人で遊べるようになったので、親はその間イスに座ってぼうっと眺めています。結局、2時間近くいましたか。

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 夕方から札幌ドームそばのつきさむ温泉に入りに行きました。ここのお湯は、ユンニの湯のように黒くてぬるぬるしています。相変わらずアマネは露天と内湯を行ったり来たりで落ち着いて入っていられません。

 こんなかんじで連休は終了。

今年もさくらんぼ

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 南区の篠原果樹園が今年もオープンしたというので行ってきました。もちろん、さくらんぼ狩りにです。

 6月の北海道は曇り空が多かったため、いつもの年よりもさくらんぼの色づきが遅れているそうです。

 最近では珍しい晴天のなか、大人800円払って入場します。斜面に立つ木には薄紅色の実がざわざわとぶらさがっていました。でも確かに白っぽい部分の残った実も多いですね。

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 斜面の隅に植えられたいちごは今年も健在。地面を見たり、上の枝を見たり、忙しいです。

 味の方ですが、確かにまだ酸っぱい木が多いようですが、品種によってはちょうどいい甘さのものも。全体として、あと1週間したら食べ頃かもしれません。

 山の方に向けて開いている、かご型の罠を発見。アマネが「これなに?」と聞くので、「タヌキでもでるのかな」と答えておきましたが、果樹園の方に聞いてみるとアライグマだそうです。外来種のため、捕まえたらその場で薬殺するとのこと。

 1時間ほど滞在して、腹一杯食べました。持ち帰りはなし。

大丈夫ないちご狩り

 このところ雨模様。公園で遊ぶこともできません。

 でも大丈夫。ハウス栽培のいちご狩りが時期を迎えています。ハウスなら雨に濡れる心配もありません。

 そんなわけで、由仁町にあるファーム大塚へ。国道274号線を千歳方面に向かい、長沼町にある道の駅マオイの丘公園を過ぎて右に折れ、農道に入ります。そのまま由仁方面へ畑の中をひた走ると、唐突に看板が現れます。

 朝10時半に到着した時にはすでに先客が10組以上いたようです。あらかためぼしいところは取られてしまったかとあやぶみましたが、大丈夫。ハウスもいちごも十分すぎるくらいありました。

 いちご狩りは1時間以内で大人900円、幼児は300円。大人の料金は変動制らしく、開始当初1000円だったところから徐々に下がるようです。

 ヘタを入れる小さなビニール袋をくれました。練乳はくれないのかな、と少々がっかりしましたが、大丈夫。そんなものをつけなくてもいいくらい、甘い!けんたろうという品種のいちごを食べましたが、ツブが大きくていいですね。

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 おみやげに家に持って帰ろうと、受付でかごをもらいました。なるべくツブの大きなものを選んで、かごに入れていきます。もちろんその間にも、真っ赤に熟れたいちごを自分とアマネの口に放り込んでいきます。結局、大人は30粒くらいは食べたでしょうかね。さすがにうんざりした頃に時間切れとなりました。

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 ファーム大塚は、レストランも有名です。のぞいてみましたが、すでに何組か並んで待っています。待つのはしんどいので、来た道を引き返して先程通り過ぎた道の駅のレストランで昼食。何の気なしに入ったのですが、そこそこ美味しかったです。

同窓会のような

 大学院のときの後輩、田島充士くんの結婚披露宴が東京で開かれ、参加してきた。

 お相手は、菊岡由夏さん。日本語教育の世界で活躍される、聡明な方。何度か、研究会などでお会いしたことがある。

 新宿にあるドイツ料理屋クライネヒュッテ。新郎がドイツ語専攻を卒業した関係で選ばれたそう。

 店に入ると、新婦の大学院時代の師匠、西口先生がいらしていた。よく存じ上げているのでご挨拶。

 テーブルに座ろうとすると、大学院のときの同級生、城間さんがすでに着席していた。研究会などでよくお世話になっている大久保さんも到着。このあと、大学院の先輩後輩がわらわらと集まってくる。

 大学院時代の先生方もご到着。共通の恩師の茂呂先生はもちろん、有元先生、新井先生。姿をお見かけするたびに立ってご挨拶。

 さながら同窓会のごとくである。

 新郎の横国大時代の後輩の方の司会で披露宴が開幕。真っ白のドレスに身を包んだ新婦と、めかし込んだ新郎が並んで登場。

 茂呂先生、西口先生のスピーチのあと、乾杯。ドイツ料理を口に運びながら昔話に花が咲く。

 主役たちがそれぞれのテーブルを挨拶に回る。「今日はどうもありがとう」と言う新郎に、ニヤニヤしながら「ブーブー、バイバーイ」と言う悪い来客(それは私)。

 最初の共同作業もつつがなく終わり、二人のこれまでを振り返るスライドショー。パワーポイントでがんばって作ったみたい。

 ご両家のご両親を代表して、田島信元先生がご挨拶。続いて、新郎によるお礼。

 2次会は同じく新宿のNSビル最上階にある何とかというレストラン。

 学部の同級生、澤田君とじっくり話す。学会帰りだそうでしんどそうだが、近況について語り合う。新婦の大学院時代の仲間、山下さんともゆっくり話すことができた。

 こういうときは札幌という場所が遠く離れているなあと改めて感じる。普段は会うこともできない人たちと時間を過ごすチャンスをくれてありがとう。

 そしておめでとう。

長崎紀行その8~軍艦島上陸編

 すでに島に上がっていた、海運会社の係員だろうか、船着き場の上で船からのロープを岸に結わえる作業をしている。次第に波が高くなってきた気がする。大丈夫だろうかと心配になってきたとき、客が下船し始めた。船から伸びるはしけの上を歩いて上陸。ヘルメットに作業着を着た係員が、「見学時間がなくなってしまいますので、すみやかに下船してください」とメガホンで呼びかけている。

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 1階船室の出口から、コンクリで固められたドルフィン桟橋に立つ。桟橋は、最近になって市により修復されたもののようで、まだ真新しい。そこから、足下が鉄網の橋を渡り、堤防をくりぬいた短いトンネルを抜けると、島内に入る。ついに軍艦島に上陸した。

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 クルーズ参加者は、小高い丘を見上げる広場に集められる。ターミナルでもらったパンフによれば、島内には第1から第3まで、計3つの見学広場とそれらをつなぐ歩道が南側の堤防に沿って設けられているようだ。参加者はそこから島の建物を眺めることになるらしい。

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 下船を誘導していた係員がメガホンで参加者にあいさつ、次に諸注意。上陸後の行動はすべて係員の指示に従うこととなる。3つの見学広場それぞれにガイドさんがつき、回ってくる参加者に受け持ちの場所からの眺めや近くの施設について解説してくれるようだ。ガイドさんはみな「長崎さるく」と背中に書かれたウィンドブレーカーを来ている。後でいろいろお話を伺っていると、そのうち何人かはここ軍艦島で生まれ育った方のようだ。

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 見学は勝手に行ってはならない。班またはグループでの行動を求められる。参加者はすでに4つのグループに分けられていた。船中にて、4種類に色分けされた、首から下げるカードケースを渡されていたのである。わたしは緑色のケースをもらった。緑グループである。そのように分けられた上で、2つのグループをさらにひとまとめにして、2班に分かれて別々の順番で見学スペースをめぐる。わたしのいる緑グループを含む班は第1→第2→第3の順で。もうひとつは第2→第3→第1の順で回る。

「それでは移動してください」という係員の合図で班ごとに行動開始。

 第1見学広場でまず目につくのは、島の北東端にある7階建ての建物。かつての端島小中学校である。4階までが小学校、5階と7階が中学校(6階は講堂)だったそうだ(パンフレットによる)。その手前にある、屋根の崩れた建物は体育館。

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 目を岩山の頂上に転じると目に入るのが、三菱幹部用の職員住宅。なにしろ住むのが幹部であるため、一番の山の手に作られたのだそうだ。建物の屋上には独自の貯水タンクも設けられ、部屋には風呂があった。

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 職員住宅から南よりにある直方体の構造物が、島民共用の貯水タンク。かつては海水を蒸留して真水をとっていたらしいが、後には給水船で水が運ばれてこのタンクに貯蔵されたものを利用した。そのうち、本土との間で海底水道管が敷設されて、水不足という問題はなくなったのだそうだ。第2広場から第3広場への通路の脇にある堤防には一部穴が空けられているのだが、それは水道管を通すためのものだった。島にいたことのあるガイドさんによれば、小学校高学年になると、ここのパイプを滑り降りて海で泳いでいたそうだ。

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 第2広場へ移動。ここから正面には、かつての石炭産業の名残を見ることができる。まず正面右手にある第二竪坑坑口桟橋が目につく。鉱山で働く方たちは、この階段をいったん登り、地中深くもぐっていったのだろう。その左手に、レンガ作りの壁が残されているが、これは鉱山の事務所跡。壁をよく見ると、スプレーの落書きがのこっている。もちろん往時のものではなく、最近こっそりと上陸した人がつけていったものだろう。

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 堤防が崩れた個所から、岩の間に赤茶色の土がのぞいている。これは天川(あまかわ)と呼ばれるもので、漆喰の一種である。濡れるとかえって固く締まるという性質があるようだ。

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 第3広場へ。広場に行く途中にはプールの遺構がある。海水をはっていたようだ。

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 広場は島の南端に位置する。そこから北側正面に見えるのは、右から30号、31号アパート。30号アパートは大正5年に建てられた、日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパート。俯瞰図を見ると、30号アパートは中庭を取り囲むような「ロ」の字型をしている。 31号アパートは堤防の曲線に沿って建てられているため、「ク」の字型をしている。

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 第3広場手前にある小さな建物は仕上げ工場。操業用の機械は本土で製造され、船に積めるようバラバラに分解された後、陸揚げされてこの工場で再び組み上げられたのだそうだ。

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 これでひととおり、見学コースはおしまい。それぞれの広場でガイドさんが見える景色について説明してくれるのだが、かけられる時間は10分弱ととても短い。トータルの上陸時間が1時間にも満たないのだから仕方ないものの、やはりもう少しゆっくりと眺めていたい。

 もちろん、もう少し島の奥にまで入って見学したいのはやまやまだが、建物はすでにぼろぼろでいつ崩落してもおかしくないのだそうだ。崩れるのを防ぐ工事をすることも選択肢ではあったろうが、市としては「風化するままの保存」とすることに決めたようだ。確かに、それがいいようにも思う。

 見学通路の傍らには、赤錆びた機械の一部がごろごろと転がっている。その脇には、どこから運ばれてきたのか、若木が地に根をおろしている。近未来SFにありそうな光景。

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 参加者たちはめいめい楽しんだ後、係員に船に戻るよう指示されて、再び船内に。

 この後、船で島を一周する予定だったのだが、そのまま引き返すとのアナウンスが。島の反対側の波が高くて危険と判断したようだ。比較的波の静かな桟橋側でしばらく停泊し、船はそのまま港へと向かった。

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 軍艦島とは外部からの呼び名である。外部とは、当時であれば島外の者、現在であれば当時を知らぬ者すべてを指す。そこで生まれ暮らしていた人々は、この島を正式な「端島」と呼んでいた。ここは確かにある人にとっては故郷なのである。その故郷に対する感じ方はそれぞれだろうが、それは「端島」についてのもので、決して「軍艦島」についてのものではないはずである。

 聞くところでは、閉山した後の炭坑夫たちの中には、まだ操業を続けていた外の鉱山に散らばっていった者もいたかもしれないとのこと。その中には、石炭で栄えたかつての北海道も含まれていただろう。万が一、この札幌でそうした人に会うことができたなら、そのときには「軍艦島」ではなく、「端島」のことについて聞いてみたい。

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長崎紀行その7~軍艦島発見編

 長崎港ターミナルでもらったパンフレットには、こうある。

長崎港から南西に約19㎞の沖合いに位置する「端島(はしま)」。
端島は、南北に約480m、東西に約160m、周囲1,200m、面積約63,000㎡という小さな海底炭坑の島で、 塀が島全体を囲い、高層鉄筋アパートが建ち並ぶその外観が軍艦「とさ」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれるようになりました。

 その軍艦島への上陸クルーズを企画するやまさ海運の船、「マルベージャ1号」のデッキの上でわたしは揺られていた。

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 軍艦島のことを知ったのは確かネット上だったと思うが、 74年に無人島となる前には最大で5300人もの人々の生活があったことを知らせる廃墟の写真を見かけたのだった。

 明治から昭和初期にかけて世界のエネルギーを一手に担っていた石炭。それを掘り出すには膨大な労力と巨大な施設を必要とした。炭坑を中心として人が集まり、町が作られた。エネルギー革命にともない、石炭はその役割を終え、ヤマからは人の姿が消えたわけだが、施設は残った。そうした例は北海道にも数多く、特に見栄えのする建物などは近代化遺産と呼ばれている。最近では保存の声が高まっているとも聞く。軍艦島もその一つと言える。遺産と言えば聞こえはいいが、要は廃墟である。

 世間には廃墟マニアと呼ばれる人たちがいる。わたしは廃墟にはまったく興味がない(むしろオバケが出そうで敬遠したい)のだが、なぜか軍艦島を撮した写真には惹かれたのだった。

 しばらく前に、軍艦島に合法的に上陸するクルーズが開始されたとのニュースを聞いた。これ幸いと、GW明けの平日に有休を取って参加することにしたのである。

 クルーズの内容は、長崎港を出て軍艦島まで1時間の航海、島に上陸して1時間弱の見学、そしてまた1時間かけて港へ戻るという3時間。1日のうち、午前に1便、午後1便の2回。参加するには事前の予約が必要。料金だが、1回のクルーズで4000円。さらに、上陸できた場合は長崎市の施設の見学料という名目で300円かかる。

 上陸できた場合は、と書いたが、上陸できないこともあるようだ。実際のところ、今年から始まったクルーズの初日は天候の関係で上陸できず、島を外から一周して帰ったそうだ。なにしろ外洋にぽつんと浮かぶ島のこと、波の揺れを消してくれるものは辺りに何もないため、荒れていると船を桟橋につけておくことができないのである。話によると、1年のうち上陸可能なのは100日程度ではないかと言われているそうである。ちなみに、上陸できなかった場合は、施設見学料300円は返却されるらしい。

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 らしい、と書いたのは、返却されなかったから。そう、わたしは運良く、上陸することができたのである。こういうことの運はなかなかに強い。

 クルーズ受付のある長崎港ターミナルに到着したのは午後1時10分。参加するには、事前に「誓約書」なるものにサインをしなければならない。誓約書には以下の項目が書かれており、それに承諾して初めて乗船を許される。

1 見学施設区域以外の区域に立ち入らない。
2 見学施設においては、次の行為をしない。
(1) 柵を乗り越えるなど危険な行為
(2) 施設を汚す、破壊する行為
(3) 飲酒(船内外、島内を含む)
(4) 喫煙
(5) 他人の迷惑となる行為
(6) その他
3 安全誘導員その他の係員の誘導・指示に従う。
4 見学施設を安全に利用するのに適した衣服・靴を着用する。
5 ごみは持ち帰る。

  やまさ海運ウェブサイト(http://gunkan-jima.com/)より

 ターミナル2階には、軍艦島を説明するパネル展示があった。かつての島の生活を撮した写真。見る限り、当時の日本の、どこにでもある風景のようだが、やはりどこか違う。台風で押し寄せる波。波はしばしば島を飲み込む勢いだったらしく、「潮降り町」と呼ばれた区画もあったようだ。

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 余裕を持って乗船しておく。乗船口のあるフロアと、階段登ったフロアにそれぞれ客室があるが、わたしは迷わず潮風に当たることのできるデッキにしつらえられたベンチに座った。

 どやどやと他の乗客が乗り込んでくる。層はさまざま。若い男性数人組、カップル、女性2人組。若い女性1人という方も。中年の方による団体さんも。外国から来られたご夫婦も。長崎市役所の担当者数名も。手にするカメラと機材が明らかにプロ(だって、照度計なんて持ってるんだよ)という女性。出張のついでに来たという中年男性。みな、目的は廃墟を見ることなのである。

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 出航。船は長崎港を南へ。わたしの座る左舷真横、小山の上に、あのグラバー邸が見える。

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 最近完成したという、入り江を横断する女神大橋の下をくぐり抜ける。すぐ左手に、三菱の100万トンドックが見える。3連のアーチが巨大だ。

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 よい天気だが、風がびゅうびゅうと吹き付けてくる。シャツ1枚で来たのだが、想像以上に寒い。風が立っているために波が高い。船は左右に激しくローリング。立っている人はどこかにつかまっていないと、下手すると海中へぽちゃんである。船酔いに備えて船員が黒い袋をもって客の様子をうかがっている。わたしは不思議とこれまで船には酔ったことがないのでわりかし平気。

 リゾート島として有名になったという伊王島を過ぎる。やはりかつては海底炭坑があった高島にさしかかったころ、水平線の向こうにうっすら、建物の影らしきものが見えた。軍艦島ではなかろうか。

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 高島を越えるともうはっきりと姿を見せ始めた。団地だろうか、高い建物が建っているのが見える。

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 船はぐらんぐらん揺れながら軍艦島に近づく。コンクリの塀の脇をすーっと進む。風は、さいわい船着き場のある側の反対側から吹いており、こちら側の波は比較的穏やか。これなら着岸、上陸できそうだ。

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 というところで、待て次回。