行列のできるカレー屋

 非常勤講義の出席者の人数は、先週の1人から一気に3倍、3人となった。

 教務の方の話では、結局閉講はせず、このまま開講するとのこと。さすがにこの人数では一方的な講義はつまらない。いっそのこと、4人で何か本を読むか。ちょっと思案中。

 帰宅の途につく。いつもは地下鉄で帰るのだが、たまにはと、バスに乗る。自宅から歩いて5分のところにあるバス停のそばにはカレー屋がある。いつもは閑散としており、特にそこで食べようという気にはならなかった。ところが、そのバス停で降りたとたん目に飛び込んできたのはカレー屋の前にできた行列。

 行列が出来る理由には心当たりがあった。先日たまたま見ていたテレビ番組にこの店が紹介されていたのだ。北海道ローカルタレントの大泉洋がおすすめのカレー屋、ということで、久本雅美とともに訪れていたのである。しかも全国ネットの番組だった。

 こんなことになるんだったら、閑散としているときに食っておけばよかった。

子どもの発話を録音するために

 子どもの自然な発話を、特に、大勢が集まる場所で子どもが話す言葉を研究の対象としている私にとって、その声をいかに効率よく採集できるかが生命線である。

 ビデオカメラを使って、映像と音声を同時に採集するというのが、最近では最もポピュラーとなった方法だろう。カメラもさほど高い買い物ではなくなったし、民生品ではDV、DVD、HDDと、ラインナップも充実している。

 しかし、ビデオカメラは音声採集には不向きだ。内蔵マイクでは周囲の音を拾いすぎる。外付けのズームマイクを利用してもまだ不十分だ。大勢が走り回る中、ある特定の子どもが何を話したのか、ズームマイクで拾った音を何度聞いてもさっぱり分からない。ただ、ひたすら喧噪が鼓膜を打つのみである。

 こうなると、発話データも不完全なものにならざるを得ない。勝手な推測を補うわけにはいかないから、分からない部分はおとなしく「不明」としておかねばならない。結果、子どもたちの発話のほとんどに「不明」印が置かれる。

 この問題を回避するにはいくつかの方法が考えられるが、現在私が採用しているのは、ターゲットとなる子ども自身にマイクをつけてしまうというものである。

 この方法は結構昔から使っていて、ワイヤレスマイクを装着してもらっていたこともある。しかしワイヤレスではトランスミッターもつけてもらわねばならない。よくテレビ番組で、出演者が尻ポケットなどに入れておく黒い四角いもの、あれがトランスミッターだ。しかし、これは子どもの動きを大きく阻害する。

 ICレコーダを子どもの胸あたりにつける、あるいは胸ポケットに入れておくということもやろうとした。しかし、ICレコーダはなかなか重たいものである。もう少し軽いものがほしい。

 そう考えていたあるとき、よいものを発見した。

 iRiver社製デジタルオーディオプレイヤーN10

 重さはたった22グラム。マイクは内蔵されており、256MBモデルで約4時間は録音が可能。録音した音声データは付属のUSBケーブルを経由してWindowsパソコンに取り込むことができる(付属のソフトでWindows標準のWAV形式に変換可能)。おお、なんというすぐれもの。これなら子どもの胸につけてもさほど重くはないだろう。(いまちょっとiRiverのウェブサイトをのぞいてみたら、新モデルN11が発表されていた。FMチューナー付きだと!ふぬー。)

 現在は子どもの胸にN10をテープで貼り付けて発話を採集している。これだと、静かなところならごく小さい声(たとえば、ささやき声)もやすやすと聞き取ることができる。

 しかし、これにも問題はあった。コンパクトなのだが、テープで胸に貼り付けて固定しておかねばならないのである。スマートではない。

 この不満を解消してくれるかもしれないものをごく最近見つけた。Samsung社のYP-F1ZB。なんと、クリップ付きである。これなら、子どもの服の襟元に引っかけることができる。まだ入手していないが、音質がN10と同等ならば大量に購入してみたい。

 夢は、幼稚園の子ども全員にこういったマイクをつけて、発話をあますことなく集めることである。

サビスィ

 えー、いずこの大学でも後期の講義が始まったようで。

 前期に引き続いて、とある大学で非常勤の講義を受け持った。半期で終わる内容を前後期2度繰り返しで行う。なので講義内容やレジュメを新しく準備する必要もなく、余裕で初日を迎えた。

 履修登録はすでに前期に済んでいて、聞いたところでは受講者は5人ということだった。ちなみに前期は12人だった。教室をキャパ40人程度の小教室に代えてもらった。

 教室に向かうと、1人の男子学生が所在なげに立っていた。予鈴が鳴っても新しい学生は来ない。

 受講者、1名。

 彼と差し向かいで、パワーポイントで準備しておいたオリエンテーションを行う。プロジェクタなど必要ない。ノートPCの画面を2人でのぞき込んで話をした。これではまるでサラリーマンの営業活動である。

 この大学では、受講者が5人に満たないと閉講(と言うのか?)となる。ぼくもこの仕事を失う。どうやら彼にとってこの講義は必修だったらしいのだが、それでも閉講となる可能性がある。来週までに教務課が開講するかどうかを決定するという。

 なんだかサビスィね。

 帰りがけ、彼が「なんだが学生相談みたいですね」と言った。一対一だったからね。新しいかもしれない。学生相談式講義。学生の悩みそのものをリアルタイムで講義のネタとしてフィードバックするの。

指しゃぶり

 ちょっと遅いけど、阪神優勝おめでとう!胴上げの時に見せた藤川選手の涙には、ビールを飲みながらもらい泣きしてしまったよ。選手の皆さんにはぜひとも「2年前の忘れ物」を取りにいっていただきたい。

 はてさて。

 アマネが最近指しゃぶりを始めた。夕方から夜にかけてぐずるのが日課なのだが、何がどういう拍子にか、その際に、自分の指をしゃぶるようになったのである。

 指しゃぶりといっても親指をちゅうちゅうという感じではなく、人差し指から中指にかけてをのばし、それをまとめて口にくわえている。

 おしゃぶりを用意してそれをくわえさせているものの、いつの間にかはき出して、指しゃぶりに落ち着いている。

 腹をこわさないか、心配である。

FW2 14-17

     The oaks of ald now they lie in peat yet elms leap where askes lay. Phall if you but will, rise you must: and none so soon either shall the pharce for the nunce come to a setdown secular phoenish.

 古き樫らはいま泥炭の中に眠るが、トネリコ男のいるところでニレ女が萌えいずる。転んだにしても、起きねばならぬ。そしてまだ先だがさしあたっての茶坊主劇は堅気に終わるだろう。

 The oaks … lie in peat: 泥炭の中で保存された木のことを、bog-oakと呼ぶ。オーク、つまり樫の木でなくても、こう呼ぶようだ。日本語では、「神代」(じんだい)とか「埋もれ木」とか呼ばれるものに相当する。

 The oaks … askes lay: この文には、ヨーロッパで聖なる木として崇められた植物、すなわちoak、alder、ash、elmが埋め込まれている。

 ald: alder(ハンノキ)、old。

 lie in peat: lie in peace(安らかに眠る)

 elms leap where askes lay: 北欧神話では、最高神オーディンが最初の人間を造ったことになっている。トネリコ(ash)からアスク(Askr)という男が、ニレ(elm)からエンブラ(Embla)という女が造られた。

 Phall … must: この一文は、ジェイムズ・マクファーソンJames Macphersonによる詩『フィンガル』(Fingal)"の一節"If fall I must, my tomb shall rise"に基づく。
 phall: fall
 "will … must"の対比は、自由意志に基づく非決定論と、必然性に基づく決定論の対比を表す*1。とすると、落ちるのは意志によるものだが、そこから復活するのは必然ということか。

 pharce: farce(茶番劇)

 for the nonce(さしあたって)

 the nonce come to setdown secular: secular(俗人)をcome to setdown(降ろしに来る)のだから、nonceはnuns(尼僧たち)でもあるだろう。

 phoenish: Phoenix (不死鳥、フェニックス・パークのことも指す)、finish。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

FW2 11-14

     O here here how hoth sprowled met the duskt the father of fornicationists but, (O my shining stars and body!) how hath fanespanned most high heaven the skysign of soft advertisement! But waz iz? Iseut? Ere were sewers?

 おお、ここここになんと広がる姦淫主義者たちの父が黄昏に塵と会うが、(おお、わが輝ける星と体!)至高の天空になんとのびゆく優しき告知!でもこれは何だ?イゾルデ?ほんとうに?

 McHughはこの段落全体がイザヤ書48章13節を念頭に置いているとする*1
 「ヤコブよわが召たるイスラエルよ われにきけ われは是なり われは始また終なり わが手は地のもとゐを置(すえ)わが右の手は天をのべたり 我よべば彼等はもろともに立なり」(イザヤ書48:12-13)
 ここでヤコブに呼びかけているのは神ヱホバである。

 またCampbellはここでのイズーIseut(あるいは、イゾルデIsolde)の役割に注目する*2
 彼によればイゾルデの役割は二重である。第一に、すべての者の父を誘惑し、堕落させる女性である。第二に、遺骸から新しい命を再生させる女性である(p.33)。

 how hoth: how hath(haveの直説法3人称単数現在形)、Howth。

 sprowled: sprawled(のびのびと広がる)、prowled(うろつく)。

 met: meetの過去分詞であるとともに、オランダ語のwithに相当。

 the duskt: dust(塵)、dusk(黄昏)。

 the father of fornicationists: 直訳すれば「姦淫主義者たちの父」。
 met the duskt the father…: 「塵が父と出会った」。この塵はのちにアダムとなるのだろう。

 my shining stars: 成句で"my stars!"(ああ、びっくりした!)

 fanespanned: finespun(きめ細かい)、fane(旗、風見鶏)、span(虹が空にかかる)。

 most high heaven the skysign of soft advertisement!: 珍しく普通に読める英語だが、何を指しているのか?Campbellの解釈では、ノアあるいはモーゼにとっての神の契約の証としての、天空に広がる虹である。したがってadvertisementとは神の言葉である。

 But waz iz! Iseut!: "Was ist? Isolde?(What is? Isolde)" ワグナーの『トリスタンとイゾルデ』、トリスタンの第一声。

 Ere were sewers?: are you sure?(ほんとう?)


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

学会閑話

 連休中、とある学会に参加してきた。

 初日。午前中にポスター発表を済ませ、残った時間は北海道に飛んできた友だちと近況報告やら情報交換やらにあてる。

 夕方からは街にくりだし飲み会。子どものことがあるので、昔日のごとく午前様とはいかない。

 二日目。昼から会務総会に出席。ここには書けないことが起き、あまりの怒りに途中で席を立つ。このときあることを決意。

 この日は飲み会はなし。夜中まで子どもをあやす。

 三日目。午前中のポスターになんとか間に合う。帰りがけに人と会う用事を済ませ、北大に戻る。

 今回、共同研究をしているMさんが学会に来られたので、これを機に今後の打ち合わせをする。

 夕方、飲み会。休日のためよいお店は軒並みシャッターを閉めていた。なんともめでたいことに、Mさんの奥さんに子どもができた。3人で話をすると、これまでは研究の話が主だったのだが、それに子どもの話が加わった。

 帰りがけ、ミスタードーナツを買って帰る。

中傷ビラ

 生まれて初めて、中傷ビラというのを見た。このたびの選挙に向けてのものなのだろう。気がついたら、自宅の新聞受けに入っていたのである。向かいの部屋にも入れられていた。うちは団地なのだが、おそらく、全戸に入れられていたものと思われる。

 B4サイズの紙に、新聞や週刊誌からの切り抜きがコラージュしてあり、大事なところ(?)には蛍光ペンの塗りつぶし、切り抜きの合間には作り手本人のものと思われる書き込みがなされていた。内容は書くに値しないものである。

 やってみると分かるが、B4サイズの紙に切り抜きをペタペタと貼って埋めるのは大変な作業だ。切り貼り作業の前に、関連のある記事を集めるという作業もある。しかもそれを、少なくとも団地の全戸分コピーしなければならない。

 もしもこの作業を1人でやるとしたら、相当のモチベーションや金銭的、時間的余裕が必要だろう。組織的に行うとしたら、作業をする同志や場所が必要だろう。よく知らないが、おそらく選挙法違反なのだろうから、逮捕される覚悟も必要だろう。

 ビラを作るのに、相当の意志や金や時間をかけた人(たち)がいるのだと思うと、なんだか可笑しい。

 珍しいのでしげしげとながめ、おもむろにゴミ箱に捨てた。

FW2 8-11

     What chance cuddleys, what cashels aired and ventilated! What bidimetoloves sinduced by what tegotetabsolvers! What true feeling for their’s hayair with what strawing voice of false jiccup!

 なんとまあいと死こい死く、なんとまあ空気入れ替え楼閣よ!汝を赦すカトリック司祭に罪たぶらかされる私を愛してプロテスタント!逆吃の藁声話す干し草毛はなんと本物くさいこと!

 chance cuddleys: chance-medley(過失致死)
 cuddleys: cuddly(抱きしめたくなるような)、cudgels(棍棒*2

 cashels aired: 成句"castles in the air"(空中楼閣)
 cashels: Cashelキャシェル。アイルランド、ティペラリ州にある街。岩山に建つ教会跡で知られる。かつてはマンスター王の居城であった。

 bedimetoloves: Bid-me-to-loves、要は、妖婦のこと。語頭にbedも見える。
 17世紀イギリス詩人ロバート・ヘリックの詩"To Anthea, who may command him Anything"の冒頭"Bid me to live"。直後に、"thy Protestant to be"とある。

 sinduced: sin(罪) + seduce(たぶらかす)

 tegotetabsolvers: tête-à-tête absolvers、ラテン語成句"ego te absolvo"(我汝を赦す)。カトリックでは司祭が信者の罪を赦すことができる
 teg: (2歳の)羊。

 bedimetoloves … tegotetabsolvers: プロテスタントとカトリックの対比。カトリック司祭と遊女が同居してもいる。

 hayair: hay(干し草)、hair(毛)
 strawing: straw(わら)

 jiccup: hiccup(しゃっくり)。
 Jacobも見える*1。とすると、true feeling … hayair … strawing voice false …は、創世記第27章のエピソードを暗示する。ヤコブは毛深い兄エサウになりすますため、山羊の毛皮をまとい、兄の声色を用いて、ほんとうの兄である感じを出した。

 上記赤字はすべて10/1に追記したもの。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

撮影会は定時に来い

 昨日から、実家の父母が孫の顔を見に来ている。ちょうどいいので、写真撮影と宮参りに行ってきた。

 写真館には、予約を入れた11時に到着。ところが道中アマネはすっかり寝てしまっていた。覚醒した姿を撮りたいので、むりやりにでも起こす。当然ぐずる。しまいにはおっぱいをほしがる。

 というわけで到着後1時間は撮影にならんのでした。やっとのことで撮れた写真も、なんだか顔がぶちゃくれている。

 寝てていいときには起きているのにねえ。うまくいかんもんです。

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