上野直樹・西阪仰 2000 インタラクション:人工知能と心 大修館書店
吉田研介(編) 1997 建築家への道 TOTO出版
本を読む早さは遅い方だと思う。ところが不思議なことに,対談や講演をそのまま書き起こしたような形式だと,あっという間に読めてしまう。話しことばだからだろうか?あるいは,書きことばだと,いきおい漢語が増えたり,言い回しが複雑になってしまったりするからだろうか。
話しことばの書き起こしには,本筋とは関係のない脱線も多く含まれる。もちろん,本当に関係のない枝葉末節は編集段階で省かれるのだろうが,たいていは(笑)マークなどとともにそのまま残される。この脱線が,読むリズムを作ってくれているのかも,と思う。そもそも読書とは直線的なものばかりではなく,退屈ならとばしたり(あまりしない),少し戻って読み直したり(あまりしない),あとがきから読んだりと(これはよくする),さまざまな道順が可能な営みなのだ。読むリズム,テンポ,シークエンスを作為するのは書き手や編集者であってもよいが,読み手であってもよいのだ。
ところが話しことばの書き起こしであれば,そこには話し手と聞き手とのインタラクションというリズムが保存されている(かもしれない)。読み手は聞き手となり,テクストのリズムに身を任せればよいのだ。それだから読むスピードが,ほかの本と比べて速くなるのだろう。
で,掲題二冊はどちらも上の話に当てはまった。ので,午前と午後とで一冊ずつ,一日で読み終えた。
上野・西阪は,業界の先達二人の(あとがきによれば)疑似対話集。エスノメソドロジーと状況論の概念や必読本をざっと見通すのにはよいかもしれない。大学1年に読ませても。
吉田は,個人で設計事務所をかまえる若手から中堅の建築家7人(内藤廣,北山恒,新井清一,小嶋一浩,妹島和世,鈴木了二,坂茂)を招いた講義や対談の記録。建築を学ぶ学生に向けた話である。学生の質問がこの世界で食っていけるのかに終始するのに対して,講演者の方はなんとかなったって言うばかり。おもしろいのは,小嶋,妹島を除く5人の大学時代が学生運動とぴったり重なっていたというところ。思想で社会を変えられなかった人たちが,今,住居というインフラから変えようとしているとも言える。そしてそちらの方が成功しているように見えるのだ。