わたわたの火曜日

 朝方までゼミのレジュメを作成。4時でギブアップ、布団に潜り込む。

 8時に起きてアマネと遊びながら朝食を取り、10時過ぎに大学へ。研究室でゼミのレジュメづくりの続き。合間に、研究にご協力いただいている方にマイクとビデオテープをお渡しする。家庭での家族の会話を録音するというもの。

 昼過ぎ、同僚の先生からビデオのキャプチャについてヘルプのメールあり、お部屋へ出かけていく。そこで昨今の学生の就職事情についてやいやい言う。

 再びゼミのレジュメづくり。終わらない。

 2時半から学部ゼミ。講座のボスとともにヴィゴツキーを読んでいる。噛めば噛むほど味がある感じ。今作っているレジュメがヴィゴツキーがらみだけに、なおさら。そのボスから、衝撃的なニュースを聞く。筑波から北大に移るときに、もしかしてあるかもと覚悟はしていたが、こんなに早く来るとは。参加予約申し込みの締め切りを忘れた罰か?まあ、がんばろう。

 4時半から別の演習。学部1年生に書いてきてもらったレポートにだめ出しをする。なんというか、だめ出しのしがいのあるというか、「だめ」の見本がずらずらと出てくる。インデントしないとか、タイトルつけないとか、説明抜きに専門用語を出すとか。「だめ」を丁寧にひとつひとつつぶしていく。

 7時に大学を出て、地下鉄に。家からの最寄り駅に到着。駅の階段で、今年3月に卒業したばかりの学部OGとばったりと出会う。区役所に勤めているとのこと、がんばっていただきたい。

 7時半に帰宅。夕食を3人で取るが、アマネはほとんど食べない。食べないのにむちゃくちゃ元気である。

 アマネといっしょに風呂に入る。風呂からあげて、妻がむりやり寝かせる。

 静かになったところで三度レジュメづくり。とともに非常勤の講義の準備。寝るのは3時くらいか。

 そんなこんなで火曜はいつもわたわたしている。

酪農の香り

 非常勤初日。オリエンテーションだけだから楽とは言え、2つの大学で続けて同じ講義を行う。大学の間を徒歩で移動。

 午前に1コマ終えて、てくてくと1時間ほど歩いてもう一つの非常勤先に到着。その間には酪農学園大学やら雪印種苗研究所やらといった施設が点在している。雪が溶けてむきだしになった大地から立ちのぼる、酪農の香りというのだろうか、鼻腔をくすぐったにおいは、その昔アイルランドをほっつき歩いていたときにさんざっぱら嗅いだ香りだった。干し草を詰めた丸っこく黒いビニールパックが転がっていたところも共通している。

 あらためて、ああ、北海道にいるのだなあということを実感した。札幌では味わえないのだ、この香りは。

 スーツ姿で1時間歩いたら足にマメができたよ。

社会人としていかがなものか

 というタイトルが指しているのはなにあろうぼくのことだ。

 今年度から2つの大学で非常勤をすることとなった。水曜日に1コマずつ、しかもどちらも江別市内にある大学なので移動も楽だろうと思っている。

 昨日はそのうちの1つの大学の非常勤講師向けの説明会兼懇親会に行ってきた。道庁そばのホテルにて6時半開始のところ、出かけに院生さんと話をしていたらだいぶ遅れてしまった。

 なんちゃらの間のドアを開けるともうすでに懇親会に突入していた。ずらりと並ぶテーブルに並ぶ方々、壇上ではなにやらベテラン非常勤講師のスピーチが。

 講師のクチを紹介してくださった森直久さんも出席していた。隣の席が空いていたので滑り込む。「やっと来ましたね」とグラスにビールを注がれた。

 スピーチを聴きながら目の前の料理をぱくぱくと平らげる。その間隣の森さんに「どんな説明があったんですか」と尋ねた。「昨日送った資料に書いてあります、だって」。なんだそりゃ。というわけで、タダメシを食わせてくれる会だったということが判明。遠慮なくばくばくと食べる。

 そうこうしているうちに、教養科目をご担当される先生が見えてごあいさつをしてくださった。両手には名刺が。

 ところが、遅れてしまって慌てて出てきたため、名刺を忘れてしまっていた。うう、しまった。「すみません、生憎切らしておりまして」と、平身低頭。

 続いて、学長がじきじきにごあいさつに来てくださった。両手に名刺が。ひい。「生憎切らしておりまして」。ため息をつきながら席について、デザートのイチゴを食べた。

 こういう場に名刺を持ってこないというのは、それなりの社会人としていかがなものか、と猛省する。

 終了後、森さんと連れだって、狸小路にあるワインバーへ。森さんが「ねっとりとしたものを」などと難しげな注文を出すと、そのたびにマスターがワインセラーからひょいと取り出してくる。どうもソムリエの資格をお持ちのようである。ワインはあまりこだわらずに飲むため、ありがたみがわからないのだが、ともかく美味しかったっす。

職場の世代交代

 いまや転職など当たり前の時代、一つの職場で世代が交代する機会などごく稀であろう。昨日今日とそういう稀な機会があったので感じるところを書く。

 私が奉職している学部の教授お二方が今月で定年を迎えられ、めでたく退官されていく。昨日はそれをお祝いする会が教員親睦会主催で開かれ、本日はお二方合同の最終講義が催された。

 「昭和50年にこの学部に来て云々」とおっしゃっておられたが、私はその年生まれである。そのことを直接申し上げることはしなかった。そんなことは私が言わずとも、もう十分、世代は交代するという事実に戸惑って来られたことと思う。それでもなお、旧世代に属されようがなんだろうが、ご自分で出来うるお仕事をまっとうされ、最後の数年間のお勤めを果たされたのだろう。実に清々しいお顔であった。

 もちろん、自分が古い世代に入るという出来事は誰の身にも起こることである。これを書いている私もそのうち古い人間と呼ばれるわけだ。そんなことは当たり前である。

 そんなときに、無理に新しい世代に合わせようとすることを、新しい世代に属する、少なくとも私は、旧世代の方々には求めていない。時折、新しい世代のことをなんとかご理解なさろうとする御仁、さらにはその表面的な装飾や言説をご自分の身に纏おうとなさる御仁もおられる。あるいはまた、理解できないことに腹を立て、あいつら若い世代はとただ怒ることしかなさらない御仁もおられる。しかし私は、旧い世代の方々にそんなことはしていただきたくはない。

 言い方が正しいのかどうか分からないが、なんらかの「高み」を体現していていただきたいのである。高みとは、私には到底到達しえない場所である。それこそ、「三丁目の夕日」ではないが、その時代、その場所を共有していた世代でないと絶対に理解し得ない何かというものがあるのなら、それは新しい世代には絶対に知り得ないものなのである。それを黙って見せていただければそれでよいのである。媚びていただく必要も、叱っていただく必要もない。

 30年の間、一つ所で多くの学生を世に送り出してこられた先輩に、新しい世代に属する私から何か申し上げることなど、たとえば「長年お疲れ様でした云々」などという表現はとてもではないが畏れ多い。世代の交代に際しては、「どうだ」「分かりました」「うむ」と言うだけのやりとりこそがふさわしいのだろう。そこに至るまでにすべてがあるのである。そうしたやりとりが成立するような関係を築くことは、実は教育というものの到達する一つの極だと思う。

 そしてかく言う私もある世代からすればすでに旧世代なのである。私の一挙手一投足が新しい世代にしてみれば学ぶべき何かなのだ。

 分かりました。かな。

あひゃー

 大学に行きがけ、札幌駅前の紀伊国屋へ立ち寄る。
 お、トマセロが訳されているではないか。原著を読んでいなかったのでちょうどよいと、さくっと買う。

心とことばの起源を探る (シリーズ 認知と文化 4)
マイケル・トマセロ
勁草書房
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 昼過ぎ、ビデオの書き起こしを手伝っていただいている学生さんと学内のレストランで会い、作業の進捗状況を聞く。

 部屋に戻ってから、事務の方といっしょに電気工事会社の方から話を聞く。現在ぼくの部屋のある建物の内部の模様替えをしており、その一環で電源増設工事をする。工事日程を決めて関係各所へ連絡。ついでに、要らない什器を運び出す算段をつける。

 すぐさま学部ウェブサイトのリニューアルについて、生協の方と打ち合わせ。ついつい細かなところまで口を出したくなってしまうが、自分のサイトではないのだ。データだけ丸投げしてすべて作成してもらうのが一番だな、と打ち合わせが終わってから気付く。

 昨年末に提出した紀要の初校をいただく。校正の締め切りが3月7日?わたし、4日から実家に帰るんですけど。7日まで札幌にいないんですけど。紀要に原稿執筆を依頼したみなさまに大急ぎで校正していただくようメールを送る。すみませんすみません。

 帰宅してアマネを風呂に入れそれから夕食。彼はなかなか寝ないので3人(アマネ本人含む)ともかなりまいっている。
 これをアップし終わった後、原稿の校正をしてからトマセロとデネットを少し読み、新年度からの非常勤の資料を作る。

 あひゃー。

電話勧誘への対策と実践

 「ピロピロピロ」

 研究室にいると電話がかかってくる。「賃貸マンションを買いませんか」というものである。

 普段なら「買いません」で切ってしまうのだが、まあ聞いてみることにした。自分が批判的にものを考えられるかどうか、試してみるためである。

 「生命保険を考えてみてください。あれは定額もらったら終わりですが、マンションならば家賃収入が際限なく入ってくるのですよ、お得でしょう。奥様やお子様のためにぜひ」というのが趣旨であった。

 「相続税とか固定資産税は?マンションだったら結構取られるよね。それを差し引いても保険よりもお得だという証拠はあるの?」と尋ねると「勉強不足なもので」と。

 一般に、マンションや車のように、長い期間にわたってアフターサービスを必要とする物件を購入する相手としては、なるべく将来の倒産などの危険性のないところがよいだろう。

 ところで、商品を勧めるメリットについて知識を持たないのは、営業係として失格である。

 しかるに、失格な営業マンしかいないような会社は信用できない(知識のない者を営業に据えるしかないくらい人材が不足していると考えざるを得ないから)。

 信用できない会社には、さきゆきの危険因子がいっぱいあると考えていいだろう。ゆえに電話をかけてきた会社は現在のところ取引するに値しない、以上。

 「ガチャリ」

 ただ、上のロジックでいくならば、人材難が解決して優良企業になれば、取引する余地が出てくることになるな。おれもまだまだアマちゃんである。起業家にはとうていなれないな。

センター試験終了

 平成18年度大学入試センター試験が終了しました。土曜日曜と試験場本部詰めとなり、朝7時半から夜7時まで会場にいました。

 今回の試験で耳目を集めたのは、やはり英語リスニングテストでしょう。はじめての試みということもあり、どのようなトラブルが起きても大丈夫なように、想定される事態について試験関係者には分厚いマニュアルが配られました。

 幸いぼくが担当した会場では再テスト希望者は現れませんでしたが、大学全体では何カ所かで再テストを実施したようです。全国的には400強ですか、リスニング全受験者が40万人強だったので、1%に満たない数なのですが、それでも大学入試センターとしては予想外だったようです。

 あと、リスニングの陰に隠れてあまり話題になっていませんが、気になったのは、高校での教育を新教育課程で習った学生と、旧教育課程で習った学生とが混在していたということです。平成11年に告示が出た新学習指導要領がそれで、附則によれば平成15年4月から実施となっていますので、ちょうど今年が新課程第一世代を対象としたセンター試験だったわけです。

 ぱらぱらと問題をめくってみたところ、たとえば数学や理科で、旧課程の人だけが答えられる問題がありました。同一科目で2つの層ができるわけで、どのような基準で偏差値を出すのか、新と旧で分けるのか、ちょっと分からないのですが、あと少なくとも2~3年はこのような状態が続くでしょう。

 センターの方で考えて作ってはいるのでしょうが、不公平のないようにしたいものです。

ドーナツ

 今年(今年度、ではなく)最後の非常勤。

 クリスマスも近いし、札幌駅のミスドでドーナツを買って行く。学生といっしょに食べながら講義をするため。人数が少ないからできる芸当である。本日は3名だった。ドーナツがあるぞと言うと、3人とも諸手を挙げて喜んでいた。

 先週の講義で性同一性障害について話題を振ってみたのだけど、学生からそのことについて、ちょっと考えさせられる話を聞いた。

 そのあとつらつら考えたことがあった。思うに、性の同一性のありかたはそう単純ではない。

 ここに、身体的には男性である人がいるとしよう。その人が身体的性に違和感をもつとして、「性指向として男性を指向すること」と「身体的性としての男性を嫌悪すること」は違うと思う。もう少し簡単に言うと、「女性になりたいと考えること」と「自分が男性ではないと考えること」は同じではない。同じではないかと思われるかもしれないが、そうではない。

 このことは、ジェンダーあるいはセクシュアリティが3種類あった場合に明らかになる。男性ではない場合、女性と第三の性のどちらかを選択することとなる。すると、女性になりたいことは、選択肢のひとつに過ぎないことが分かる。ジェンダーあるいはセクシュアリティが2種類しかない場合には、男性でない場合は女性になるしかないから、女性になりたい願望と男性性の否定とを同じことと考えて不都合がないというだけの話なのである。

 ここでは、3種類あるいはそれ以上あるものが「ジェンダー」であることが、ひとつのポイントとなるかもしれない。

 てなことをつらつら考えながら帰途についた。

サビスィ

 えー、いずこの大学でも後期の講義が始まったようで。

 前期に引き続いて、とある大学で非常勤の講義を受け持った。半期で終わる内容を前後期2度繰り返しで行う。なので講義内容やレジュメを新しく準備する必要もなく、余裕で初日を迎えた。

 履修登録はすでに前期に済んでいて、聞いたところでは受講者は5人ということだった。ちなみに前期は12人だった。教室をキャパ40人程度の小教室に代えてもらった。

 教室に向かうと、1人の男子学生が所在なげに立っていた。予鈴が鳴っても新しい学生は来ない。

 受講者、1名。

 彼と差し向かいで、パワーポイントで準備しておいたオリエンテーションを行う。プロジェクタなど必要ない。ノートPCの画面を2人でのぞき込んで話をした。これではまるでサラリーマンの営業活動である。

 この大学では、受講者が5人に満たないと閉講(と言うのか?)となる。ぼくもこの仕事を失う。どうやら彼にとってこの講義は必修だったらしいのだが、それでも閉講となる可能性がある。来週までに教務課が開講するかどうかを決定するという。

 なんだかサビスィね。

 帰りがけ、彼が「なんだが学生相談みたいですね」と言った。一対一だったからね。新しいかもしれない。学生相談式講義。学生の悩みそのものをリアルタイムで講義のネタとしてフィードバックするの。