【出版】項目を執筆した辞典が出版されました

執筆に参加した辞典が出版されました。

能智正博(編集代表)・香川秀太・川島大輔・サトウタツヤ・柴山真琴・鈴木聡志・藤江康彦(編) (2018). 質的心理学辞典 新曜社

伊藤は,「意義と意味-ヴィゴツキーによる」「異種混交」「多声性」「発達の最近接領域」「発話」「文化的透明性」「分析単位」の7項目を担当しています。

日本で初めての「質的心理学」の辞典です。お手にとっていただければさいわいです。

サイレンの日々

最近はずっと,部屋の中にいるとどこかでいつも消防車だか救急車だかパトカーだかのサイレンが鳴っている,そんな状況でした。

久しぶりの更新です。

ただいま2018年9月10日早朝です。さかのぼること5日前,9月4日夜から5日朝にかけて,台風21号が北海道の西側を通りすぎました。

4日朝から四国・近畿に甚大な被害をもたらした勢いをほぼ保ったままの風は,夜の間ずっと吹き続けていました。ベランダに置いておいたポリバケツががたんがたんと倒れるので,家の中に取り込んでおきます。

明けて5日に大学へ行ってみると,構内の木の枝が地面に散乱していました。それだけでなく,何本かは倒れてしまったようです。あちこちでチェーンソーで落ちた枝や倒れた木を切る音が響いていました。

やれやれと,台風一過のむわっとした空気を浴びながら布団に入った夜中の3時。体が揺さぶられる感覚と同時に枕元に置いておいたスマホからビヨビヨビヨと警報音が流れてきたのに気づきました。

時間にしてどれくらい経ったのか分からないのですが,そのときはああ地震だなあくらいに軽く考えていました。

上の子どもが起き出すのに気づいたのでリビングに行ってみると彼がつけたテレビから地震速報が流れています。震度6という数字が画面の隅にちらりと見えたかと思うと,突然ぷつっとテレビが消え,室内の明かりも消えました。窓の外も真っ暗となり,音もなくなりました。

このときは,まあすぐに電気は戻るだろうと思いましたが,まさか全道で停電という事態だとは知らず,結局復旧したのは次の日,7日の朝のことでした。それでも6日の夜は電気なしで過ごさざるを得ず,味付けのりの空き容器にローソクを立てて部屋のあちこちに置いて明かりを採りました。

子どもを連れて公園に行ってみますと,そこの水飲み場にはポリタンクやら空いたペットボトルやらをもった近所の方が列を作って水を汲んでいました。この地域の水道管自体がどうこうなったわけではなく,ポンプなどを使っているのでしょう,電気が止まると水も止まる家庭がある,ということです。幸いにして,自分の住んでいるマンションのガスと水道は問題なく使える状況でしたが,いつどうなるか分からないということで風呂に水を貯めておくことに。

この間冷蔵庫にあるものを細々と食べて過ごしました。ガスも問題なく使えたので,ご飯は炊けましたし(うちはガスで炊いていたのです),冷たいものを温め直すときにはフライパンに入れて蒸しました。IHのコンロを使っていたお宅は大変だったのでは,と思います。

9日までにライフライン関係は大きな被害を受けた地域以外は復旧したように感じます。しかし問題は物流,特に食料で,コンビニの食料の棚はほぼどこも払底していました。スーパーがかろうじて生鮮品含め置いている程度ですが,それでも通常の4~5割の量でしょうか。しかも高い。

これ以上大きな地震が起こらない限り,今週なかばには台風と地震以前の生活に戻れると思うのですが。

【出版】単著が出版されました

はじめての単著が出版されました.

伊藤崇 (2018). 学びのエクササイズ 子どもの発達とことば ひつじ書房

私が担当する北大教育学部の講義「言語発達論」のテクストとして書かれたものです.

教科書として用いることはもちろんですが,「ことばの社会化論」(language socialization)におけるさまざまなトピックを概観することができるようになっていますので,そうした領域に関心のある方が自分で読むのもよいでしょう.

一語文や喃語やウェルニッケ野やディスレクシアや使用基盤文法など,言語発達についての典型的な教科書なら取り上げるはずの概念は,本書ではいっさい取り上げられていません.そんな,いっぷう変わった本にご興味のある方,ぜひお買い求めいただければと思います.

【告知】【書籍】もうすぐ本が出ます

来月,ひつじ書房様より,伊藤の執筆した本が出ます.

Amazonではすでに予約可能になっているみたいです.

学びのエクササイズ 子どもの発達とことば

以下目次です.

1 ことばの発達を考える~ことばの社会化とは何か
2 赤ちゃんに話しかける~文化間の多様性,文化の中の多様性
3 会話に巻き込む~会話の秩序とその理解
4 マネは創造のタネ~うながし,参与枠組み,ルーティン
5 感じ方を交渉する~感情と道徳のことば
6 「公」と「私」の使い分け~スタイルシフト
7 私はことばでできている~語りへの子どもの関与
8 小さな文化を創り出す~ピアトークの意義とは
9 女の子が下品なことばを言うのはダメなのか~ジェンダー実践と言語イデオロギー
10 実践としての書きことば~リテラシー・イベントへの参加
11 二重の有能さを示す~学習言語とIRE/F連鎖
12 いくつもの目的を同時にめざす~教室内のことばの多層性
13 2つのことばの真ん中で~バイリンガルとコードスイッチング
14 ことばのあいだに立つ私~継承語とアイデンティティ 

乳児期から思春期の子どもが用いることばの多様性とその変化について,主に「ことばの社会化論」(language socialization)の観点から一貫して描いた,(おそらく)国内初(と思われる)本です.

言語学的に言えば,言語構造ではなく言語機能に焦点を当てています.領域的には社会言語学の一分野です.

心理学的に言えば,社会や文化の中での発達過程に焦点を当てています.

社会学的に言えば,大人が子どもをことばを通して社会化する過程と,子どもがことばの使い方の点で社会化する過程に焦点を当てています.

学部の講義の教科書として書いたものですが,上記のように多分に偏った見方に基づいたものなので,その点は注意してください.既刊のさまざまな言語発達の教科書の中の1つとして扱っていただくのがちょうどよいように思います.

どうぞよろしくお願いいたします.

【告知】連続読書会開催します

質的研究のための理論入門―ポスト実証主義の諸系譜
プシュカラ プラサド
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 89,371

読むもの:プシュカラ・プラサド 箕浦康子(監訳) (2018年)『質的研究のための理論入門』ナカニシヤ出版

第1回 2018年 5月10日 企画趣旨説明
第2回 2018年 5月24日 1章,2章,3章
第3回 2018年 6月 7日 4章,5章,6章
第4回 2018年 6月21日 7章,8章,9章
第5回 2018年 7月12日 10章,11章,12章
第6回 2018年 8月 2日 13章,14章,15章

ご参加の場合は,あらかじめ tito@edu.hokudai.ac.jp までご連絡いただけると助かります。

【研究】【論文】執筆過程に参加した論文が出ました

この5年ほどセンシングツールを用いた授業中の行動の計測に血道を上げているわけですが,そのツールを用いる上で必要な基本データがそもそもないというところで逡巡していたところ,国立教育政策研究所の山森先生が率先して動いてくださいました。本当に感謝しております。

で,その成果が論文として出版されました。ぜひご覧ください。

山森光陽・伊藤崇・中本敬子・萩原康仁・徳岡大・大内善広 (2018). 加速度計を用いた小学生の授業参加・課題従事行動の把握 教育工学会論文誌, 41(4), 501-510.

【イベント】【告知】発達支援フォーラム 2018spring 異年齢・異学年から子どもの育ちと学びを考える~「あこがれ」と「いたわり」を越えて

保育所,幼稚園,小学校,中学校,そして高校にて展開される異年齢・異学年での学びとはいったい何なのか?その疑問に対して,さまざまな場で実践に携わる方々にお話を頂く機会をいただきました。

ぜひご参加ください。なお,本件お問い合わせは本サイト管理人dunloe.ito at gmail.com(atを@に変えてください)まで。

チラシ(pdf)

日時 2018年3月17日(土)14:00~18:00 ※開場 13:30
会場 北海道大学教育学部 3階会議室

プログラム
司会進行 伊藤 崇 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、言語発達論)
1.実践報告
(1)発寒ひかり保育園(園長・吉田 行男 氏、副主任保育士・家村 維人 氏)
テーマ「みんなきょうだい大きな家族:赤ちゃんからの異年齢保育と多世代交流」
(2)美晴幼稚園(園長・東 重満 氏、主任教諭・中川 絵理 氏)
テーマ「多様性の中で育ち合う異年齢クラス保育」
(3)香川大学教育学部附属高松小学校(教諭・橘 慎二郎 氏、教諭・前場 裕平 氏)
テーマ「分かち合い,共に活動や価値を創造する異年齢集団の歩み:壁やイレギュラーとの対峙の中で,自己の生き方・在り方を見つめ直す」
2.ショートレクチャー&コメント
篠原 岳司 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、学校経営論・教育行政学)
テーマ「教育行政研究の視座から:中学校・高校における異年齢・異学年教育の動向をふまえて」
3.総括コメント
川田 学 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、乳幼児発達論)

【主催】 北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
【付記】 本企画は、科学研究費補助金基盤研究(B)「異年齢期カップリングの発達学:子どもの生きづらさを超えるための学際的協働」の助成を受けています。

【イベント】【告知】発達支援フォーラム 2018spring 異年齢・異学年から子どもの育ちと学びを考える~「あこがれ」と「いたわり」を越えて

保育所,幼稚園,小学校,中学校,そして高校にて展開される異年齢・異学年での学びとはいったい何なのか?その疑問に対して,さまざまな場で実践に携わる方々にお話を頂く機会をいただきました。

ぜひご参加ください。なお,本件お問い合わせは本サイト管理人dunloe.ito at gmail.com(atを@に変えてください)まで。

チラシ(pdf)

日時 2018年3月17日(土)14:00~18:00 ※開場 13:30
会場 北海道大学教育学部 3階会議室

プログラム
司会進行 伊藤 崇 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、言語発達論)
1.実践報告
(1)発寒ひかり保育園(園長・吉田 行男 氏、副主任保育士・家村 維人 氏)
テーマ「みんなきょうだい大きな家族:赤ちゃんからの異年齢保育と多世代交流」
(2)美晴幼稚園(園長・東 重満 氏、主任教諭・中川 絵理 氏)
テーマ「多様性の中で育ち合う異年齢クラス保育」
(3)香川大学教育学部附属高松小学校(教諭・橘 慎二郎 氏、教諭・前場 裕平 氏)
テーマ「分かち合い,共に活動や価値を創造する異年齢集団の歩み:壁やイレギュラーとの対峙の中で,自己の生き方・在り方を見つめ直す」
2.ショートレクチャー&コメント
篠原 岳司 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、学校経営論・教育行政学)
テーマ「教育行政研究の視座から:中学校・高校における異年齢・異学年教育の動向をふまえて」
3.総括コメント
川田 学 氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授、乳幼児発達論)

【主催】 北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
【付記】 本企画は、科学研究費補助金基盤研究(B)「異年齢期カップリングの発達学:子どもの生きづらさを超えるための学際的協働」の助成を受けています。

行き着く先の居酒屋

札幌を訪れた方を食事にお連れする際にはご案内できないものの、個人的にはいちばん落ちつく店というのがある。

このところ毎週訪れているのは、札幌の飲んべえならば誰もが知っている老舗「第三モッキリセンター」である。

早番で入っているおねえさんに、もう顔を覚えていただいた。それくらい通っている。

瓶ビールを一本、それに枝豆と何か(だいたい、サバ煮か串カツ)。それを空けたら燗酒に何か(だいたい、生揚げか身欠きニシン)。それでだいたい1500円前後である。

早い時間に行くと、常連とおぼしき年配男性やカップルがぽつぽつとそれぞれのスタイルで飲んでいる。それを眺めやり、聞くともなしに話を聞いていると十分に楽しい。

6時過ぎに入るとカウンターはぎっしりで(札幌には珍しい、コの字カウンターである)、4人掛けテーブルで相席もしばしばである。

何かうまい名物があるわけではない。ウインナーはシャウエッセン、餃子は紀文と堂々と品札に書いてある。ビールはアサヒとヱビス、酒は白鹿(正確にはもう少し種類がある)。昨今の銘酒居酒屋や料理自慢の飲み屋とはまったく一線を画している。

だが、この年になるまでいろんな飲み屋を経験した身からすると、もうここでいい、いや、ここがいい、と思わせるたたずまいがこの第三モッキリセンターにはあるのである。