野火的研究会でホルツマンを読む(1)

Vygotsky at Work and Play

野火的研究会なる集まりに参加するため,東京へ行っていました。

いわゆる社会文化的アプローチを掲げた研究者たちが集まり,これからの心理学のかたちを議論していこうという趣旨の会と理解しています。実は初めての参加。

ここで,この夏に来日するロイス・ホルツマン(Lois Holzman)の書いた"Vygotsky at Work and Play "を読むことになり,私が報告者を務めました。

ホルツマンについてはこのあたりを参照いただくとして,ここでは本の中身について少し紹介して,私なりの論点を挙げてみたいと思います。

さて本書は6章から成っていますが,全編を通して,ホルツマンが盟友フレッド・ニューマン(Fred Newman)とともにたずさわった組織であるEast Side Instituteで展開されたいくつかのプロジェクトが紹介されます。それが2~5章で,1章はそれらのプロジェクトを推進する背景となった心理学理論の紹介,6章はまとめです。

ただし,プロジェクトの紹介とは言え,すべてを書き尽くすことはできない道理ゆえ,プロジェクトのディテールがどうしても読み手,特にニューヨークの実情をよく知らない読み手には伝わってこないのです。人々の置かれた状況の大変さ,そこから少しでも何か新しいことが生まれるよう仕掛けを作っていくことの難しさ,instituteのスタッフは恐らく大変な苦労をされているものと思われます。そのあたりのディテールにこだわり出すと,隔靴掻痒感がどうしてもぬぐえないのです。ですので,本書はプロジェクトの紹介については「ほう,こういうプロジェクトがあるのだね」と,深くこだわらずに一読するくらいでよいのではないかと思います。

その代わりに,1章と6章はじっくりと読み込んで欲しいところです。ここはホルツマンがヴィゴツキー理論から何を学んだのかが書かれている章なのですが,通常のヴィゴツキアンが言うようなこととは少し違います。もしかすると,ヴィゴツキーのイメージが変わるかもしれません。

というところで続きます。

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