言語学習研究の理論的課題(2)

ラングへの接近を言語発達の典型と見なすならば,不完全な言語を話す者同士の相互作用は無視されてしまう。そしてこれが従来の言語発達研究の実際であった。

しかし,現実に,子どもは隣の子どもとやりとりをする。ここから創発するものは重要だ。

親子を典型とする,有能な言語の使い手と未発達の言語の使い手とのやりとりによる言語発達をScollen&Scollenにならって「縦の言語発達」と呼ぶならば,未発達の言語の使い手同士のやりとりから生じる言語発達は「横の言語発達」とでも呼べるだろう。

横の言語発達が促進される機会として,家庭から幼保施設へという,子どもの生活世界の移行に注目すべきだ。なぜなら,隣り合う子どもが大勢いるから。

横の言語発達を見据える道具として「唱えことば」に注目したい。まず,素材の形が変化しないことばを選べば,それがいかにして伝播していくかという点から横の言語発達過程を捉えるよすがとなるからである。さいわいにして唱えことばは幼保施設にいる子どもたちの発話にはよく見られるものだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA