001-実践とは何であるか

田辺繁治 2003 生き方の人類学:実践とは何か 講談社

「実践とは何であるか」を問いとして,ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」,ブルデューの「ハビトゥス」,レイヴとウェンガーの「実践コミュニティ」といった理論が一気に貫かれる。われわれは規範に支配される受動的存在ではない。むしろわれわれは,権力関係の網の目という制約を受けつつ,「実践」をとおして自らの生をより良くすることを目指す存在である,というのが著者の主張。

しかし権力関係とはなにかという内実,そしてそうした関係性がいかにして生まれるのかという過程に関しては,触れられていない。たとえば,自分の関心から言えば,親子とはいかなる権力関係か。子どもが獲得する親の言葉は,実は制約であるのか。それにしても,人類学はここ二十年間,「弱きもの」をどう扱うかに苦心惨憺してきたように思う。これからは「弱きもの」が「強きもの」となる構造と過程の解明が,ひとつの目標となるのではないか。たとえば,連帯によって弱きものが強きものとなることもひとつの答えだろう。

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