勘定心理学

 人数を数える、回数を数える、点数を数える。心理学に限らず、人間を対象とする科学の基本は、「数えること」つまりは勘定だ。

 数えることは単純なことだと思われるかもしれない。子どもも数えるし、サルだって数える。でも、心理学において数えることは難しい問題をはらんでいる。

 オレンジが5個あります。時計が3個あります。あわせて何個ですか。

 よくある無理難題である。オレンジと時計は種類が違うのだからあわせていくつと問うことは無意味だ。

 太郎君は1年生のときは5日、6年生のときは120日、学校を休みました。あわせて何日休みましたか。

 さて、あわせるものはどちらも欠席日数なのだから足しても問題はなさそうであるが、やはりこれも無意味な問いだというのはすぐに分かる。

 1年生のときの欠席は何か体調が一時的にすぐれないとかの理由によるものかもしれない。でも6年生の欠席は長期欠席と呼ばれるもので、その理由についてはよく考えてみる必要がある。したがって、同じ「休む」という行動であったとしても、あわせて勘定することには意味がない。

 傍目には同じ行動の集まりかもしれないが、よくよく見るとオレンジと時計が混在しているのかもしれない。心理学で勘定するときには、常にこのような精査する目を持ちながらでなければならない。

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