ただ観客に徹すること

 学部2年生が参加する演習。文献を読んできてそれに対する疑問を各自提示してもらう。

 ただ疑問を表明するだけでは「言いがかり」である。単なる言いがかりにならないためには具体的な証拠が必要だ。その証拠は自分たちで探してこなければならない。立証責任はこちらに移ったのだ。

 そのことを理解してもらうために,前の週で文献に対する疑問を言語の形にしてもらったうえで,今週はその疑問を支えるための具体的なデータとして,ネット上の動画を素材に各自発表してもらった。

 論点は「公共の場でのケータイ使用が第三者をイライラさせるのはなぜか」。

 それについて学生はいろいろな動画を探してきてくれた。

 基本はみなYoutubeから拾ってくる。なかなかぼくでは探しきれない動画が続々紹介されて,ぼくはもうただ観客になってしまった。『恋空』を見せてくれた者がいたが,これなんかぼくには思いもつかない素材だ。

 ユニークなところでは,ラーメンズのDVDをもってきてくれた者。あと,自分たちで動画を作った者。後者は自作自演なので,厳密には主張を支える証拠としてはうまくないが,工夫と熱意は買いたい。

 全員に大きなポストイットを渡して,発表者の発表に評価をつけてもらった。それを発表者にフィードバック。聞いている人を眠らせないための工夫でもあるが,ぼくがコメントをするよりも発表者にとってはずっと嬉しいのではないかと思ってやってもらった。

 何人かを審査員にまきこんで,発表者の中から本日のベストを選んだ。2チーム3人が受賞。賞品は,クリスマスちっくなクリップ。なくてもどうということもないが,もらえればほんのわずか嬉しいというくらいのものがおそらくはこういう場合の賞品によいだろうと。

 演習が終わってから,「おもしろかった」と言ってくれる学生がいて,大変に嬉しい。ぼくはひたすら観客に徹していたのでとても楽だったけど。

 学生同士で学び合い,最終的には「ゼミで発表すること」を身につけてもらいたい。それがこの演習の目標である。

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