【PMF】教育セミナー1日目

 先週の土日で、PMF主催の「教育セミナー」が開催され、それに参加してきた。

 教育セミナーとは、音楽教育に携わる小中学校の先生や学生を対象とした研修会である。PMFのために来日している音楽家と交流したり、その実際の指導の様子を見ることができる。

 スタッフの説明によれば、PMFは3つの柱から構成されている。(1)教育部門、(2)演奏会部門、(3)教育普及部門である。このうち、教育セミナーは3番目の教育普及部門に位置づけられている。そもそもは、音楽教育を取り囲む方々に還元できないかということで始められた企画だそうだ。普及部門には青少年向け、一般向けトークセッションなどのイベントも用意されているが、なかでも教育セミナーは部門のメインに位置付けられているらしい。

 教育セミナーには2つのコンセプトがある。1つは、音楽教員に、指導の技術をつかみとってもらう機会となること。もう1つは、日々の教育実践とは直接関係ないかもしれないが、さまざまな国や地域の人々との文化的交流を図ること。

 初日のプログラムは、指揮者のルイス・ビアヴァによる小学生の金管バンドの指導見学、ピアニストの赤堀絵里子さんの講義、ウィーンフィルのマネージャーをしているザグマイスターさんのトークである。2つのコンセプトがきちんと反映されている。

 初日ということで参加者へのオリエンテーション。金管バンドへの指導が行われる、厚別の青葉小学校に朝9時半集合。校内の会議室に集まった参加者の数は、ざっと20人ちょっと。もう少し多いのかと思いきや、そうでもなかった。

 全員が集まったところでスタッフによるオリエンテーション。最後に名前と所属のみ自己紹介。あちこちから参集されている。栗山、千歳、日高、釧路、東京、福岡。

 体育館へ移動。体育館にはすでにイスが置かれている。ステージ前には扇形に並べられ、それと向かい合うように平行に並べられている。そちらには保護者の方だろう、十数人の女性が座っている。

 共栄小学校の子どもたちが、そろいの青いTシャツを着て、楽器を手に体育館に入場。先頭に指導の女性教諭。各自の席に座る。子どもたち全員の準備ができた頃を見計らって先生が「下のドを出します、よーい」と言うと、ロングトーン、音階練習。

 そこに、ルイス・ビアヴァ先生登場。会場、拍手で出迎え。スタッフの司会でビアヴァ先生の紹介。

 子どもたちによる演奏。全体をまずは通して。演奏終了。ビアヴァ先生「この日のために用意したの?短い期間で練習したにしてはうまいね」。このように、終始、まずはほめるところから指導を始めていた。

 いよいよ直接指導。セクションごとに分けて最初の1~4小節を練習。トロンボーンとユーフォが演奏するスフォルツァンドピアノについて。ピアノを意識、クレッシェンドを意識。指揮者の先生に対しては「最初の音がフォルテだということを見せて」。

 以下、ビアヴァ先生の指導中の言葉。

「導くために指揮者はいます」
「君たちはグループの一員。指揮者というリーダーに合わせることが必要」
「音をはっきりと意識させるためには、楽譜通りのテンポではなく、遅めに演奏させるとリズム感がよくわかるようになる。そうすると自信につながる」
「オケが悪いのではなく、指揮者が悪いのだと敬虔な気持ちを持つことが大事だ」
「子どもにはできないと思いこんではいけない。子どもたちはすごくよくできる」

 全体で記念撮影をしてビアヴァ先生退場。

 午後からは場所を移動して、中島公園そばの渡辺淳一記念館講義室にて。PMFピアニストの赤堀絵里子さんの講義。赤堀さんがPMFに参加するのは5年目だそうだ。今はボストンにいて活動中。

 もともとは作曲を学んでいたものの、室内学に出会ってから演奏をはじめた。人と一緒に演奏することの楽しさを知ったそうだ。

「音楽とは何でしょうか?」という問いかけに参加者は「?」。赤堀さんがホワイトボードに下のような図を書く。

作 ←←← 演
曲 →楽→ 奏 ⇒(音楽)⇒ 観
家 →譜→ 家 ⇒(音楽)⇒ 客

 作曲家が楽譜を書き、演奏家が楽譜を読んで演奏し、それを観客が聞く。重要なのは、どのパーツが欠けても音楽は成立しないということ。

 しかし、楽譜をただ機械的に再現するだけではそれは上手な演奏とは言えない。解釈し、フレーズを作り込んでいく作業が必要となる。その際の解釈は1つではなく、多様に変わりうる。

 独奏ならば解釈は単独の作業だが、コラボレートする場合は解釈をすりあわせて、1つのメッセージとなるようにする必要がある。たとえば2つの楽器が1つのメロディーを交代で奏でるような曲もあるが、その場合、先に演奏していた楽器の音の大きさを、後から演奏する楽器は引き継がねばならない。そうしないと1つのつながったメロディーには聞こえない。

 そうしたことができるようになるために、赤堀さんは相手のパートを歌うようにしている。頭のなかで歌うことで、全体のイメージをつくることができる。

 最後に、参加者のなかでブルガリアからいらしていたビオラ弾きの方と、赤堀さんが1曲披露。まったくの初対面であったらしく、「演奏者同士が初めて出会って楽譜を渡されて一発目の練習」の雰囲気がよく分かった。

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