いつものお店へ

 帰宅の道すがら、いつものお店のドアを開けました。

「見ましたよ」

 カウンターに座るなり、三徳六味のマスター、亮さんが声をかけてきてくれます。
先日こちらのことをブログに書いたのをご覧くださったようです。いやあ、どうも。

 まずはビールをお願いして、「さて」とメニューをのぞき込むと、外はまだ寒風吹く季節ながら、
紙の上だけでももう春が訪れたようです。じゃあ、今日は春を堪能してみましょうか。

「最初によもぎ豆腐、それに桜鯛の昆布じめ、海鮮さつま揚げ」と、トントンと決めていきます。

「ホワイトアスパラを焼くのはどうですか。こないだのと同じ福岡産で、これまた太いですよ」と亮さんが差し出してくれたのは、
男性の親指を一回り大きくしたようなぶっといホワイトアスパラ。

「焼くとこの根本から水がジュウッと出てくるんです」。おお、そこまで言われたら食べないわけにはいかないですね。

 よもぎ豆腐が出てきました。胡麻豆腐をベースに、よもぎを混ぜたものでしょうか。草のよい香りが立ちます。
ここでビールグラスを一気にかたむけて、お酒にすすみましょう。

 お、桜鯛がお造りになってきました。ん、お造りの上に乗ってる黒いつぶつぶは何でしょう。

「大徳寺納豆です。醤油と味噌の中間のような味がしますよ。鯛に巻いてどうぞ」

 ふ~ん、大徳寺納豆は初めてです。では、それだけちょっとつまんでみましょう。甘いような、塩辛いような、クセになりそうな味です。

 お造りにいってみましょう。鯛の余分な水分を昆布が吸って身がほどよくひきしまると同時に、昆布が身に旨味を与えています。
そこに大徳寺納豆を巻いてみると…ほほう、心なしか身の甘みが際だつような気がします。

「はい、アスパラです」

 ホワイトアスパラをまるまる1本、焼き上げていくつかに切りわけたものが皿に盛られてきました。どれどれ、と噛んでみると、
口の中に甘さが広がります。これはおいしい。思わず顔がほころんでしまいますねえ。こないだのグリーンアスパラ同様、
パラパラとかけられた粗塩が甘さをひきたてています。根本の方をガブリと噛むと、おお、確かに水がポタポタとしみ出てきます。
こりゃ凄い生命力だ。

 続いて、海鮮さつま揚げが出てきました。いろいろな素材(亮さんから中身をうかがったのですが失念してしまいました)を混ぜ込んだ、
手作りの一品です。メニューにあるときはたいてい頼んでいるのではないでしょうかね。それくらい好きな料理です。揚げたてなので、
ホフホフ言いながら食べきりました。

 メニューを眺めていると、ホタルイカがあるではないですか。これも春のものですねえ。

「昆布の上に並べて焼くのはどうですか。敷いた昆布は後で切り分けて召し上がっていただくこともできますよ」

 説明を聞くだけでおいしそう。では、それもお願いします。ついでに、お酒も合わせてください。

 焼き上がったホタルイカはホクホクで、海水でしょうか、自然な塩辛さと甘みが混じり合ったおいしさです。イカの中からゴロ
(イカのワタのことを北海道ではこう呼びます)が昆布の上に出てしまいます。ああもったいない。箸でこそげてちびちびなめながら、
お酒をツイーッと飲むと、もうなんとも言えないですねえ。

 今日もおいしいものをどうもごちそうさまでした。至福の時間はあっというまに過ぎていくのでした。

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