a memorandum for analyzing conversation of children (1)

 GoffmanとSacksのそれぞれの相互行為についての見方には、安易に統合できない違いのあることが指摘されている。高原・林・林(2002)は、Goffmanにさかのぼるコミュニケーション研究のパラダイムを「相互行為分析」、Sacksにさかのぼるそれを「会話分析」とそれぞれ呼び、その発想の違いに触れている。

 たとえば、相互行為分析と会話分析のひとつの違いは、ある行為の「原因」をどのように説明するかにある。前者の見方によれば、「原因」の一部は参与者の内的な認識に求められる。ある発話が起こるのは参与者がそれを用いてなんらかの効果を相互行為の場にもたらそうと「意図した」ことによる。

 一方、後者の会話分析では、参加者たちは行為の「原因」なるものを互いに提示し、承認しあいながら相互行為を進めていくという見方を取る。相互行為分析では「原因」の一つとされた参加者の「意図」の扱いに関して、Sacksに影響を与えたエスノメソドロジーでは、その実在の真偽を問わない。むしろ、相互行為において参加者が実際に何を「意図」や「動機」と見なし、またそれらについていかに語るかを明らかにすることを目指す。

 行為の「原因」なるものをいかに捉えるかは興味深い問題である(「原因」としての知覚と行為に関する議論として、高木(2000)がある)。


文献
高木光太郎 2000 行為・知覚・文化:状況的認知アプローチにおける文化の実体化について 心理学評論, 43(1), 43-51.
高原脩・林宅男・林礼子 2002 プラグマティックスの展開 勁草書房

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