妻は、ずいぶん暑かったと言っているが、ぼくはよく覚えていない。ただ、病院の中でコトがどのように進んでいたのかはおぼろげに覚えている。
前日から陣痛室に泊まり込み妻の背中をぐいぐい押していた。陣痛の間隔が空いてしまったため、促進剤を点滴で入れた。だいぶいい感じになってきた午後2時頃、分娩室に入った。それから1時間くらい台のまわりをうろうろと歩き回り、助産師さんの手際を妻の肩越しに食い入るように見ていた。
そうしてアマネが生まれたのだった。
1年たち、あの日のふにゃふにゃした人は、しっかりと自分の二本の足で地面を踏めるようになった。ご飯もぱくぱく食べるし(今日の夕食など用意したものでは足りなかった!)自分で今したいことを要求できるようになった。
近い将来、さらに1年たって今日のことを振り返ったときによく思い出せるように、ぼくたちはふだんとはちょっと違うことをした。世間では、それを誕生日のお祝いという。
ところで、アリスのハンプティ・ダンプティは、ベルトではなくネクタイを、 非誕生日の贈り物として白の王と女王からもらったのだった。困ったアリスはこう言う。
`I mean, what is an un-birthday present?'
`A present given when it isn't your birthday, of course.'
Alice considered a little. `I like birthday presents best,' she said at last.
ぼくもアリスに同情します。364日の非誕生日よりも、たった1日の誕生日の方がプレシャスだよね。
誕生日写真集