第1回ハガ研

 昨日は恵庭市で実施されているブックスタートの見学に行ってきました。これについては、後期に学生とともにまた見学に来ようと考えているので、そのときに詳細を書きます。

 さて本日は発達と学習研究会(愛称ハガ研)でした。シリーズ化しようと考えているのですが、どうなることやら。

 読む本は、Barton&Tusting (2005) Beyond communities of practice。大きく社会言語学にくくられる研究者たちが、Lave & Wenger (1991)やWenger(1998)を下敷きにしつつ、言語学の知見で拡充しようという試み。室蘭ご出身のMさんが北海道に遊びにいらっしゃるとのことで、それにあわせて企画したのですが、勢いがついてよかったかもしれません。

 Mさんがお昼頃到着され、研究室で近況を報告。その後札幌については何でも知っているKくんご推奨の食堂「ねこや」でランチ。グルメのMさん、いたく気に入られたご様子でなにより。

 クーラーの効いた部屋へ移動してぼちぼち読書会を開始。

 1章は不肖私の報告。 WengerのCoP論とアクターネットワーク理論や活動理論など社会を分析する他の理論との接合について論じられる。そのためにもっと物象化reification概念に注目せよという感じ。本書の導入ということもあり、社会的実践として、言語あるいはリテラシー実践を見るという視座が宣言される。

 2章は、Hくんの報告。Wengerの報告するような職場の言語実践には、社会的構造を反映した言語形式が反映されている、と同時に、その使用が社会的構造を再構築していくという感じの話。したがって、ミクロな言語的相互行為から社会的構造の変革が起こりうる。言語実践のもつそうした性質は”nursery of change”と呼ばれる。変化の揺籃ということか。

 3章は、Kくんの報告。ぐっと具体的になって、ロンドンの多民族を要する高校の話。学校での日常生活で差別を受けたと感じたクルド人移民の子弟の一部が、ある日の朝、学校の門の前で「差別する教師がいる、わたしたちは平等に扱ってもらいたい、よりよい教育を受けたいだけだ」という大意のビラを配り授業をボイコットする。それに対してその日の昼に、カリブ系の黒人生徒から「私たちは教員からすでに平等に扱われている、だからぎゃあぎゃあ騒ぐのは学校全体を貶める子どものような行為だ」という大意のビラがまかれる。学校側、特に校長先生は、後者のビラに同調する。
 社会言語学的な観点からすると、言語を共有する共同体(スピーチコミュニティ)としては、クルド人も黒人も同じ共同体に属していた。他方で、実践共同体論からすると、黒人や教員は学校において支配的な言説に参加しており、クルド人それに参加できずにいた。ここに、 CoP論とスピーチコミュニティ論との相互補完をするような理論の必要性があるのだとされる。

 本日はここまで。またもやKくんご推奨のお店、大学正門前の「駿」にて飲み会。Mさんのおしゃべりと食い気を見て気分が良くなり、ふだんよりもお酒をかぱかぱとあけてしまいました。

 遠いところからおいでいただきましたMさん、あとレポーターのお二方、おつかれさま+ありがとうございました。第2回はあるのか?

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