発達心理学会@名古屋

先週末は名古屋で開催されていた発達心理学会に参加してきました。

出番は3つで,ポスター1件にラウンドテーブル(RT)での指定討論2件。お座敷研究者としては,お茶をひかないようにこのペースをなんとか持続したいものであります。

さてその指定討論ですが,1つ目は初日に開催された,神戸大の赤木和重先生主催による特別支援教育における授業作りに関するもの。授業を研究しているということで呼んでいただけました。

赤木先生が最近注目されている,京都の村上公也先生,古里章子先生の特別支援学級における授業を紹介する,というRT。村上先生の実践はDVDにもなっていて,それを事前に拝見していました。私は他の先生による特別支援学級の実践を見たことがありませんので,比較はできないのですが,素朴に面白い,というか,子どもとしてその場にいたいと思うような授業でした。

なにより,障害の特性に合わせた授業を目指すのではなく,授業の目標と子どもの特性(障害の,ではなく)に合わせて方法を練り上げていっているように見えました。これは当たり前のようでいて,特別支援教育の世界ではあまりそうでもないらしいということが今回のRTで分かりました。村上先生が目指す授業の目標も,レベルを下げているのではなく,むしろ数の世界の本質に触れることにあるように見えました。

私が拝見した映像の中で一番印象に残っているのは,とある女児の表情でした。自閉症と診断されているのだそうですが,自分の計算の遅さでチームが勝てないことにとまどい,悲しんでいる様子がありありと浮かんでいました。特性に合わせた授業では,むしろこうしたとまどいや悲しみを排除する方向にいくのかもしれません(よく知らないので推測です)。子どもが他の子どもといっしょに生活したり,成長して他の人とともに暮らすということは,こうした感情につきあっていくことでもあります。それにどう向き合うかを学ぶ場を補償しているのが,村上・古里両先生の実践だったと思います。

私は,教師にとっても,児童にとっても,理屈が通っていることが,「よい授業」の条件ではないかとコメントしました。

指定討論の2つ目は,二日目に開催された,富士常葉大の百合草禎二先生主催による,ヴィゴツキー研究に関するもの。メインゲストに大妻女子大の森岡修一先生を迎えて,言語教育にヴィゴツキー理論がどのように活かされるべきかという観点からお話をいただきました。

ヴィゴツキーを巡る状況は私ではフォローしきれないのですが,そこを森岡先生はきちんと整理されており,また,旧ソ連邦にあった中央アジアの諸共和国の現在の学校教育までご報告いただき,充実した講義を拝聴したような気分でした。

内容についてのコメントというよりは,ヴィゴツキー理論の大雑把なところと,日本における外国人児童への教育についての示唆を質問しました。まるでできの悪い学生のような質問だったのですが,それにきちんとお答えいただいて恐縮してしまいました。

二日目午前には自分のポスター発表があり,珍しくたくさんの方に足を運んでいただきました。

三日目はフリーなので気になる発表をふらふらと。言語発達に関する札幌学院大の鈴木健太郎先生や立教の石黒広昭先生たちの一連の発表はとても面白いです。最初の言語が生まれるまでの道筋を,複数のメカニズムの並走としてとらえること,そして,母子相互作用をそれが起こるトータルな場の変容として記述するという視点は参考になります。

振り返ってみると充実した三日間でしたね。

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