読み聞かせに悩もう

 学部の授業で基礎演習というのがあります。2年生が3年生の力を借りながら、各ゼミで扱っているテーマについて調べるというものです。

 ぼくは発達心理学の基礎演習を担当しているのですが、今年は「読み聞かせ」をテーマにしています。グループに分かれ、読み聞かせに関する問題について半年かけて調べることを課題にさせています。

 こちらが強制する要件として、大学の外で読み聞かせに携わる人やグループにインタビューすること、読み聞かせについての英語論文を読むことをお願いしました。インタビューについてはわりかし抵抗ないみたいですが、英語論文についてはむちゃくちゃ嫌な顔をされました。こういうときのための中高の英語教育じゃないのか?と思うのですがね。

 それはさておき、もうひとつの要件として、毎週1人、幼児園の子どもたちの前で自分が選んできた絵本を読み聞かせるという課題を課しています。こちらは率先してやってくれます。幼児園の子どもたち10数名がゴザに座り、その前でイスに座って読んでもらいます。演習に参加する他の学生はその間ゴザの脇に座って、本を見る子どもたちの様子を観察します。

 はじめて絵本を就学前児に読み聞かせるという人がほとんどの中、学生はそれなりに練習をして臨んでくれています。たった1冊、5~10分程度のものですが、読み終えたらみな口々に「緊張したー」と言ってほっとした顔をします。

 言い出しっぺの責任で、最初の読み聞かせはぼくが行いました。ちなみに読んだのは「がらがらどん」。毎日自分の息子に読み聞かせをしているのだから楽なもんだろうと思ってましたが、甘かったです。たくさんの子どもに対して絵本を開いて見せて読み上げるというのは思ったよりもコツが必要です。

 学生が読み聞かせを終えた後、他の学生と一緒に振り返るのですが、「あれはああだ」「これはどうだ」と、けっこういろいろな論点が出てきます。本の持ち方一つとっても、片手で持った方がよいのか、両手で持った方がよいのか、みなで真剣に悩みます。絵だけで文章のないページがあったらどうしたらよいのか?子どもには分からなさそうな難しい言葉が出てきたら説明した方がよいのか?絵のなかで注目して欲しい個所を指さしたりしてもよいのか?

 こうした疑問に、ぼくは答える知識はありません。学生さんには、インタビューや論文や観察した事実を根拠として自分なりにとりあえずの解答を出してもらうようにしています。何かを根拠として語ること、それがとても大事なことなのであり、この基礎演習ではそうしたクセをつけてもらいたいと思っています。

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