書き起こし随想(1) 勝手に学ぶ

 小学校の授業について、可能な限りすべての子どもの発話を聞き取りながら書き起こしを作っている。ひとりひとりに専用のICレコーダを装着してもらったので、つぶやきが聞こえて大変に興味深い。

 それを聞いていて思うことは、教師の発話も他の子どもの発言も、ある子どもにとっては背景音のひとつに過ぎないということ。実際のところ、教室内の座席位置によっては教師の声の聞こえ方に著しい違いがある。

 加えて、子どもは学習のコンテクストを授業内でみずから選択し、作り出し、なんらかの達成を得ようとしていることも見えてきた。仮想的なたとえを出せば、授業中に消しゴムかすを一生懸命作ろうとしているとか、一言もしゃべらずにいようとしているとか。これを悪くとらえれば、「授業に参加していない」のであるが、もう少しポジティブに受けとめるロジックは作れないか。

 月並みな言い方であるが、「授業に参加していない」ように見える子どもも、学ぶことを放棄しているわけではない。みずから学習の課題を設定するなかでコンテクストを選択し、その枠内で課題達成しようとしているのである。要は、子どもは勝手に学んでいるのである。

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