愛情の欠乏

 アマネが再び微熱を出して鼻風邪をひいた。ずびずび鼻をならしながら寝ていたからかどうなのか分からないが、
昨夜は睡眠の波の周期にそって、何度もびええと夜泣きをした。泣くたびにつきあって起こされていたら、気がつくと夜が明けていた。
6時半にようやくぐっすりと眠りにつくことができた。

 そんななので、本日の非常勤最終講義はもうへろへろ。足ががくがくし、のどは痛くなる。とうとうイスに座って講義をした。
たまには楽をさせていただこう。

 講義が終わるとテストの心配をしに来る学生がちらほら。

「出題はどんな形式なんですかあ」

 チミたち、たまには講義内容について質問にきたまえよ。

 この非常勤、来年も受けることにした。半期半期で1コマずつである。

 思えば、ぼくにとって「心理学」についての概説をしなければならないという必然性は、
この講義の講師を務めることによってもたらされた。
正直なところ心理学については何も知らなかったということを知ることができたのが一番の収穫であった。

 しかし別の思いももたげてきた。果たしてぼくは心理学という学問が好きなのだろうか。
どうもぼくは心理学を愛していないのではないかという疑いが年々増してきているように思う。

 愛しているのならもう少し情熱的に語ることがあってもよさそうなものだが、自分で反省するだにぼくの語り口は冷たい。
「~ってなことが言われてるみたいっすよお」と、教科書に毛の生えたくらいの情報を聞き伝えのように話す程度なのである。授業評価に
「熱心な先生です」と書かれれば嬉しい反面、そんなに熱心でもないけどなあと恐縮する。

 心理学の概論を半期でも通年でも語るネタを確かにぼくはもっている。それは必要に迫られてのことだが、貴重な財産になった。しかし
「心理学なるもの」に対してはあまり関心がない。そんなものあるのか?とも思うし。今日、たまたまナラティヴ・
セラピーについて話をしたからますますそう思うのだろうかね。

 最近では、むしろ教育学におもしろさを見いだすようになってきた。これは多分に、
同僚の先生方のされていることを見たり聞いたり話したりしていることに由来するだろう。
コミュニティにおけるアイデンティティの変化にともなって、有意味と見なす学習内容そのものが変化している。まさにLPPだ!

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