海鞘

 海鞘の季節である。

 母親が三陸は釜石の出身で、その血が流れているせいかどうか、海産物はたいていのものは好物である。
その独特の香りから敬遠する人の多い海鞘も好物の一つ。

 先日、近所のスーパーに海鞘が売られていた。晩酌の肴にと1つ買った。

 とはいえ、海鞘をさばいたことはない。インターネット情報によれば、「けっこう簡単」「殻はライチみたいに剥ける」
「内臓は取っておく」らしい。やってみると、確かに簡単であった。オレンジ色の身をぶつ切りにして酢でしめて、ポン酢で食べてみたが、
酢がきつすぎたか、あの海鞘の香りはあまりしなかった。

 仕事帰り、三徳六味に寄った。メニューに、「根室産 生ホヤ」の文字が。一も二もなく注文。

 「今日のはいいですよ」と亮さん。「はい、とれたてホヤホヤです」

 目の前のガラスの器に盛られた鮮やかなオレンジ色の身を口に放り込んで広がった顔の笑みは、マスター会心のギャグがなせるわざか、
あるいは根室の海と海鞘の力によるものか。

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