卒論と火傷

 25日の陽が落ちた頃、卒論を書き上げた学生たちはまるで悪鬼に追いかけられる夢から覚めたかのごとく安堵の表情を浮かべながら研究室から去っていった。

 提出先の教務課の前には晴れやかな顔で論文を胸に抱えた学生がたむろし、なかには抱き合う者もいた。

 お互い、半年間の肩の荷が降りたわけで、これでようやく落ち着いて正月が迎えられそうである。

 その25日の昼間、研究室にアマネをつれてきていたのだが、ふと目を離したすきに彼がストーブに手を触れてしまった。左手の平が赤く腫れ、大きな水ぶくれができてしまった。火傷の後がズキンズキンとするのだろう、その後1時間ほどぎゃああああああと泣き通しであった。

 アマネには最悪なクリスマスとなってしまった。監督不行届である。

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