The fall (bababadalgharaghtakamminarronnkonnbronntonnerronntuonn- thunntrovarrhounawnskawntoohoohoorderenthurnuk!) of a once wallstrait oldparr is retaled early in bed and later on life down through all christian minstrelsy.
転落(バババダルガラタカミナロンコンブロントンネロンタントントロヴァロウンアウンスカントゥーフーフールデレントゥルヌック!)、かつてウォール街の老人の話は、クリスチャン吟遊詩人たちによって、初期にはベッドで、やがて巷間に語り継がれていく。
bababa…以下、ちょうど100文字あるこの単語は、もちろん転落したときの擬音だが、雷鳴を表すともいわれる。ここには各国語で「カミナリ」の意味をもつ単語がちりばめられている。以下、McHughの注釈に載せられているものを挙げていく。
bababa…: Babel?
…kamminarronn…: kaminari 日本語
…konn…: karak、ヒンドゥスタニー語
…bronn…: brontao、ギリシャ語
…tonnerronn…: tonnerre、フランス語
…tuonn…: tuono、イタリア語
…thunn…: tun、古ルーマニア語
…trovarr…: trovao、ポルトガル語
…awnskawn…: aska、スウェーデン語
…toohoohoorderen…: tordenen、デンマーク語
…thurnuk: tornach、アイルランド語
wallstrait: ウォール街(Wall Street)。ウォール街で転落といえば、1929年の暗黒の木曜日のことだろう。
well-straight(まっすぐ)も見える。まっさかさまに「転落」したのだろう。
Old Parr: 今ではスコッチウィスキーの名前で知られるが、これはもともと、152歳まで生きたというイギリス生まれの人物、Thomas Parrのこと。
parr: サケ科の魚の幼魚、とするならば、Oldparrは「老幼魚」。「昨日生まれた婆ちゃんが…」のようなもの。
フランス語でpere(父)も見える。
retaled: re + tale(ふたたび物語る)。次の一文にentailedがある。taleとtailの語呂合わせは、『不思議の国のアリス』にも出てくる有名なもの。
early in bed and later on life: 成句"Early to bed and early to rise"(早寝早起き)。
christian minstrelsy: 字義通りに読めば、クリスチャン吟遊詩人。同時に、フォスターの時代、19世紀前半のアメリカで人気を博したミンストレル・グループChristy’s Minstrels。
ministryもあるか*1。
*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.