ひとりもんの暮らし

 ずうっと書けずにいて、もう義理も礼儀もなんもなくしてしまっているような原稿の目処をなんとかつける。首と尾っぽがなんとかくっついた格好で、胴体も埋められた。目鼻は週末、家にこもってくっつける。

 帰りがけ、もう1年近くごぶさたしていた居酒屋「かんろ」へ。相変わらずの繁盛、カウンターにかろうじて空いていた1席にねじりこむ。マスターはきちんとぼくのことを覚えていてくれた。なんでもないことかもしれないけど、すごく嬉しい。ここのやきとんは肉の部分が大きくて食べでがある。

 蕎麦屋でしめたあと、ふと思いつき、ひとりカラオケを決行。CKBの「タイガー&ドラゴン」を6回くらい歌う。歌はいろんなものが発散できてよろし。

 思ったよりも体力を消耗した模様で。家にたどり着いて意識を失い、気がついたら朝10時だった。

秋味

 秋味、というのは鮭の別称である。しかし北海道では8月下旬ごろから鮭が出回り始めて、秋の味というにはちと早い気もする。

 昨日堪能したのは鮭ではなく、秋の味。

 日曜の道心シンポは認定心理士会の研修もかねていたらしく、講師料というのが出た。あぶく銭はさっさと使うに限る。そこでなじみの三徳六味に出かけた。

 祝日の前日だけあって大盛況。辛うじて空いていた一席に陣取り、生ビールで喉を潤す。マスターも奥さんも忙しく立ち働いているので、手が空くまでじっくりとメニューを眺める。

 メニューはすっかり秋めいている。とりあえず3品。かぼちゃ豆腐、翡翠銀杏、それに、おお、牡蠣だ。牡蠣が出始めたのだなあ。聞くと昆布森産とのこと。厚岸のそばだそうだ。身が貝殻いっぱいにつまっておいしそう。これを焼いてもらう。

 かぼちゃ豆腐はねっとりと甘く、上に乗ったかぼちゃの種がアクセントになって楽しい。銀杏は、どこの居酒屋でもあると頼んでしまう一品。ビールにも酒にもあう。牡蠣の身はむっちりと、噛み切ると中から白い汁がほとばしる。海のミルクとはよくぞ言ったものだ。

 ひととおり楽しみ、ここからが佳境。越乃景虎、それに〆張鶴をすする。どちらも新潟のお酒らしく、飲み口は水のごとく、しかし、口中から鼻にかけて華やかな香りが残る。景虎の方がどっしりとしているだろうか。

 順番がむちゃくちゃだが、最後にお造りをもらう。愛媛であがったというもみじ鯛。空輸してきたのだとか。真鯛なのだが、夏の終わりから秋口にかけて、紅葉の季節に食べる鯛をもみじ鯛と特に呼ぶらしい。ちなみに、桜の季節に食べるのは桜鯛。

 さて、おあいその前に、家で待ってる妻に、奥さんお手製のなめらかプリンと、栗の渋皮煮をおみやげでいただく。これをしないと恐ろしいことになる。

 いずれにも紅葉の葉を散らし、目で楽しませ、そして舌で楽しませる。堪能しました。ごちそうさまでした!