ISCAR Rome 2011 (1)

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院生の頃から来い来いとしきりに勧められていたISCARに、条件がそろってようやく参加することができたのが先週のことでした。

ISCARとはInternational Society for Cultural and Activity Researchの略で、読んで字のごとく、文化や活動といった鍵概念を共有して諸領域で研究を進める人たちの国際的な集まりです。

実際に今回この集まりに参加した人の名を挙げていくと、集まりの特徴が見えてくるかもしれません。たとえば、ジーン・レイブ、ルーシー・サッチマン、エレノア・オックス、ヤーン・バルシナー、ユーリア・エンゲストロームといった研究者たちは中心的な方々です。かつては複数の学会に分かれて開催されていたのですが、参加者が重複していたためにしばらく前に一つにまとまったのだそうです。それからは3年ごとに開かれるようになりました。

さて、そのISCARは今回はローマで開催されました。ローマとくれば、観光に買い物、食事と楽しみなことはたくさんありそうですが、さにあらず、そのような暇はほとんどなく(いちおう、なんとか空き時間を作ってコロッセオとスペイン広場には行きましたが)、ホテルと学会会場の往復で1週間がすぎてしまいました。これほど魅力的な学会というのはそうありません。

さてその内容ですが、最終日にキーノートスピーチをしたレイブの言葉に集約されるかもしれません。いわく、「私たちは、生きて動く人間を研究している」。死んでいない限り人間は生きて動くのですから、人間に関する研究をすることはすなわち、生きて動くものを調べることのはずです。しかし、人間科学の古いパラダイムは人間を生きて動くものとは見てこなかったと。

では、それに代わるのは何かというと、レイブは、マルクスの言う「フォイエルバッハ第三テーゼ」に描かれている人間観が参考になる、と言います。それは、環境が人間を作ると同時に、人間自身も環境を作るというものです。マルクスはこの作り作られというダイナミズムを「変革的実践」(revolutionary practice)と呼んだのですが、この視点で生きた人間の動きを見ようというのが、ISCARに集まった人々の底流にあると思います。ですから基本的には、「人間が何をしているのか、とにかく見てみよう」という発想が方法論となるのです。(上に書いたのは、最低限共有しているであろう枠組みで、実際には細かく見ると異質な部分を含むさまざまな流派が相互に相乗りして開催されています。)

では、実際に私が参加した企画をおさらいしていきます。

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