感想よ、お前もか

 非常勤のレポートを採点中。

 2つの課題を出して、どちらか1つを選択せよとした。1つは、教育実践に心理学の概念がどう使われているのかを調べること。もう1つは、斎藤環『心理学化する社会』を読んで要約を作り、感想を述べること。

 後者の方は我ながら意地が悪いと思う。さんざんカウンセリングだの脳だのといった話しを講義中にしておいてから読ませるのだから。「けっきょく心理学ってなんなの?」と、ちょっとでも混乱してくれたらそれでいいと思った。

 で、何人か読んだ感想を書いてきたのだが、読んでいてどうも違和感をもつものがあった。学生のレポートを読んだことがある人なら誰でも抱く(だろう)あの感じ。どうも、異質な文体が複数混在しているようなのだ。

 ふと思い立ち、件の本のタイトルでネットを検索。

 あ、見つけた。レポートと同じ文章がネット書評に。

 この野郎。感想までパクるんじゃねえよ。いやあ、要約部分くらいはネットからパクる人がいるかもなと思っていたが、感想もとは。いいよ、まねしても。読んだってわかんねえのかもしんねえから。ただ、きちんと定められた形式で引用をしろよ。

 …と文句を吐きながら、もしかすると学生は、引用のしかたを習っていない、あるいは忘れたのではないかと思い直した。

 決めた。レポートを課題にするときは、1時間使って、引用のしかたを徹底的に教える。それに則っていないものは剽窃として問答無用で落とす。もー決めた。レポートの書き方は1年生の時に習ったはずでしょう、などと言うのは時間のムダだ。他の教員が教え損なったものを教え直すのは、同僚としての義務かもしれない。教育に分業制はあわないのだ。と自分に言い聞かせる。はあ。

 それにしても、文体の違いって一発でわかるよなあ。「~節」ってのもあるし。このことを講義で話そうかな。故波多野完治先生がやっていた文体研究を引き継いでいる人って、いないのかね。

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