Psychology Press
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上の本を、丁寧に読みます。
この本の全体を日本語の枠の中に写し取っていく作業を定期的に行います。 この作業は私一人で行います。その様子を見届け、ときに脇から突っ込みを入れてくれる方はいますでしょうか。いたら、ご連絡下さい。最終的には、翻訳として出版できればいいなと思っています。
最初の2ページを訳しましたが,すでにもうヘトヘトです。英語のニュアンスが読み取れない上に,読み取れたとしても,そのニュアンスを日本語の枠の中に移しかえるのに頭を相当使うのです。
こんな感じですから,最終チェックがどうしても必要です。お力添えいただけましたら幸甚です。
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p.viii クラシック版への前書き
レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーに関する「クラシックテキスト」の著者であることは,光栄でもありますし,皮肉なことでもあります。振り返りますと,1993年に『変革の科学者レフ・ヴィゴツキーLev Vygotsky: Revolutionary Scientist』の著者献本が私たちのメールボックスに届いたとき,フレッド・ニューマンと私は複雑な思いでその本を手に取りました。労働には過程と生産物とがあります。この本のページを埋める膨大な数の単語もそうですし,何もないところからコミュニティを作るという20年に渡る草の根運動に私や仲間たちがたずさわってきたこともそうです。これらにどっぷりとかかわっていた私たちでしたが,一流の学術出版社ルートリッジが「ヴィゴツキーについての私たちの解釈」を学者scholersや学生に紹介する媒体となったことにびっくりしたものです。ニューマンと私は二人とも大学を離れており(彼は1968年,私は1997年に),自立した,学際的な環境において頭を使う仕事をしていました。この環境は,コミュニティを組織するという活動と切り離すことのできないものでした。思うにこの場所は,ヴィゴツキーの書き残したものの中に私たちが見たり,聞いたり,触れたりしたことのすべてと関係がありました。私たちが探求していたことの中には,ヴィゴツキーのフォロワーが関心を持つのと同じ問題もありましたが,同時に,探求の中で新しい別の道筋を作り出してもいました。大学に籍を置く仲間の中には,ヴィゴツキーのアイディアに関する私たちの読み方や使い方を執筆に値する重要なものと考え,ルートリッジにこのアイディアを持ち込んでくれた人もいましたが,そのことに私たちは心から感激しました。このことは果たして私たちの独自な立ち位置によるものだったのか,あるいは,それにもかかわらずと言えばいいのか,何年も経つうちに,ニューマンと私はうろうろと考えを巡らせて何度も考え方が変わりました。永遠に分からないでしょうが,仲間たちにはこれからもずっと感謝します。
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★1 本書はサイコロジー・プレス・クラシック・エディション・シリーズとして出版されました。サイコロジー・プレスは,ルートリッジと同様,テイラー・アンド・フランシスの奥付imprintです。
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私は,『変革の科学者レフ・ヴィゴツキー』のクラシック版のための前書きを,2011年7月に逝去した共著者フレッド・ニューマンの手を借りずに書いています。二人で執筆することができたのは,実によい経験でした。彼の洞察力,憤り,ユーモアが懐かしくなります。そして,この新しいクラシック版が二人のメールボックスに届くとき,この本に彼の名があることに,20年前の私たちがそうであったように複雑な思いを抱き,また懐かしくなることでしょう。
p.ix
1993年から世界はすっかり変わってしまいました。地球上の70億人に起きた,政治や経済,文化,社会構造,心理学の変化について触れるだけで,この本は倍の厚さになるでしょう。そんなことはできませんし,そうしたくもありません。ですから,本書のこの先に書かれていることについて歴史の中に位置づけるに際しては,読者の助けをお願いします。私にできることは,人類史の中の現時点における,ヴィゴツキーの位置づけの変化について,および,彼が果たしてきた役割と果たしうる役割について,理解の手がかりを与えることです。【読者は読み進むうちにさまざまなことに出会い,一つの形が作られていくことでしょう。I invite you to let your mind wander as you read, to bring the world in.】?
少なくともヴィゴツキーの名前が,こんにち,教育,社会科学,人文学の隅々にまで知られるようになったと言っても,1993年とは違って安全です。以前は知られていなかったサイコセラピーや社会心理学などの心理学領域の学者や研究者の間でもヴィゴツキー派のアイディアに対する関心が劇的に高まっています。教育の世界では,ヴィゴツキーに影響を受けた哲学やカリキュラム,手法が目につきます。技術,数学,科学,芸術,読み書き,第二言語学習,多様性と多文化主義といった科目のほか,放課後や非公式的な学習の場にも導入されています。さまざまな現場においても同様に,精神医療従事者,ソーシャルワーカー,医者や看護士,若者支援従事者,アートに基づく地域組織活動家,組織心理学コンサルタントにヴィゴツキーのアプローチを紹介して,そうした活動を賦活させようという熱望が生まれています。この関心の高さは国際的です。英語圏,ヨーロッパ,ブラジル,日本,ロシアといった国々におけるヴィゴツキー派の伝統に対して,中国やインド,アフリカやラテンアメリカ諸国に新しく現れてきたヴィゴツキー派が論争を挑んでいます。ヴィゴツキーや彼に影響を受けた研究を少しでも取り上げる国際会議,あるいはそれらを中心に扱う国際会議が,今後ますます,こうしたバラバラな要素にまとまりをつけてくれるでしょう。
ヴィゴツキーの著作の出版点数は倍以上に増え,6巻本の全集が英語で読めるようになりました。論文選集,さまざまな言語への翻訳,未公刊の手記や講義ノートを公開しようとする進行中の計画もあります。ヴィゴツキーについての本もまた,とても増えました。言語を横断して検索できる網羅的なデータベースを見つけることはできませんし,私自身そのようなものを作製してきませんでした。Amazonでの検索結果は限られたものでしょうが,それでも強烈です。1993年以降に出版された,ヴィゴツキーの名をタイトルに掲げた42冊の英語の本が,Amazonで購入できるのです。★2☆1
こうした世界規模での活動の渦を作り出している一人として,ニューマンと私による本,そこで示されたアイディア,それに影響された実践を再検討し,この2010年代に大きく変化した政治的背景への現在的な関連について推測する機会を得たことを嬉しく思います。
『変革の科学者レフ・ヴィゴツキー』でのヴィゴツキーをめぐる議論には,最初に出版した当時には類例のない特色がありました。一つには,この本の中でヴィゴツキーをマルクス主義的方法を採用する者として示しました。彼をソヴィエト連邦成立当初の時代背景の中に位置づけると同時に,私たちの時代の新しい心理学に対して彼の人生や著作がどのように貢献するのかを描き出しました。このようにして,ニューマンと私は,ヴィゴツキーがマルクス主義者であったかどうかをめぐる論争に加わりませんでした。彼がそうであったという考え方も,彼の革命性をその科学的姿勢から切り離す考え方も,どちらも曲解だと私たちは確信していました。
p.x
★2 最近20年間でヴィゴツキーへのなじみが広がった一方で,本や研究論文のほとんどはいまだに教育理論や学校内での子どもの学習に焦点を当てたものです。教育者,教師教育関係者,教育心理学者のいずれかのために書かれた本には以下のものがあります。Berk and Winsler, ★イタリックScaffolding Children's Learning: Vygotky and Early Childhood Education (1995年), Moll, ★イタリックVygotsky and Education (1992年), Kozulin, ★イタリックVygotsky's Educational Theory in Cultural Context (2003年), Robbins, ★イタリックVygotsky's Psychologi-Philosophy: A Metaphor for Language Theory and Learning (2001年), および,★イタリックVygotsky's and A. A. Leontiev's Semiotics and Psycholinguistics: Applications for Education, Second Language Acquisition and Theories of Language (2003年), Langford, ★イタリックVygotsky's Developmental and Educational Psychology (2005年), Daniels, ★イタリックVygotsky and Pedagogy (2001年)☆2, Daniels, Cole and Wertschによる論文集,★イタリックThe Cambridge Companion to Vygotsky (2007年),およびDanielsによる★イタリックIntroduction to Vygotsky (2005年)はいくらか射程は広いものの,それでも教育の世界に向けられたものです。最近出た編集本として,Connery, John-Steiner and Marjanovic-Shaneの★イタリックVygotsky and Creativity (2010年)はヴィゴツキーの著作に影響を受けた,遊び,芸術,文化領域での実践を扱った数少ないテクストですが,教育に焦点が当てられています。教育を離れたところでは,Daniels, ★イタリックVygotsky and Research (2008年)は社会科学に関係したものです。私自身による,★イタリックVygotsky at Work and Play (2008年)☆3は,サイコセラピー,学校,学校外での若者の発達支援プログラム,および仕事場における,『変革の科学者レフ・ヴィゴツキー』(LVRS)で示されたアイディアの影響下にある実践を記述したものです。
☆訳注1 日本のAmazonで検索したところ,「ヴィゴツキー」の名をタイトルまたはサブタイトルに含む,1993年以降に出版された本は33冊ありました(2016年5月現在)。
☆訳注2 山住勝広と比留間太白による邦訳が,『ヴィゴツキーと教育学』(2006年,関西大学出版会)として出版されている。
☆訳注3 茂呂雄二による邦訳が,『遊ぶヴィゴツキー:生成の心理学へ』(2014年,新曜社)として出版されている。