ニシンと日本酒―「北海道の居酒屋の真髄を探る」第8回

「北海道の居酒屋の真髄を探る」。今回から5週にわたって,北海道の居酒屋において過去から現在までの時代時代を彩ってきた料理と酒について取り上げます。

教員がレクチャーするのではなく,受講生に調べてきてもらい,プレゼンをしてもらうこととしました。

その初回となる今週のテーマは,ニシンと日本酒です。

居酒屋の真髄通信第8号

未成年に酒の核心に触れてもらうには

現在開講中のフレッシュマンセミナー「北海道の居酒屋の真髄を探る」において,北海道の居酒屋で提供されてきた食べ物と飲み物を学生に味わってもらう,ということをしています。

飲み物,というのは酒です。しかし,「フレッシュマンセミナー」の名の通り,受講生は大学入りたての1年生です。ほとんど全員が未成年です。

未成年に酒を飲ませるわけにはいきません。一方で,北海道の居酒屋を理解するには,酒について体で理解する必要があるでしょう。

ということで,酒を飲むことなく,酒の核心に触れるにはどうしたらよいのかをずっと考えていました。

出した結論が下記です。

日本酒: 酒造好適米(山田錦)で作ったおにぎりを食べてもらう
ビール: 上富良野産ドライホップを混ぜたホップ味噌,ホップ塩,ホップソーダを味わってもらう
甲類焼酎: サッポロのメーカーが製造販売するレモンソーダなど,焼酎の割り材として使われるものを飲んでもらう
ウイスキー: ウイスキーの香りづけに使う北海道産ピート(泥炭)でスモークした食材を食べてもらう
ワイン: ワイン醸造用の北海道産ブドウを使ったジュースを飲んでもらう

果たしてそれで酒の核心が分かるのかは確かに心許ない限りです。しかし,そのものを直接飲むことができない人たちに理解してもらうためにはどうしたらいいのかを必死になって考える経験はとても良かったです。

これはたとえば,ハラルフードしか食べられない方とともに食事体験をするといった事態においても起こることです。その際に,宗教的禁忌を「制約」とするのではなくむしろジャンピングボードとして,新しい体験をデザインする方向に向かえればいいのだと感じました。

居酒屋をフィールドワークする―「北海道の居酒屋の真髄を探る」第6/7回

居酒屋の真髄を探ると言うからには,やはり居酒屋に入らねばなりません。

教員と受講生合わせて11名が余裕で入ることができ,しかも北海道らしさがあり,札幌の中でも老舗の部類に入り,なおかつ市民になじみ深い店。今回おじゃました「第三モッキリセンター」はぴったりです。

社長はじめスタッフの皆さんにご協力をいただき,無事にフィールドワークをすることができました。深く感謝申し上げます。

居酒屋の真髄通信第6・7号

働くことを考える―「北海道の居酒屋の真髄を探る」第5回

「居酒屋の真髄を探る」第5回は,居酒屋を含む飲食店で働く人に焦点を当てました。

居酒屋評論家の太田和彦氏がよい店の条件として「いい酒,いい人,いい肴」と言うように,「人」の要素は特に個人経営の居酒屋では大きなウェイトを占めます。

「人」の中には店主はもちろん,パートタイムで働く人たちも含まれるでしょう。店主とパートタイマーの関係は,共に店を切り盛りする同志であると同時に,雇用者・被雇用者でもあります。

「被雇用者」から見た時の居酒屋についても考えてみたかったのです。

受講者もまたさまざまなアルバイトに従事しており,労働法で守られるべき存在です。知識を得て自分を守る能力を身につけてもらいたいと思います。

居酒屋の真髄通信 第5号

すすきのを歩く―「北海道の居酒屋の真髄を探る」第3/4回

一般教育演習「北海道の居酒屋の真髄を探る」第3回と第4回の2回にわたり,札幌ひいては北海道随一の繁華街「すすきの」の歴史と現在を調べました。

中洲やニューヨークと並ぶほどの勢いあった夜の街,すすきの。このきらびやかな街がいかにできあがったのか。そのヒントを現在のすすきのの街をながめて考えてみるワークをしてみました。

第4回演習には,専修大学の上平崇仁先生がゲストでお越し下さいました。ありがとうございました!

第3/4号通信

居酒屋のイメージとは?―「北海道の居酒屋の真髄を探る」第2回

なにごとにもイメージはあります。

イメージを作り上げるものとしてはメディアからの情報があります。

私たちは居酒屋についての情報を様々な媒体を通して日常的に取り入れています。

居酒屋のイメージはどのような情報で構成されているのでしょうか。

「北海道の居酒屋の真髄を探る」第2回は,受講生の考える居酒屋のイメージをはっきりと表している視覚的資料を持ってきてもらい,自分のもつイメージをプレゼンしてもらうことにしました。

この活動を通して,①自分のもつイメージを自覚する,②イメージに適合する情報を探索する,③イメージについて他者に説明する,という課題に取り組んでもらうこととなります。

10名のプレゼンをすべて聞いて思ったことは,若者の居酒屋イメージは「人」の要素が強いということでした。やはり居酒屋は「場」なのですね。

詳細をまとめた通信を作成しました。ご笑覧ください。

2号通信

日本認知科学会第41回大会に参加します

東京大学本郷キャンパスにて,10月12日から14日に開催される日本認知科学会第41回大会に参加します。

私は自分のポスター発表と,オーガナイズドセッションの企画を担当します。

10月12日(土) 16:50 – 18:50 福武ホールB1 ラーニングスタジオ

P-1-41 子どもは家庭においていかにして自分の体温を測っていたか(プログラムのpdfにとびます)
伊藤 崇 (北海道大学)

10月13日(日) 10:40 – 12:40 教育学部109

オーガナイズドセッション (OS-2-5) 体験性の認知科学

足を運んでいただけましたら幸いです。

一般教育演習「北海道の居酒屋の真髄を探る」が始まりました

私が担当する,1年生向け演習のタイトルが掲題のものです。半年をかけて,北海道内にある居酒屋について深く学んでいただきたいと考えています。

毎回の演習終了後に,振り返りをかねて「居酒屋の真髄通信」を作成する予定です。さっそく第一号通信を作成しました。

色物のように思われるかもしれませんが,とても真面目な狙いをもった演習です。半年間温かく見守っていただければ幸いです。

新刊『新しい言語心理学』が出ました+イベントの告知

伊藤が編集と執筆を担当した教科書が出版されました。

茂呂雄二・伊藤崇・新原将義(編) (2024). 新しい言語心理学 ひつじ書房

心理学の対象として言語を研究する際の迫り方にはいろいろとあります。この教科書は,従来の言語学や心理学の考え方から得られた知見を紹介しつつ,「新しい見方」(a new perspective)に立ったときに見えてくるものを描き出そうとするものです。

その見方とは,「ことばとは実践である」というもの。

沈思黙考する際の言語,完璧な体系として書物に定着させた言語ではなく,人々と共に活動する際の言語,不完全な構築物として常に作り直され続ける言語。簡単にまとめると,世界とともに変化し続ける言語を心理学の対象としましょうよ,という見方です。

こういう考え方は実は今に始まったものではありません。ウィトゲンシュタインやヴィゴツキーといった先人たちがすでに主張していました。

遙か昔に卒業しても執筆をお声かけくださる師匠や同窓の仲間と共に,難産の末に(3年くらいお腹の中にいました…)書き上げた本書です。とりあえず一度お手に取っていただけましたら幸いです。

なお,関連して,本書構想の背景や執筆プロセスなどをお話しするオンライントークライブが開催されます。詳細は下のチラシから。ご参加をお待ちしています。